正規雇用と非正規雇用の待遇格差の是正法案

短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律等の一部を改正する法律案

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提出議員 :西村 智奈美

「正社員には退職金を支給し、契約社員(勤続年数10年以上)には退職金を支給しないとの取扱いが認められるのか)、最高裁で争われた事案で、こうした取扱いは不合理とは言えないとの判決が下った。

年末休暇や児童手当の支給で契約社員に差をつけるのは不合理だとも言えるが、退職金は社員の定着のために必要なものなので、正社員には支給し契約社員には支給しないという規程もやむを得ないと、最高裁は判断している。

この判決を受けて、立憲民主党がボーナスや退職金に関する正規雇用者と非正規雇用者の待遇格差の是正を求めるために提出したのが本法案である。

「不合理な相違の禁止」を「合理的とは認められない相違の禁止」に文言変更

本法案の大きなポイントは、現行の法律では「不合理な相違の禁止」と謳われている正規雇用と非正規雇用者間の取扱いを「合理的とは認められない相違の禁止」と表現を改めた点にある。このことで不合理な扱いの妥当性を労働者側から使用者側に転換できる。 つまり、労働者と雇用者間で争いが生じた時は、その取扱いの違いに問題がないことを企業側が証明する必要があるのだ。

待遇の相違が適切か判断する際に考慮すべき事項を限定

本法案では、正社員と短時間・有期雇用労働者における基本給、賞与、退職手当、その他の待遇の違いが合理的とは認められない相違かどうかの判断に当たって、考慮すべき事項を限定している。

例えば、退職金に関する相違が適切なものか判断する際は勤続年数を今まで以上に考慮しなければならなくなる。従来のように、 「正規雇用だから退職金を支払う」、「非正規雇用には退職金を出さない」と画一的に判断するのではなく、職務に応じて判断すべきだと述べている。

雇用主の説明責任の厳格化

本法案では、正規雇用者と非正規雇用者の待遇の相違について、措置の対象とされる従業員に対する雇用主の説明責任の厳格化も求めている。従業員から説明の要望があった場合、解凍しなければいけないのは以下の点だ。

  • 当該非正規労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由
  • 雇用管理の改善等に関する措置の決定に当たって考慮した事項
  • 労働者の職務の価値の評価等を踏まえた賃金体系やその他の待遇の決定基準
  • 当該短時間・有期雇用労働者及び対応通常労働者の賃金その他の待遇の決定の方法
  • 教育訓練の実施の状況
  • 福利厚生施設の利用に係る規則

職務評価の導入

派遣だから、または契約社員だからとして、働き方によって不合理な差を生じさせないように、職員の評価は担当した職務によって評価する「職務評価」の導入が提案されている。職務評価の方法に関しては現状、確固たるやり方が存在しないため、その具体的な方法は、調査研究の検討事項に含まれている。

正規社員の待遇悪化を禁止する

待遇格差の解消に当たっては、雇用主によって正規社員の待遇を落とす措置が取られる危険がある。それを避けるために、本法案では、正規労働者以外の待遇改善によって、処遇格差の解消をはかる方針が定められている。

以上が本法案の概要だ。成立すれば派遣労働者や契約社員に対しても、ボーナスや退職金が支払われるようになるかもしれない。そうなれば、コロナの影響で失業や賃金カットに苦しむ非正規雇用者の救済手段となる可能性は高い。

本法案のデメリットは従業員に対する賃金の支払額が増えるため、企業経営が逼迫する恐れがある点だ。ボーナスや退職金を支払いきれない企業が、今まで以上に過酷な派遣切りを行うことになるかもしれない。

皆さんは本法案をどのようにお考えだろうか?

最新の賛成コメント

@restog

2021/05/12

正社員の割合が下がっているこの世の中では、その人の能力に応じた待遇を用意するというのは当たり前のことだと感じる。

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@restog

2021/05/12

正社員の割合が下がっているこの世の中では、その人の能力に応じた待遇を用意するというのは当たり前のことだと感じる。

@rolling893

2020/12/28

格差是正が改悪につながるケースはけっこうあるので、その点に予防線を張っているのはよく考えられていると思います。

@もも

2020/12/09

非正規雇用者の貧困救済となる、いい法案だと思います。手当を出すのは職務に応じて判断すべき、というのは確かにその通りだと思いますが、そこの判断基準を設定しないとあやふやにして結局ごまかす企業がたくさん出てきそうなので、よく考えて設定しないといけないですね。

@ichi369

2020/12/09

待遇改善を人件費という観点で考えると、大幅な増大には応じられないというのが経営側の考えになるだろう。そうなると、能力や実績に応じて支給することになり、本文中にもあるように正規社員の待遇悪化につながる可能性がある。これにより、非正規雇用の人たちは経営側だけでなく、正規雇用の人たちとも対立することにもなりかねない。また、能力で競うことになれば、結果的に低評価によって待遇は以前よりも悪化するかもしれない。その点を考慮した改正、改善を行ってもらいたい。

@TONOさん3号

2020/12/09

退職金に関してはどうなのかとは思うけどボーナス等は貢献度によって支払うべきと考える。貢献してきた人にはそれなりの対価を払うという考えが普通だと思う。パートとかアルバイトだと少しの額でも嬉しいと思う。 ただ退職金に関して派遣社員の場合派遣会社が補うべきとも考えます。その派遣会社にも貢献していることになるので。

@なんたん

2020/12/07

派遣やパートの方でも責任ある仕事をしている方もいるのでそういった方にはボーナスをあげるべきだと思いますが、だんだん正社員との差を感じなくなってきました。

 詳細情報

議案件名 :短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律等の一部を改正する法律案 
提出国会回次 :203
議案番号 :2
議案種類 :衆法
提出議員 : 西村 智奈美
提出日 :2020年11月13日
公布日 :
法律番号 :