公文書等の管理に関する法律の一部を改正する法律案

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提出議員 :後藤 祐一

国民・立憲・自由・社民の野党4党と無会派が共同して、公文書管理法の一部改正案(以後「本法案」)を衆院に提出した。

今回はどのような点が変更になったのか、本法案の内容を解説する。また、公文書管理法の改正に関しては、別の政党からも改正案が提出されているので、こちらの法案との比較も行う。

国民・立憲・自由・社民の野党4党と無会派が共同して、公文書管理法の一部改正案(以後「本法案」)を衆院に提出した。

今回はどのような点が変更になったのか、本法案の内容を解説する。また、公文書管理法の改正に関しては、別の政党(本案では参加しなかった共産党も提出に加わった)からも改正案が提出されているので、こちらの法案との比較も行う。


本法案提出に至る背景

本法案は、安倍政権下で問題になった、ずさんな公文書管理体制改善のために提出された。一連の問題で特に本法案と関連が深いのは、森友学園の決裁文書改ざん問題である。

学校法人森友学園への国有地払い下げ価格が近隣と比べ異常に安かったことで、当時の理事長が安倍総理夫人と交流を持っていたこともあり、不当な価格で取引されたのではないかとの疑いが持たれた。土地の価格が適切に設定されたのか検証する過程で、財務省理財局による決裁文書改ざんが明らかにされた。国有地払い下げの経緯を国会に示す文書を提出した際に、首相や夫人が関与したと捉えられかねない記述を削除したのである。

当時、元理財局長であった佐川国税庁長官は麻生財務大臣から減給の懲戒処分を受け、同日依願退職を申し出て、辞職が成立した。この問題では財務省職員に自殺者まで出してしまったが、誰の命令により改ざんが行われたかという点は依然として明らかになっていない。決裁文書などの公文書は、国家の活動を国民にきちんと説明するために、適切に保存・管理されなければならない。公文書の改ざんが行うことができない仕組みを構築するために、本法案が提出された。


電子決裁の義務化

行政文書の決裁手続きは、電子決裁で行わなくてはいけないという趣旨の条文が追加された。電子決済システムでは決裁後の文書はシステム上に保存されるため、改ざんのリスクが少なくなる。例えば、総務省が利用を促す「一元的な文書管理システム」であれば、修正しても変更履歴が残されるため安心だ。

電子決裁システムは改ざん防止に寄与することはもちろん、業務の効率性にも良い影響をもたらす。例えば、システム内で過去文書を検索し引用することで、ひな形を用いて迅速に起案できる。

導入に一定の予算は必要だが、業務の効率化による残業代の抑制にもつながり、長期的に考えれば、コスト回収も可能だと考えられる。ただし、ユーザビリティーの観点から、利用の際に戸惑いが生じる可能性が高い。電子決裁では添付書類をひとつづつクリックして開かねばいけないため、従来の紙をペラペラめくるスタイルと比べ、どうしても時間がかかってしまう。こうなるとかえって業務の停滞につながるため、今後のシステムの機能面での向上は必須である。


決裁文書の変更の禁止

誤字など軽微な誤りを修正する場合をのぞき、決裁済み行政文書の内容を変更してはいけないとされた。また、各行政機関の文書管理を総括する立場である総括文書管理者は、決裁済み文書の変更を防止するために、必要な措置を講じなければならない。

上記規定に違反して決裁済み文書の変更をした者に対しては、罰則規定も設けられた。3年以下の懲役または100万円以下の罰金という重い処分が下る。


独立公文書監視官を内閣府に設置・通報者の不利益な取り扱い禁止

独立した公正な立場で行政文書の管理状況を監視する「独立公文書監視官」を新たに内閣府に設置する。独立公文書監視官は内閣総理大臣が任命し、不適切な行政文書の管理が行われている場合、職員からの通報を受理する立場でもある。

通報した職員はさまざまな不利益な取り扱いを受けることが予期されるが、今回の法改正では通報を理由とした、免職・休職・降任・降給などの不利益な取り扱いを禁じる。


もうひとつの改正案との違い

公文書管理法関しては本法案の他に、別政党も含めた野党の議員たちから別途で改正案が提出されている。両者はずさんな公文書管理体制の改善を目指すという大きな目的は一致しているが、内容は全く異なるものだ。

本法案は、決裁文書の改ざんを防ぐために電子決裁を義務化するという点が主な内容だ。一方、野党6党が共同で提出した法案は、公文書の範囲拡大や保存期間の明確化(1年以上保存が必要な公文書がどのようなものか規定)が主たる内容である。

さらにいうと、本法案が森友学園の決裁文書改ざん問題に対応しているのに対し、野党6党の法案はPKO活動の日報や桜を見る会の名簿の廃棄など、文書の保存・管理に関する問題に対応することが主眼におかれている。

政府の公文書管理体制についてはさまざまな問題点が指摘されており、法改正の視点も政党や議員によって異なることが分かる。

最新の賛成コメント

@restog

2021/05/21

電子文書にすることで改ざんの防止をすることが出来る一方で、セキュリティーの面で心配がある。セキュリティーが侵されないように、しっかりとした知識を持った人を適切に起用してほしい。

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@restog

2021/05/21

電子文書にすることで改ざんの防止をすることが出来る一方で、セキュリティーの面で心配がある。セキュリティーが侵されないように、しっかりとした知識を持った人を適切に起用してほしい。

@kimuu

2020/09/09

毎年きっちり確定申告している国民からしてみたら、1日も早く公文書管理法を改正してほしいものです。あやふやな判断で1年未満で文書を処分できるなんて。こっちは7年間も請求書など保存し続けてるというのに。

 詳細情報

議案件名 :公文書等の管理に関する法律の一部を改正する法律案 
提出国会回次 :196
議案番号 :21
議案種類 :衆法
提出議員 : 後藤 祐一
提出日 :2018年5月17日
公布日 :
法律番号 :