エネルギー利用の基本理念を確立することで熱利用の促進を目指す法案

熱についてエネルギー源としての再生可能エネルギー源及び廃熱の利用を促進する等のためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律案

賛成 (2)
反対 ()

提出議員 :近藤 昭一

今回は、「熱についてエネルギー源としての再生可能エネルギー源及び廃熱の利用を促進する等のためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律案(熱エネルギー利用促進法案)」について解説する。

本法案は廃熱や風力・バイオマス等の再生可能エネルギーの利用促進をはかる目的があり、そのために講じる施策を定め、再生可能エネルギーの範囲を拡大している。具体的な内容を見ていこう。


環境負荷の低減と資源の有効活用を目指す

分散型エネルギー施策の一つである廃熱をはじめとする熱利用の促進について、積極的な熱利用を推奨することが大きな目的だ。

熱は再生可能エネルギーの一つとして期待されているが、実情は、太陽熱や地中熱等の再利用が進んでいない。また、火力発電所では約50%の熱が失われており、製造業の配管保温材劣化では原発7基分もの熱ロスがあると言われている。このように日本では熱の有効利用がなされているとはいえず、省エネの余地も大いにある。

このため、本法案では熱のエネルギー利用に関する基本理念を定め、廃熱を法的なエネルギー源の一つに位置づけ、総合的な熱利用の促進をはかる。

また、熱に限らず、再生可能エネルギーの利用促進も本法案の大きな目的である。再生可能エネルギーとは非化石エネルギー源のうち、永続的にエネルギー源として利用できると認められたものを指し、太陽光や風力、水力、地熱、太陽熱、大気中の熱、バイオマス(動植物から産出される有機物)が該当する。

本法案はこのような再生可能エネルギーの普及に寄与することで環境負荷の低減を目指し、かつ廃熱も資源と位置づけることで資源の有効活用を目的とする。


各法律に廃熱等の再生可能エネルギー利用促進に関する規定を追加

本法案では、エネルギーの使用の合理化等に関する法律等、エネルギーに関して規定する各種法律の一部を改正する。本法案の具体的な内容は、下記の通りだ。

エネルギーの使用の合理化等に関する法律

基本理念の項目に、以下の内容を追記する。

  • エネルギー使用の合理化等は、エネルギー利用者による使用が抑制されることを基本とする
  • エネルギー使用の合理化等は、使用の目的に応じて、適切かつ効率的にエネルギーの使用が行われることを基本とする
  • エネルギー使用の合理化等は、再生可能エネルギー及び廃熱の利用を促進し、国内の地域から得たエネルギーを地産地消で用いられることを基本とする
  • エネルギー使用の合理化等は、利用者による合理化促進の取り組みが主体的に行われるよう促進するために、広く情報公開を行わなければならない

また、廃熱発生量の公表制度を定めている。報告の数値が政令で定める基準を越えた事業者に対しては、地域内の事業者や住民の廃熱の利用等に資するため、事業者の名称や住所、代表者の氏名等、経済産業省令で定めた事項を公表する。

その他、下記の法律においても、廃熱をエネルギー資源として捉えるとする文言等が追加されている。

  • 新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法
  • 豪雪地帯対策特別措置法
  • 河川法
  • バイオマス活用推進基本法
  • 都市の低炭素化の促進に関する法律
  • 農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律

新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法

新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法では、バイオマスや太陽熱・海水や河川水・氷や雪・廃熱などを熱源とする熱利用、またバイオマスや地熱・風力・水力・太陽電池・廃熱を利用した発電を促進すると定めている。

豪雪地帯対策特別措置法

豪雪地帯対策特別措置法では雪の冷熱エネルギーの活用促進のために、国や自治体に対し、エネルギー利用施設への雪の運搬行為を求める内容を追記している。

河川法

河川法の流水の占用許可に関する規定において、河川水を利用した発電だけでなく熱利用についても、許可を必要としないと定めている。

都市の低炭素化の促進に関する法律

都市の低炭素化の促進に関する法律では、二酸化炭素排出抑制の手段に廃熱の利用を規定し、その促進のために廃熱利用施設を整備する事業者に対し、助成や情報提供など援助行為を行うことを自治体に求めている。

農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー利用の促進に関する法律

農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー利用の促進に関する法律では、風力発電で問題となる漁業関係者との調和にも配慮して、再生可能エネルギーの利用形態として発電だけでなく熱利用も新たに含めている。

このように本法案では、各法律において単に再生可能エネルギーをエネルギー源として定義するにとどまらず、実際に利用促進がなされる点にまで踏み込んでいる。


温室効果ガスの削減やエネルギー自給率の向上が期待できる

本法案は廃熱などの熱をエネルギー源として捉え、再生可能エネルギーの利用促進を目的としている。本法案が成立・施行されれば、再生可能エネルギーの普及が進むと考えられる。そこで、再生可能エネルギーが普及するとどのようなメリットがあるか見ていくとしよう。

温室効果ガスの削減

再生可能エネルギーは地球温暖化の原因である温室効果ガスの排出を抑制できる。地球温暖化はグローバルな問題であり、パリ協定に基づき、各国は二酸化炭素等の温室効果ガス削減のための取組みを行っている。日本では、2030年の温室効果ガスの排出量を、2013年比で26%減という目標を定めている。

本法案の施行により、火力発電等に代替して再生可能エネルギーの普及が進めば、温室効果ガスの削減に寄与し、上記目標の達成確率は高まるだろう。目標を達成すれば、国際社会における日本の立ち位置も有利になると期待できる。

エネルギー自給率の向上

また、エネルギー自給率の向上も期待できる。日本のエネルギー自給率は2016年時点で8.4%である。国内で必要とするエネルギーのほとんどを海外に依存している状況だ。

資源に乏しい日本のエネルギー自給率を上げるには、再生可能エネルギーを活用するしかない。日本における再生可能エネルギーの普及率は欧米諸国と比べ半分程度であり、伸びしろは大いにあると考えられる。外国に依存しない強い国家作りには、再生可能エネルギーの活用は欠かせない。


安定したエネルギー供給体制が崩れる危険性も

本法案のデメリットとして、再生可能エネルギーのデメリットを紹介する。

まず、発電コストが高くエネルギー変換効率が悪い点が挙げられる。つまり、再生可能エネルギーはコストパフォーマンスが悪いのだ。エネルギー変換効率でいえば、火力発電がおおよそ50%程度であるのに対し、太陽光発電は20%程度にしか満たない。ただ、今後の技術開発次第では上記の問題は解決する可能性もある。

また、天候や季節といった環境的要因に発電量が左右されるため、安定しづらいのも弱みだ。天候の悪化が続いたことで電力供給が滞ると、大規模停電の発生の要因にもなる。

太陽光や風力・地熱・太陽熱・バイオマス等の再生可能エネルギー普及の必要性が叫ばれて久しいにも関わらず普及が進まないのは、コストパフォーマンスや安定性の観点で実用化が難しいからなのだ。有事の安全性では劣る火力発電や原子力発電だが、安定性では優れているのはメリットだ。本法案を施行することで安定的なエネルギー需給体制が崩れる恐れもあると言えるだろう。

本法案に賛成や反対の意見がある方は、ぜひ以下の投票ボタンを押して頂きたい。

最新の賛成コメント

@TONOさん3号

2021/04/29

無駄遣いは多少あるだろうと思っていたがかなりの割合で消失していたのですね。改善するためにもコストと労力というエネルギーも使うのだけどどれぐらいで償却できるのだろうか? 新しい技術の促進も行わないといけないし考えないといけないことが山積みです。 人間の知恵というエネルギーには無駄はないと思うのでより良い方向へ考えて行きたいですね。

最新の反対コメント

まだ反対意見が投稿されていません。

すべてのコメント

@TONOさん3号

2021/04/29

無駄遣いは多少あるだろうと思っていたがかなりの割合で消失していたのですね。改善するためにもコストと労力というエネルギーも使うのだけどどれぐらいで償却できるのだろうか? 新しい技術の促進も行わないといけないし考えないといけないことが山積みです。 人間の知恵というエネルギーには無駄はないと思うのでより良い方向へ考えて行きたいですね。

@kimuu

2020/11/17

同時に提出された再生可能エネルギー等の推進関連4法案の内容を知ることで、日本のエネルギー事情にかなりのムダがあることを知りました。 より効率的なエネルギー生産と供給を実現することにも繋がる法案ではないでしょうか。

 詳細情報