2017年、公文書管理法の改正案(以下本法案)が、野党6党・会派によって衆議院に提出された。また、公文書管理法の改正に関しては、別の政党からも別法案が提出されている。今回は本法案の内容やもうひとつの改正案との違いなどを解説する。
2009年、公文書管理法が制定され、省庁における公文書の作成・管理・保存・国立公文書館への移管・公表に関するルールが規定された。しかし、南スーダンPKO自衛隊日報の隠蔽・森友学園の決裁文書改ざん問題・桜を見る会の名簿廃棄など、安倍政権下では、ずさんな公文書管理体制が次々と明らかになった。
これを受けて政府はガイドラインの見直しを行ったが、野党からは法律の改正まで必要だとの声が兼ねてより挙がっていた。公文書の適切な作成・管理は民主主義の根幹をなす部分である。公文書管理体制を今一度見直すために、本法案が提出されるに至った。
法案の具体的な内容を見ていこう。改正の大きなポイントとなるのは、公文書の範囲拡大だ。まず、行政文書の範囲を規定する現行の条文から「行政機関等の職員が組織的に用いるものとして」という趣旨の文言が削除された。つまり、個人が職務上作成・取得した文書や個人的なメモも、行政文書に該当するようになったのだ。森友学園問題では個人的なメモだということで政府側は公文書に該当しないという主張をしたが、本改正後はこうした言い逃れはできなくなる。
また、議事録を作成する必要がある議事についても明記された。閣議・閣僚会議・国家安全保障会議などは従来も議事録は作成されていたが、これに加えて、各省庁の審議会でも議事録の作成が義務付けられた。議事録の内容的な部分にも触れられており、開催日時・出席者の氏名などは必ず記載しなければならない。
本改正案では、重要・異例な事項に関する情報を含む文書は「1年以上」の保管を義務付けた。従来は、どのような文書なら1年未満の保存期間となるのか、不明確であったため、担当課の主観的な判断で捨てられていた。
PKO南スーダン日報や桜を見る会の名簿に関して問題になったように、情報が残されていなければ国会でまともな議論ができない。情報を適切に残すためには、客観的な指標が必要だとの考えから、今回の改正で保存期間が明確化された。1年以上の保存期間が必要なのは「電磁的記録である行政文書」「行政機関の事務の遂行にあたり、行政機関以外の者と接触した場合における、当該接触に関する情報が記録された文書」などだ。また、今回の改正では文書保存期間の下限のみならず上限も示しており、保存期間は原則として30年を越えてはいけないとしている。
国が行う諸活動を現在および未来の国民への説明責任を全うするために、行政文書ファイルをまとめる必要がある。今回の改正では行政文書ファイルの保存期間に関しては、行政文書ファイルにまとめられた行政文書の保存期間のうち、最も長い保存期間と同一の期間となるようにまとめると明記された。これも、行政文書がむやみに廃棄されないためのひとつのルールだ。
本法案では、その他にも、行政文書管理指針の策定や国立公文書館における文書の公表などに関しても明記されている。
公文書管理法では本改正とは別に、野党4党1会派(国民、立憲、無会、自由、社民)からも改正法案が提出されている。両者の違いについても触れておこう。
本法案はこれまで解説してきた通り、行政文書の対象や保存期間が主な内容だ。一方、野党4党1会派が提出した法案は、電子決裁の推進を謳うなど文書の改ざんがなされないための仕組み構築が主なテーマだ。
安倍政権下ではずさんな公文書管理体制が明らかになったが、大きく2つに分けるならば、桜を見る会の名簿や南スーダンPKOの日報など文書の紛失・廃棄に関する問題と、森友学園の決裁文書に代表される文書の改ざん問題の2つに分けられる。どちらも、国の諸活動を国民に適切に説明するためには改善が必要不可欠な部分だ。
今回提出された公文書管理法の2つの改正案は、公文書管理体制の健全化をはかる目的は共通しているが、上記で解説した通り内容の違いがあることは認識しておこう。
@なんたん
2021/06/27
こういう取り決めがしっかりと整備されれば森友問題のようなわざと処分したんじゃないか?みたいな事がなくなることを願います。
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@なんたん
2021/06/27
こういう取り決めがしっかりと整備されれば森友問題のようなわざと処分したんじゃないか?みたいな事がなくなることを願います。
@kimuu
2020/09/03
今のままだと、都合の悪い書類はみんな「メモ」だと証拠隠滅されちゃいますからね。
議案件名 : | 公文書等の管理に関する法律の一部を改正する法律案 |
提出国会回次 : | 195 |
議案番号 : | 4 |
議案種類 : | 衆法 |
提出議員 : | 篠原 豪 |
提出日 : | 2017年12月5日 |
公布日 : | |
法律番号 : |