菅内閣の7分野についての基本姿勢

菅内閣の基本姿勢に関する質問主意書

出典:首相官邸HP

提出議員 : 長妻 昭

2020年9月、安倍政権を7年8か月支え続けた菅官房長官が、総理として表舞台に登場した。未曽有の新型コロナウイルスによるパンデミックの中で誕生した菅新政権。

「新内閣は安倍路線を継承するのか?」「新型コロナ対策は?」「消費減税の可能性は?」7分野の質問に対する回答から、菅新内閣の基本姿勢を確認する長妻議員の質問を見ていこう。


1.格差についての認識

質問

  1. 日本の所得格差は許容範囲か。

  2. G7諸国の中で、日本の相対的貧困率が高いことに対する評価を尋ねる。

  3. 経済協力開発機構(OECD)や国際通貨基金(IMF)の調査リポートから格差が経済成長を損なうという結果が導き出されたが、政府の見解を尋ねる。

  4. 雇用の規制緩和により非正規雇用が拡大、これが格差拡大の要因になるのではないか。

答弁

  1. 「一概にお答えすることは困難※」と、回答を避けた。

  2. 「一概にお答えすることは困難※」と、回答を避けた。

  3. 「一概にお答えすることは困難※」と、回答を避けた。

  4. 質問には明確に回答していないものの、非正規雇用労働者について処遇改善等を図ることの重要性に言及した。

所得格差・貧困率の増加については、多くの国民が懸念している問題であり関心が高いところであるが、回答が避けられた印象は否めない。3の質問にあった格差と経済成長の関係における政府の認識は今後の経済政策に影響するため、明確な説明が望まれる。


2.社会保障について

質問

  1. 社会保障の充実は経済成長の阻害要因となるか、プラス要因となるか。

  2. 家庭において介護や保育は女性が行うべきか。

  3. 介護の問題は介護の従事者不足があげられるが、政府にとって介護の問題とは何か。

  4. 安倍政権が掲げた「介護離職ゼロ」は菅内閣でも継承するか。

答弁

  1. 「一概に評価することは困難※」と、回答を避けた。

  2. 男女が共に暮らしやすい社会を実現するために、男女が責任を分担すべき。

  3. 検討問題は介護従事者の不足だけではないと認識し、介護需要に応えられる体制を整備することが重要と回答。

  4. 引き継ぐ。

社会保障と経済成長に関する政府見解には触れず、個別の問題には回答した形だ。 介護の問題においては、介護従事者の不足を介護離職ゼロとリンクさせる政策をとるのか、それとも外国等からの労働力投入で介護サービスの提供体制を整備するのか、どちらに比重を置くのか注視したい。


3.菅総理が掲げた「自助、共助、公助」について

質問

  1. それぞれの政治的役割、三つの関係のあり方は?

答弁

「質問の趣旨が必ずしも明らかではない。※」としながらも、2020年9月16日の記者会見における菅総理の言葉を引用した。「自分でやってみて、家族、地域でお互いに助け合った上で、政府がセーフティーネットで守る」

「自助、共助、公助」の言葉は、巷で解釈が話題になった。「自助」が最初にきているので、国民が困らないと政府は助けないのかという批判や、「自助」は個人の自立を促すものであるという建設的な意見まで様々である。


4.公文書について

質問

  1. 森友学園問題のような決裁文書改ざんの再発はないか。

  2. 自ら命を絶たれた財務省職員のご遺族による再調査要求を受け入れるか。

  3. 「加計学園問題」「桜を見る会の問題」は解明されていない部分があるか。再調査の可能性はあるか。

答弁

  1. この問題を受けて見直した結果、文書取扱規則等の改正を行った。公文書管理は徹底する。

  2. 2020年7月21日の麻生財務大臣の記者会見を引用。「再調査の意味が不明だが、今の段階では再調査は行わない。」

  3. 「“未だ解明されていない部分”の意味するところが必ずしも明らかなではない。※」が、前者は検討中、後者は調査済みで国会等で繰り返し説明している。

ほぼ、毎回同じ答弁であるが、再調査の意思はないようである。


5.新型コロナウイルス対策について

質問

  1. 最大の経済対策の一つとして考えられる、新型コロナウイルス感染症対策の見解を求める。

  2. 日本のPCR検査が他の先進国と比べて少ない理由は何か。

  3. PCR検査と抗原検査の1日の検査件数が、その検査能力よりも少ない(半数程度)との認識は正しいか。また正しければその理由は何か。

  4. 新型コロナウイルスワクチンの完成と国民接種完了の時期はいつか。

答弁

  1. 最大の経済対策については、「“最大の経済対策”の意味するところが必ずしも明らかではない。※」として、感染症対策と結びつけず。感染症対策については、感染拡大防止と社会経済活動を両立させる道筋をつける。

  2. 「我が国と“他の先進国”を一概に比較することは困難である。※」が、検査体制は強化する。

  3. 質問と同じ条件の比較データは網羅していないとしながらも、検査件数が少ないことは認識。検査能力と実際の件数に差が出るのは、感染状況によるから。

  4. 「“新型コロナウイルス対応のワクチン”の“完成”、“接種完了”の意味するところが必ずしも明らかではない。※」とし、現時点の判断では答えかねる。

1の感染症対策についての政府見解は、前政権と同じで特に目新しいものはなかった。PCR検査も重要であるが、第2波、第3波を恐れる国民は政府の経済的な手当てに関心を持っていると思われる。1で言及された経済対策は切り離されて回答になかったので、2019年10月26日に召集された臨時国会の推移を見守りたい。


6.消費税について

質問

  1. 菅総理の、消費税は今後10年ぐらい上げる必要がないという考え方は内閣の方針なのか。

  2. 消費減税は選択肢の一つか。

答弁

  1. 消費税は社会保障の重要な財源であるが、まずは経済再生に取り組み財政健全化を図る。したがって、消費税率や改正についての具体的な検討は行っていない。

  2. 2019年10月の消費増税が全世代型社会保障制度転換に必要だったため、消費減税は考えていない。

経済再生に取り組む上で、消費減税は選択肢にないことが明確になった。


7.安倍内閣の方針を継承しない政策

安倍政権の取り組みとは「新型コロナウイルス感染対策」「雇用確保」「地方創生」「少子化対策」「安全保障外交」である。

「質問の趣旨が必ずしも明らかでない。※」とした上で、2020年9月16日に閣議決定した基本方針通り、安倍政権の取り組みを継承して前進するとの回答だ。


今回の質問は国内政策に関するものだけであった。官房長官時代の菅総理は、主に国内政策を重点的に担当しており、外交手腕は未知数である。外交問題(特に対中政策)、安全保障についての質問があれば、菅総理の外交センスが測れたかもしれない。

「消費減税を行わない」という回答を引き出したことは、野党が打ち出す対立政策を考える上での一つの示唆になったと思われる。

コロナ禍において、今後経済の急速な悪化は避けられない。欧州では早々に消費減税で景気テコ入れをしているが、菅内閣が消費減税を封印してどのような経済対策を打ち出すのかが注目される。

※ 原文を一部加工し引用しました。


@restog

2021/05/22

どの質問に対しても返答が「一概に評価することは困難」と答えていて、ふざけているのか、真剣に考えていないという思いが拭えない。

@rolling893

2020/11/24

森友学園、加計、桜を見る会等をいまだに持ち出してくるのは、まともに政策の話をしても太刀打ちできないからだろうなあ。つまらない話題で時間をとらずにコロナ対策や経済対策等もっと重要なことに集中してほしい。

 詳細情報

質問主意書名 :菅内閣の基本姿勢に関する質問主意書 
提出先 :衆議院
提出国会回次 :202
提出番号 :30
提出日 :2020年9月16日
転送日 :2020年9月18日
答弁書受領日 :2020年10月2日

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