化学製品に含まれる合成香料は危険なのか

柔軟仕上げ剤等によるいわゆる香害に関する質問主意書

提出議員 : 丸山 穂高

近年、香害(読みは、こうがい又はかおりがい)という言葉を耳にするようになっている。

柔軟仕上げ剤や合成洗剤など様々な化学製品に含まれる合成香料が原因となり、深刻な場合は、呼吸器障害、皮膚障害、頭痛、下痢、間接痛など種々の症状が生じる可能性があるのだ。

また、合成香料の一部に含まれるマイクロカプセルは、マイクロプラスチックの一種で、人体や環境に悪影響を及ぼす可能性を指摘されている。

今回、丸山穂高議員が香害やマイクロカプセルに関して行った質問の答弁には、現時点での政府の香害やマイクロカプセルに対する姿勢が示されており、興味深い。質疑の内容を紹介しよう。


香害と化学物質との関係についての研究結果

香害の実情については、全国の消費生活センターに寄せられる相談が参考となる。柔軟仕上げ剤のにおいに関する相談件数は、2012年度に65件へと急増した。その後も、年間130から250件程度の相談がある。

香害に関しては、2019年6月14日の衆議院消費者問題に関する特別委員会における「化学物質過敏症などに共通する病態解明の研究を進めている。いわゆる香害と化学物質の因果関係が疑われれば、詳しい調査を検討したい」旨の答弁がある。丸山議員は、この答弁に続ける形で質問を行っている。

質問:柔軟仕上げ剤のにおいに関し、毎年100件を超える深刻な相談がある。過去の答弁で触れた研究の内容と結果、更に、その他の政府における研究等の有無を伺いたい。

答弁:当該研究の結果からは、「”いわゆる香害と化学物質の因果関係が疑われるような結果” は明らかになっていない。※」当該研究以外の調査や研究は行っていない。 ※ 原文を一部加工し引用しました。

政府は、答弁で触れた研究(注1)の後、香害に関する研究を行っていない。当該研究で、「”(略)疑われるような結果” は明らかになっていない」ことが要因と思われるが、研究に関する積極性はうかがえなかった。

注1:難治性疾患政策研究事業「種々の症状を呈する難治性疾患における中枢神経感作の役割の解明とそれによる患者ケアの向上」


香料の成分表示と香害の相談体制は拡充するか

政府は、2019年5月22日の参議院消費者問題に関する特別委員会において、「柔軟仕上げ剤の香料を含めた成分表示義務付けの必要性を検討したい」と答弁した。香害と化学物質の関係が未解明だとしても、香害で大勢の人が苦しんでいる現状がある。これらの点を踏まえて、丸山議員は質問を続けている。

質問:柔軟仕上げ剤に関する成分表示の義務化についての過去の答弁後の判断等はどうなったか。また、柔軟仕上げ剤等の使用に関する政府の啓発活動に関する考えや、国民生活センターに専用相談窓口が必要という要望への見解を伺いたい。

答弁:成分表示の義務化については、2020年3月2日付けの日本石鹸洗剤工業会の指針による自主的開示の効果を注視していく。啓発は、必要に応じて行う。今後も現在の消費生活ンターや国民生活センターでの相談体制の確保に努める。

香料を含めた成分表示の義務化については、業界の自主的開示の効果を注視するという答弁である。業界団体の指針は、「開示する製品については、会員社の判断による」としている(注2)ので、香料の開示については各社の判断に委ねられることになる。 政府において、啓発活動を積極的に行う姿勢も示されなかった。国民生活センターに専用相談窓口を置くことについては消極姿勢である。

注2:日本石鹸洗剤工業会による2020年3月2日付け「会員社の香料成分の自主的な開示の際の指針について」


香料に含まれるマイクロカプセルの規制は今後の課題

柔軟仕上げ剤に含まれる香料には、マイクロプラスチックの一種であるマイクロカプセルが使用されている場合がある。マイクロカプセルが、土壌、海洋や大気、さらには人体に及ぼす悪影響が懸念されている。例えば、特定の生物に強い影響を与えて生態系を乱すことや、マイクロカプセルが食物連鎖等を通して人体に入り、人体の内分泌を乱すことなどへの懸念である。

マイクロプラスチックの一種であるマイクロビーズに関して、韓国、イギリス、台湾では、マイクロビーズを含む化粧品等の製造と販売が禁止されている(注3)。また、丸山議員によれば、欧州連合では、マイクロカプセルへの規制が提案されている。マイクロカプセルの規制についての質疑をみてみよう。

質問:予防原則の観点から、家庭用品におけるマイクロカプセルを規制すべきである。

答弁:マイクロプラスチックによる身体や環境への影響は未解明の部分が多いため、「知見の集積に努めたい。※」

マイクロカプセルの規制に関する質問であるが、マイクロカプセルを含むマイクロプラスチック全般について答弁がなされた。マイクロプラスチックによる影響に関して、まずは知見を集積したいということだが、集積方法や、集積の結果に基づく規制についての検討方法が不明である。

注3:環境省「プラスチックを取り巻く国内外の状況」平成30年8月


香害とマイクロカプセルに関する積極的な検討を

いわゆる香害については、化学物質との因果関係が未だ明らかになっていない。しかし、化学物質の臭いに苦しむ人が少なくないことも現実である。

将来香害に悩まされるようになる可能性は誰にでもある。関係事業者の意向等もあろうが、政府として専門窓口を設置し、積極的に悩む人たちの声を集めた上で、方策を検討してもいいだろう。

マイクロプラスチックの一種であるマイクロカプセルについては、人体や環境に重大で回復不能な影響を及ぼす可能性を否定できない。マイクロビーズに関しては、各国で製造や販売の禁止への流れが生まれている。マイクロカプセルについての国際的な対策を日本がリードし、日本の実情にも見合った国際的なルールを作っていくことを考えてもよいのではないだろうか。


<参考リンク>

国民生活センターによる2013年9月19日公表の「柔軟仕上げ剤のにおいに関する情報提供」

国民生活センターによる2020年4月9日公表の「柔軟仕上げ剤のにおいに関する情報提供」

【緊急提言】G20に向け 家庭用品へのマイクロカプセルの使用禁止を求める緊急提言(2019年5月10日)|日本消費者連盟

要約がありません

@TONOさん3号

2021/05/14

化学物質であふれる世界。単にその物質があるだけでそこに留まれない人もいると聞く。ごく一部の塗料のせいでその家に住めない人もいると聞く。柔軟剤が害になる人がいることはある程度知られてきました。 優れた化学者の方々へもっと投資して誰でも大丈夫な物質の開発等ができないものだろうか?きっかけになるとよいですね。

@restog

2020/11/27

人によって心地よいと感じる匂いや不快だと感じる匂いは異なるので難しい問題だと思う。地域ごとの対応に任せていては、対応の違いにばらつきが生じるのではないだろうか。

@rolling893

2020/11/26

マイクロカプセルの害については検証が不足しており、むやみに怖がることはないかもしれない。ただこのサイズの異物が環境や人体に蓄積していったらどうなるのか予想がつかないため、楽観視もできない。生分解性プラスチックのみにすることはできないだろうか。

@なんたん

2020/11/23

柔軟剤だけでなく、香水がきつい人も周りに香害を与えていると思います。私は化粧品で香料が使われているものはかゆみが出るので使えません。もう少し害について研究をしていただきたいです。

@ichi369

2020/11/21

実害のある問題については、調査や規制を行うのは急務だと思う。日本政府は消費者よりも生産者を優遇する傾向にあるので、国民の安全安心のためを第一に考えてもらいたい。

@だるばーど

2020/11/20

香害で悩んでいたり体調が悪くなる人は多いのに、あまり対策されていなくて残念に思っていました。こうした質問をしてくださることで行政の香害に対する姿勢を知ることができありがたいです。

 詳細情報

質問主意書名 :柔軟仕上げ剤等によるいわゆる香害に関する質問主意書 
提出先 :衆議院
提出国会回次 :202
提出番号 :15
提出日 :2020年9月16日
転送日 :2020年9月18日
答弁書受領日 :2020年10月2日

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