分散型エネルギー利用の促進に関する法律案

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提出議員 :近藤 昭一

立憲民主党は、分散型エネルギー推進4法案を、国民民主・共産・社保・社民の野党共同で衆院に提出した。今回は、このうち分散型エネルギー利用の促進に関する法案について、内容やメリット・デメリットを解説する。

立憲民主党は、分散型エネルギー推進4法案を、国民民主・共産・社保・社民の野党共同で衆院に提出した。今回は、このうち分散型エネルギー利用の促進に関する法案について、内容やメリット・デメリットを解説する。

法案策定の背景

東日本大震災による福島原発事故の発生を契機に、大規模集中型のエネルギーシステムから、分散型エネルギーシステムへの転換が進められている。

従来は大型の発電施設を設置して遠方の需要家に送電網を通じて供給するという仕組みだったが、この方法では災害などで発電所が被害を受け稼動が停止してしまった時に、広大な地域で電力の供給が止まってしまうのがデメリットだ。

この点、地域のエネルギー源を活用することで近隣に供給源を作る分散型エネルギーシステムなら、災害時のダメージを抑えることができる。社会的に分散型エネルギーの需要が高まっていることを受けて、分散型エネルギー推進のために本法案が提出された。


基本理念

法案の第3条の基本理念では、「電気・ガス・水道といった社会インフラの抜本的な制度改革の状況を踏まえつつ、大規模集中型システムによるエネルギーの供給が中心である従来の施策を見直す必要がある」という基本的な認識に立たないといけないと述べている。つまり、これまでの制度・施策から完全に脱却する意識を持つことを求めているのだ。

また、地域の実情に応じて効果的・効率的なエネルギーの地産地消を進めるべきとしている。地域資源やその地域における多様な人材を活用して地域の特性を活かした事業を展開することで、雇用機会の創出や地域経済の活性化にも資するよう配慮しなくてはいけない。


基本計画の国及び自治体の策定義務

法案では、具体的な施策は地域の実情に応じて策定されるべきという方針の下、国が基本方針を策定し、それに基づき、地方自治体が固有の利用促進計画を策定するという流れで進められる。

国が定める基本方針では、以下の5つについて定めるとしている。

  • 分散型エネルギー利用促進の意義及び目標に関する事項
  • 分散型エネルギー利用促進のために国が実施すべき施策に関する基本的な方針
  • 自治体が定める分散型エネルギー利用促進計画の作成に関する基本的な事項
  • 分散型エネルギー利用の促進に関する施策の効果を評価する際の基本的な事項
  • そのほか、分散型エネルギー利用の促進に関する重要事項

基本方針は経済産業大臣が策定し、策定後は速やかに公表しなくてはいけない。

一方、都道府県や市町村などの自治体が策定する基本計画では、以下の事項を定めるとする。

  • 分散型エネルギー利用促進計画の区域
  • 分散型エネルギー利用促進計画の目標
  • 発電施設や再生可能エネルギー熱利用施設など、分散型エネルギー利用の促進のために必要な事業に関する事柄
  • 分散型エネルギー利用促進計画の達成状況の評価に関する事項
  • 計画期間
  • そのほか、分散型エネルギー利用の促進に関し必要な事項

上記の基本計画は、都道府県と市町村が共同して作成することも可能だ。


国から地方への交付金の交付

法案では、国は策定した分散型エネルギー利用計画の下で活動を推進する自治体に対し、事業等の実施に関する経費に充てるため、交付金を支給することができるとしている。また、交付に関する必要事項は、経済産業省令で定めるとしている。


本法案のメリット

分散型エネルギーへの転換が図られることで、従来の大規模集中型システムが抱える以下のような課題が解決に向かう可能性が高い。

  • エネルギー利用効率の低さ ⇒ 発電に伴い発生する熱が有効活用されていない

  • 送配電に伴う損失 ⇒ 遠方の需要家に供給するにあたって、辿り着くまでに電力が失われる

  • 送電網投資の負担

  • 市場性の低さ ⇒ 大規模発電施設を整備できる企業は限られており、寡占状態

  • 何らかの事情で発電がストップした時、被害を被る地域の規模が大きい

また、地域の資源や人材の活用が進み、得た利益が地域に還元されれば、雇用機会の創出や地域経済の活性化につながるだろう。コロナの影響で働き口を失った労働者の受け口になると期待できる。

更に、各自治体において資源調達・雇用・利益創出のサイクルが実現するため、自立的で個性豊かな社会が誕生するとの期待も持てる。


本法案のデメリット

分散型エネルギーへの転換は、国が今まで経験してきたことない新たな施策である。このため、自治体に具体的な施策を任せることで、各地域におけるエネルギーの水準がばらばらになる恐れがある。中には、ことあるごとに供給がストップする等、一定の質が担保できないケースも想定できる。

従来のエネルギー施策を一新する抜本的な改革となるため、実施にあたり、ある程度の痛みはやむを得ないが、このようなリスクがあることは認識しておこう。

最新の賛成コメント

@rolling893

2020/11/16

大規模災害等によるリスクを考えると分散型志向は良いと思います。 ただそれって地方自治体がどのようにイニシアティブをとっていくのかなあ。電力会社の問題ではないのかな。

最新の反対コメント

@Beagle

2020/11/15

一極集中から脱却したいということは理解できますが、具体的にどのようにしたら良いのか全く伝わってきません。具体例をもう少し盛り込んだ方が良いのでは。

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@rolling893

2020/11/16

大規模災害等によるリスクを考えると分散型志向は良いと思います。 ただそれって地方自治体がどのようにイニシアティブをとっていくのかなあ。電力会社の問題ではないのかな。

@Beagle

2020/11/15

一極集中から脱却したいということは理解できますが、具体的にどのようにしたら良いのか全く伝わってきません。具体例をもう少し盛り込んだ方が良いのでは。

 詳細情報

議案件名 :分散型エネルギー利用の促進に関する法律案 
提出国会回次 :198
議案番号 :21
議案種類 :衆法
提出議員 : 近藤 昭一
提出日 :2019年6月14日
公布日 :
法律番号 :