昨今、気候の変動が著しく大雨や台風などの自然災害により大規模な被害を受ける事態が相次いでいる。
自然災害の被災者への支援内容を定めた法律として被災者生活再建支援法があるが、支援の対象が限定されており、支援を受けられない被災者の数が多いことが問題視されていた。こうした状況を考慮して、2020年10月30日、被災者生活再建支援法の一部を改正する法律案が閣議決定されるに至った。
改正案では支援対象を拡大し、新たに「中規模半壊」という被災者区分を設けている。現状の問題点から被災者生活再建支援法改正案で変わる点について、わかりやすくまとめてみた。
被災者が被災者生活再建支援法の支援を受けるには、市区町村宛てに申請を行い、罹災証明書を発行してもらわなければならない。罹災証明書に記載された「全壊」「大規模半壊」「半壊」といった災害区分に応じて、支給対象か否か、支給額はいくらになるのかが変わってくる。
つまり、支給対象に当てはまらないと、実際に被害が生じていても支援を受けられない。例えば水害によって浸水被害を受けた場合、支援金の支給対象となるのは原則として床上1メートル以上の浸水だけであり、浸水が床上1メートルに満たなければほとんどのケースで一銭たりとも支給されない。
2019年の台風19号の被害では床下浸水や床上1メートルに満たない浸水が全体の9割を占め、多くが支援を受けられずに問題になったところだ。相当な被害を受けないと支給対象とならず、被災者支援の機能を果たしているのか疑問視されていた。
今回の改正案は、支給対象世帯に大規模半壊世帯には及ばないが相当規模の補修を有する世帯として「中規模半壊世帯」を追加する。
市区町村の被害認定調査の結果をもとに判定される損害割合は「中規模半壊世帯」の場合30%台で、大規模半壊世帯の40%台や全壊世帯の50%以上と比べると要件が緩和され、支給対象世帯の数は増えることだろう。
中規模半壊世帯の支給額は住宅の再建手段に応じて変動し、「建設・購入」が100万円、「補修」が50万円、「貸借」が25万円だ。
被災世帯区分 | 損害割合 | 基礎支援金 | 加算支援金 | ||
---|---|---|---|---|---|
建設・購入 | 補修 | 賃借 | |||
全壊 | 50%以上 | 100万円 | 200万円 | 100万円 | 50万円 |
大規模半壊 | 40%台 | 50万円 | 200万円 | 100万円 | 50万円 |
中規模半壊 | 30%台 | - | 100万円 | 50万円 | 25万円 |
本改正案が成立・施行されれば、被災者の住まいの再建が迅速に進む効果をもたらすだろう。一方で金額が適正なのかという問題もある。生活再建支援金は世帯に応じて支給され、支給額の上限は「全壊」で住居を建築・購入する場合の300万円だ。家を立て直すのに300万円という支給額は少なすぎるのではないか。
本改正案について、皆さんはどう思うだろうか。
@ichi369
2021/04/23
被災者支援のために一歩前進したという印象は受けますが、生活を再建するためには、全く足りない金額であることには変わらないと思います。単純に支援金だけではなく、制度として、生活再建に役立つサポート体制を整える方が良いと思います。
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@ichi369
2021/04/23
被災者支援のために一歩前進したという印象は受けますが、生活を再建するためには、全く足りない金額であることには変わらないと思います。単純に支援金だけではなく、制度として、生活再建に役立つサポート体制を整える方が良いと思います。
@restog
2021/02/01
より多くの人に被災者支援が広がることは良いことだと思う。しかし、申請の方法が複雑であったり、支援対象かの判断が難しかったりして、思うように進まないことは事実だと思う。 これを機に、被爆者支援の在り方も見直しが進むことを期待する。
@TONOさん3号
2020/11/30
昔から全壊とと半壊をどこで区別できるのかは疑問でした。建て直さなければ住めない状況は全壊と同じではないかと思っていました。 今回の案はまだ少しですが支給が増えるのは賛成はできます。 ただまだまだなので改正を早急に進めて広く援助できるように変えて言って欲しいです。どこかに線引きは必要なのも分かりますが。
議案件名 : | 被災者生活再建支援法の一部を改正する法律案 |
提出国会回次 : | 203 |
議案番号 : | 2 |
議案種類 : | 閣法 |
提出者 : | 内閣 |
提出日 : | 2020年10月30日 |
公布日 : | |
法律番号 : |