第二次安倍政権における啓発広報費等に関する質問主意書

引用:答弁結果から編集部にて作成

提出議員 : 辻元 清美

コロナ禍の中、限られた国の予算がどのように使われているのかは国民にとって切実な問題だ。そんな中、内閣府所管の巨額な政府広告費が議論の的となっている。

これまでも、この莫大な予算に関して議論が続けられてきたが、2020年度の第1次補正予算ではさらに過去最大規模の約100億円が追加された。

また、持続化給付金事業において株式会社電通への巨額な再委託についても、各方面から疑問の声があがっている。こういった特定企業と政府の関係に問題はないのだろうか。政府の見解と共に解説をしていく。


安倍政権になってから膨れ上がる政府広報費

2012年12月26日に発足された第2次安倍内閣。安倍政権になってから、政府広報費の額が右肩上がりに急上昇していることをご存じだろうか。

内訳の大部分は啓発広告費であり、そのほとんどを占めるのは雑役務費。辻元議員は、政府広告費がなぜここまで巨額である必要があるのかを国民に説明すべきだとし、その不透明な啓発広告費および雑役務費の内訳についても項目別の内容開示を政府に求めた。

まずはその内訳から見ていくこととする。2010年度〜2020年度の政府広告費の総額と内訳について、政府の回答は以下の通りだ。

答弁:年別政府広報費額と内訳



政府広報費 内 啓発広報費 内 雑役務費
2010 49.7億円 47.9億円 47.8億円
2011 53.9億円 52.2億円 52.7億円
2012 40.6億円 39.3億円 38.9億万円
2013 62.7億円 58.4億円 58.3億円
2014 89.9億円 86.7億円 86.6億円
2015 111.1億円 104.1億円 104.3億円
2016 111.4億円 104.4億円 104.3億円
2017 111.2億円 103.2億円 103.1億円
2018 112.6億円 105.8億円 105.8億円
2019 115.3億円 108.3億円 108.3億円
2020 185.3億円 178.3億円 178.2億円

答弁内容をグラフにしてみると下の図のようになる。2012年の年の瀬に始まった安倍政権ゆえ、2013年からの政府広告費の増え方が異常であることが一目でわかるのではないだろうか。


政府広告費の大半を占めている雑役務費の使い道

辻元議員は、さらに政府広告費支出のうち多くの占めている雑役務費の使い道についてさらに追求した。

答弁: 雑役務費の総額及び積算根拠の内訳



出版諸費 対外広報諸費 事業諸費 世論調査等諸費 広聴活動経費 「国民との対話」実施経費 国際世論対策・国際広報諸費 戦略的広報経費
2010 26.1億円 1.6億円 7.3億円 1.4億円 50万円 1440万円
2011 28.3億円 4.6億円 7.3億円 1.3億円 50万円 135万円
2012 21.2億円 3.9億円 6.2億円 1.3億円
2013 21.2億円 3.5億円 5.9億円 1.3億円 4.9億円 16.4億円
2014 21.8億円 2.9億円 17.1億円 1.3億円 13.2億円 25.1億円
2015 21.7億円 17.2億円 1.3億円 30.4億円 28.1億円
2016 21.7億円 17.7億円 1.3億円 30.4億円 28.5億円
2017 7.5億円 30.6億円 1.3億円 30.4億円 28.3億円
2018 7.5億円 31.8億円 1.3億円 30.8億円 29.2億円
2019 7.5億円 35.6億円 1.3億円 30.8億円 29.4億円
2020 7.8億円 33.8億円 1.5億円 31.2億円 100.3億円

答弁の内容から、安倍政権になってからなぜか金額が大きくなっている項目と、新たに支出として追加された項目だけピックアップして表にしてみた。


事業諸費 国際世論対策・国際広報諸費 戦略的広報経費
2010 7.3億円
2011 7.3億円
2012 6.2億円
2013 5.9億円 4.9億円 16.4億円
2014 17.1億円 13.2億円 25億円
2015 17.2億円 30.4億円 28.1億円
2016 17.7億円 30.4億円 28.5億円
2017 30.6億円 30.4億円 28億円
2018 31.8億円 30.8億円 29.2億円
2019 35.6億円 30.8億円 29.4億円
2020 33.8億円 31.2億円 100.3億円

2020年には、なんと100億円を突破した「戦略的広報経費」とはいったい何の費用なのだろうか。戦略的広報経費について、JUDGIT!(ジャジット)サイト内にて、以下のように説明されていた。

戦略的広報経費(国内)の事業概要:
政府広報は、政府全体の立場からテレビ、ラジオ、インターネット、新聞、雑誌等の媒体を、その特性を踏まえて活用した広報活動により、広く国民に対して政府の重要施策の内容、背景、必要性等を周知することを目的として実施している。

戦略的広報経費(国際)の事業概要:
国際社会に対し、以下の手段を用いて広報を行っている。 ①総理外遊時等に合わせた地方発信イベント等の実施  総理外遊時等の国際広報機会に、地方創生等の発信を行う。 ②海外テレビCM、SNS等による拡散等の実施  日本各地域の多様な資源を活用した経済活動等の取組を発信するCMの制作・放映、SNS広告等を使った拡散を行う。

戦略的広報経費(国内)

戦略的広報経費(国際)


特定企業と政府の関係に問題点はないのか

持続化給付金事業を担う一般社団法人サービスデザイン推進協議会から電通への巨額の再委託をめぐる問題など、特定企業と政府の関係について国会内外で議論が起きている。そこで、辻元議員は電通と政府の関係にも言及している。

国が業務委託する際は、原則として一般競争入札が行われる。しかし、入札を行わない随意契約により請負者を決定する場合もある。電通と結ばれた契約のうち随意契約によるものはどれほどになるのか。

答弁:「御指摘の「電通のグループ事業者」の意味するところが明らかではないが、」電通に対して支出された年度ごとの啓発広報費合計額は以下の通りである(2020年は6月17日時点での額)。



電通へ支払った啓発広報費 随意契約分
2013 24.8億円 19.1億円
2014 41.7億円 26.4億円
2015 51.7億円 45.5億円
2016 70.2億円 34.2億円
2017 43.1億円 32.4億円
2018 50.7億円 39.7億円
2019 40.6億円 26.3億円
2020 15.8億円 0円

政府の回答をグラフにすると、電通に対する支出の大半が随意契約によるものであることがわかる。

さらに、辻元議員は、第二次安倍政権における予算のうち電通に対して支出された金額の提示と政府の見解を求めたのだが、答弁結果は調査に時間がかかるため回答が困難で、予算事業は会計法令に基づき適切に処理すべきものだという回答に留まっている。


100億円以上にもなる啓発広告費追加予算の必要性とは

2020年度補正予算案のうち啓発広告費の追加予算が100億3626万8千円にも上るのだが、はたして、その必要はあったのだろうか。

政府は、啓発広告費は新型コロナウイルス感染症対策として、感染拡大防止や経済対策などの広報をするために必要な経費であると回答している。

辻元議員は、追加予算のうち電通に対して支出された金額と契約の経緯についても言及している。

答弁:
追加予算のうち電通に対する支出金額は4億164万2千円であり、委託している業務は一般競争入札にて契約したもので「年間広報媒体の調達業務」となっている。 2020年度第二次補正予算では啓発広告費は計上されていない。


目に余る税金の無駄遣いの数々

政府広告費が莫大であり年々巨額になっており、入札に問題はないとしながらも電通に対する支出額割合の多さが顕著であることもわかった。

新型コロナウイルス感染症による影響で不安を抱え苦境に陥っている国民にとって、税金がどのように使われるかは非常にシビアな問題である。しかし、国の予算ともなるとあまりに大きな金額ゆえ、多くの国民にとっては正しい判断が難しい問題である事も確かだ。

それでも、アベノマスク、持続化給付金事業、GoToキャンペーン と、次々と委託費の問題が噴出していることを見過ごしてはいけないのではないか。

引き続き、政府が国民に向けて情報を開示するよう議員のさらなる追求に期待したい。


@rolling893

2020/11/16

広告を打つようになってからの方が親しみやすくなったと思う。 辻元清美議員もつながりのある特定企業があるわけで、人のことを言えない。

@Beagle

2020/11/15

電通に金が流れすぎ。怪しまれても仕方ない。

 詳細情報

質問主意書名 :第二次安倍政権における啓発広報費等に関する質問主意書 
提出先 :衆議院
提出国会回次 :201
提出番号 :254
提出日 :2020年6月11日
転送日 :2020年6月17日
答弁書受領日 :2020年6月23日

 関連するイシュー・タグ・コンテンツ