桜を見る会の名簿・森友学園問題・廃棄PKO日報隠ぺいなど国の公文書管理体制のずさんさが明るみになる事態が続きました。度重なる不祥事を受け、公文書管理法の改正への動きが進んでいます。国会では、これまで何度も、公文書管理関連の法案が提出されています。
現在行われている第204国会でも、日本維新の会が公文書管理関連の2法案を提出しました。
- 公文書管理法改正案
- 公文書院の設置によって公文書管理の適正化を推進する法案
今回はこれらの法案を軸に、これまで公文書管理関連で提出され、いまだ審議中の法案について解説、比較していきます。
それらを比較しながら、公文書管理のベストな在り方について考えてみよう。
日本維新の会から提出された、「公文書管理法改正案」のポイントは以下の4つです。
①公文書管理のデジタル化と高度情報技術の活用
②行政文書ファイルの永久保存
③国会議員からの個別具体的な要求に関する文書作成の義務付け
④文書管理に必要な体制の整備を各行政機関の長に義務付け
それぞれのポイントについて、現行制度との違いを見ていきましょう。
①公文書管理のデジタル化と高度情報技術の活用
現在、公文書の管理は原則紙で行われています。今回の改正案では公文書等の管理においてはペーパーレスを原則とするという内容が加えられました。日本維新の会によると、文書管理をデジタル化すると、保管コストが低く抑えられるだけでなく、国民が文書の閲覧をしやすくなるという利点があるとのことです。
また、記録の改ざんが極めて難しいとされる「ブロックチェーン」という高度な情報技術を活用することも規定しました。ただし、この技術を導入すると、誤字を一字修正するのさえ難しくなるため、それについては別の法整備が必要になるかもしれません。
②行政文書ファイルの永久保存
改正案では、行政文書ファイルの保存期間及び廃棄の概念を廃止すると謳っています。「行政文書の最低保存期間基準」によって行政文書の種類ごとに保存期間が定められています。よって、保存期間満了後に、その重要性が認識された文書があったとしても、閲覧できないのです。
今回の法案では行政文書ファイル等の保存期間及び廃棄の概念を廃止する措置が規定されました。歴史公文書等は国立公文書館等に移され、それ以外の文書は各行政機関において永久保存されます。
③国会議員からの個別具体的な要求事項に関わる文書作成の義務付け
国会議員から各行政機関に対し、行政文書等の開示請求が行われる場合があります。現在このような場合、「どのような要望があり、だれがどのように関わったのか」について、文書を作成することが義務付けられていません。何らかのトラブルが生じ、過去の経緯を振り返ろうとした時にその経緯を示す文書が存在しないと、事実関係を確認できない可能性があります。このため、本改正案では国会議員からの個別具体的な要求事項を文書の作成を義務付けると規定しています。
④文書管理に必要な体制の整備を各行政機関の長に義務付け
現状の公文書管理体制は、国が規定する基準に基づき、一般職員が職務の一環として管理を担っているに過ぎません。つまり、文書管理の専門的知識に基づいた管理体制が取られているわけではないのです。適切な公文書管理体制が構築されるためには、専門家を配置して専門的知見を取り入れる必要があります。今回の改正案では、専門家の配置など必要な体制の整備を行うことが、各行政機関に求められます。
公文書管理法の改正案は本法案以外にも、現在審議中のものが2つ存在します。それらの法案の提出時期や提出者、内容を以下表にまとめました。
法案 | 提出時期 | 提出者 | 内容 |
---|---|---|---|
公文書の管理に関する法律の一部を改正する法律案 | 2017年12月5日 | 篠原豪議員 他15名 (民進、共産、社民、自由の共同提出) |
・公文書の範囲拡大 ・文書の保存期間の明確化 ・行政文書ファイルの保存期間統一 |
公文書の管理に関する法律の一部を改正する法律案 | 2018年5月17日 | 後藤祐一議員 他13名 (国民民主、立憲、自由、無所属の共同提出) |
・電子決裁の義務化 ・決裁文書の変更禁止 ・独立公文書監視官を内閣に設置 ・通報者の不利益な取り扱い禁止 |
篠原豪議員が提出した法案では、行政文書の対象や保存期間が主な内容となっています。対して、後藤祐一議員が提出した法案は電子決裁の義務化が主な内容です。内容は異なりますが、どちらも森友学園問題などで話題になったずさんな公文書管理体制を改善するために考案された点は共通しています。
今回の法案との関係性ですが、上記2つの法案をさらに発展させた法律が今回のものと言えるでしょう。篠原豪氏の法案では担当者の恣意的な判断で公文書が廃棄されないよう公文書の保存期間が明確化されましたが、日本維新の会の法案は、保存期間の概念自体を撤廃するとしています。
また、後藤祐一氏の法案では電子決裁の義務化が謳われていますが、日本維新の会の法案では電子決裁に限定せず、公文書管理体制自体をデジタル化すると述べています。
今回、公文書管理法の改正案とともに「公文書院の設置等による公文書管理適正化推進法案」も提出されています。(原文はこちら)
ここで規定されている公文書院とは、独立性と専門性を持って、公文書の適正な管理を行う組織です。基本的に以下の事務を取り扱います。
公文書院は行政機関が行う文書管理が適正になされているか監視する立場です。統一基準を策定したり、中立公平な立場で行政機関を監視したりします。
また、2018年12月に立憲、国民民主などの野党が共同で提出した「公文書等管理の適正化の推進に関する法律案」では公文書記録管理院について規定しています。こちらもいまだ審議中です。
同法案で規定されている公は公文書記録管理院の業務は、以下の通り記されています。
※歴史公文書等:歴史的に意義ある公文書として国立公文書館に移管された文章
日本維新の会が提出する公文書法の改正は、公文書管理を全てデジタル化するということもあり、公文書院では一元的な文書管理が可能なようです。また、細かい違いではありますが、公文書院では公文書管理における専門家を育成するという業務も行うとのことです。以前提出されている法案では、専門家育成を行うのは政府と規定されています。
行政文書の保存期間撤廃や管理体制のデジタル化を謳う日本維新の会の公文書管理法改正案。公文書管理法改正案は過去、本法案以外にも提出されており、いまだ結論が出ていません。また、公文書院という公文書管理のための機関の設置に関する法案も合わせて提出されています。このように公文書管理を中立的な立場で行う組織を設立するための法案も過去、提出されています。
各法案とも内容に差があれども、ずさんな公文書管理体制を正すという目的では一致しています。
これらを比較しながら、公文書管理を適切に行うために必要な施策は何か、是非考えてみてほしいです。
@なんたん
2021/02/21
森友問題はわざとだろうと思うがそうさせないためにも電子化は賛成です。紙ベースは場所も取りますし、何年後には廃棄で証拠もなくなるし。どんな話し合いで文面を残すのかは個人的にやり取りしたらわからないから難しいですね。
まだ反対意見が投稿されていません。
@なんたん
2021/02/21
森友問題はわざとだろうと思うがそうさせないためにも電子化は賛成です。紙ベースは場所も取りますし、何年後には廃棄で証拠もなくなるし。どんな話し合いで文面を残すのかは個人的にやり取りしたらわからないから難しいですね。
@ichi369
2021/02/12
IT化は行政が最も遅れているので、効率化やコストダウンに効果のあることは率先して取り組んでもらいたい。加えて、国民に広く開示できることは、政治の透明性という観点でも良いと思う。
@rolling893
2021/02/12
技術の進歩に合わせた仕組みの見直しはどんどん進んでいってほしいです。国は地方自治体に比べて変化への対応が遅い気がします。
@TONOさん3号
2021/02/12
基本的には賛成です。公文書のの管理を厳格にやるという意味でもデジタル化は必須です。まだまだ日本はシステムも構築が遅れているので技術の革新と充実を早くやって欲しい。 またすべての公文書を公にするのには反対の立場です。 国益に損なうもの、知らなくてよいことの線引きはきちんとして欲しい。
@もも
2021/02/10
賛成です。公文書のような膨大な量の文書の管理にこそデジタル技術を使っていくべきだと思います。紙ベースだと、いつか保管場所の限界が来てしまうのではないでしょうか。文書は可能な限り残しておいた方が色々と便利でしょうし、保管に関するコストや手間も減らした方がいいですし、反対する理由がありません。
@だるばーど
2021/02/10
公文書を作る側でした。公文書の分野はなかなかデジタル化が進んでおらず、紙文化で受け渡しにも保管にも場所も取るし本当に手間でした。これを機にどんどん時代に合った保管方法にしていってほしいです。2018年に出された法案さえも未だ審議中なのは残念です。
議案件名 : | 公文書等の管理に関する法律の一部を改正する法律案 |
提出国会回次 : | 204 |
議案番号 : | 15 |
議案種類 : | 参法 |
提出議員 : | 片山 大介 |
提出日 : | 2021年1月29日 |
公布日 : | |
法律番号 : |