政治改革関連3法案を詳しく解説~収支報告ネット公開・被選挙権年齢引き下げ・企業団体献金禁止~

2018年11月22日、立憲民主などの野党より、政治改革関連法案が3つ衆院に提出された。それぞれ「収支報告ネット公開法案」「被選挙権年齢引き下げ法案」「企業団体献金禁止法案」と名付けられている。

今回は、なぜこれらの法案が提出されたのか、その目的や背景等を解説する。


法案の目的

今回の政治改革関連法案の目的は「透明性の高い、参加しやすい政治の実現」にある。目的実現のための各法案のポイントをまとめてみた。

収支報告ネット公開法案

収支報告ネット公開法は、端的に言うと、政治資金収支報告書のネットでの公表を義務付けるというものだ。適正な民主主義実現のためには、国民が政治資金がどのように使われたのか知ることが必要だ。ネットに公開することで、多くの国民が容易に情報を摂取することが可能となる。

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企業団体献金禁止法案

企業団体献金禁止法案は、企業・団体からの政治寄付金や政治資金パーティーへの支払禁止が主たる内容だ。従来、多額の寄付金を支出した企業・団体への「恩返し」として、その企業・団体へ有利な施策や法案が打ち出される事態がまかり通っていた。つまり、企業団体献金が「政治とカネ」問題の温床と化していたのである。企業団体献金禁止法案では、企業団体の献金を禁止するとともに、個人の寄付に関しては税額控除を拡大し、個人寄付の普及も目指している。資金力の低い個人でも、政治に参画しやすくする狙いがあるのだ。

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被選挙権年齢引き下げ法案

政治に参加しにくいのは、若者も同様である。選挙権が拡大し、2016年以降の国政選挙からは18歳以上の者も投票できるようになった。しかし、これは票を入れる側の話であり、公職に立候補する者の年齢は引き下げとはならなかった。今回の被選挙権年齢引き下げ法案では、公職に立候補できる年齢制限を一律5歳引き下げるとしている。例えば、衆議院議員に立候補できる年齢は現行では25歳以上だが、改正が実現すれば、20歳以上へと変更になる。

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まとめると、収支報告ネット公開法では透明性の高い政治の実現を、企業団体献金禁止法案では「政治とカネ」問題の解決を、被選挙年齢引き下げ法案では若者も参加しやすい政治の実現を謳っている。これらは、日本の政治において長らく問題とされていたポイントだ。具体的に日本政治でどういった問題が生じたのか、次項から解説する。


政治資金収支報告書の記載漏れ

政治資金収支報告書への記載漏れが発覚するケースが頻出している。例えば、2019年3月には大阪堺市長の政治資金収支報告書に多額の記載漏れがあることが発覚した。資金管理団体や後援会において、過去6年間に7,000万円もの収入と6,500万円以上の支出を計上していなかった。この点、市議会では議員から「数字を操作したのでは?」など相次ぐ追及の声が出たところだ。また、2013年には大阪府の選挙管理委員会が、31議員32団体の収支報告の記載漏れを明らかにした。

政治資金規正法には、政治資金収支報告書の記載漏れや虚偽記載について罰則が設けられているが、実際には罰則の適用をせずに訂正がまかり通っており、機能していないといえる。

収支報告書のネットへの公表を義務付けることで、ミスや不正が生じないよう、政治資金管理団体や後援会に緊張感が持たせることができるだろう。収支報告書のネット公表に関しては、総務省が15年以上も前から呼びかけているにも関わらず、公表していない都道府県がいくつかある。どの先進国でも報告書のネット公開は標準化しており、世界的に日本は遅れをとっているといえる。


政治とカネ問題

政治とカネ問題に関しては、日本ではロッキード事件を発端に、何十年も前からさまざまな事件が起きている。近年の有名な事件といえば、河井夫妻の買収事件である。前法務大臣の河井衆院議員と妻の案里参院議員によるもので、地元議員に金を配り、票のとりまとめを依頼したという事件だ。また、案里氏は参院選でのウグイス嬢への違法報酬疑惑も出ている。2020年6月18日、夫婦そろって公職選挙法違反で逮捕された。

また、企業・団体との関係では2008年の西松建設事件が有名だ。西松建設のOB等が代表の団体から、大物政治家への違法献金が行われたという事案だ。西松建設の幹部と国会議員秘書など大勢が逮捕されている。企業・団体献金の制度を悪用して、自らが有利になる施策を講じるよう圧力をかけるケースは多々見受けられる。企業・団体献金を廃止して、クリーンな政治を実現することが本法案の主たる目的だ。


若者の政治への無関心・虚無感

18歳から選挙に行けるようになったとしても、若者の政治への無関心・虚無感は続いている。その一端を作っているのは、政治家が高齢ばかりな点にあると言えるだろう。若者にとっては、おじさんが難しい話を熱心に伝えていても、耳に残らない可能性が高い。若者への被選挙権を拡大することで、若者の政治的無関心を改善できると期待されている。

現在、コロナ禍の影響で、若者も政治へと興味をもつように変化しつつある。これを好機ととらえ、若年層政治家が誕生すれば、若者の政治参画が進むだろう。

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@kimuu

2020/11/05