森友学園への国有地売却に関わる公文書改ざんを指示され実行、その後自殺したとされる故赤木俊夫氏(当時近畿財務局職員)の妻が、国と佐川宣寿氏(当時財務省理財局長)を相手取り、民事訴訟を起こしています。その中で原告は、改ざん箇所が一目でわかるとされるいわゆる「赤木ファイル」の存在有無を明らかにし、提出するよう国に求めています。
一方、衆議院調査局は、財務省による森友学園に関する文書改ざんに関する予備的調査を行いました。その際、財務省に対して赤木ファイルの提出、探索先の回答を求めましたが、財務省は、故赤木俊夫氏の妻が「民事訴訟を起こしている」という理由で要請に応じませんでした。
こうした事例に関し、立憲民主党の小西洋之参議院議員が、赤木ファイル提出等の拒否に関する根拠を問うとともに、その妥当性について追及しています。どのようなことが議論されたのか、わかりやすく解説していきます。
現在、故赤木氏の妻による国家賠償請求訴訟が行われている一方で、衆議院調査局は、財務省による森友学園に関する文書改ざん等に関する予備的調査(※)を行いました。この調査は、川内博史衆議院議員らから提出された「森友学園問題に係る財務省による文書改ざん等に関する予備的調査要請書」に基づき、衆議院財務金融委員会から、衆議院調査局長に予備的調査が命じられたことによるものです。
※予備的調査:衆議院の委員会が行う調査等のために、衆議院の調査局長等が行う下調査であり、憲法62条に定める国政調査権(立法府の権利)に基づく、委員会調査を補完する位置づけとなる。官公署長に対して調査協力要請を行うことができるが、強制力はない。
これに対する要請拒否について、小西洋之議員は質問主意書を提出しています。
質問
衆議院調査局によると、以前の予備的調査で民事訴訟を理由に資料提出や回答が拒否された例はない。赤木ファイルについて提出、回答を拒否した法的根拠はなにか。
答弁
衆議院のウェブサイトによると、予備的調査はあくまで国政調査権を補完するもので、その調査協力は強制ではないため拒み得る。また、内閣法制局が、以前「裁判所に係属中ならば、必ず国政調査権を行使できないわけではない。
しかし、一般論としては、裁判所に係属中の事件について裁判所と同様の目的で行われるなど、当該事件に係る裁判に不当な影響を及ぼす国政調査の要求は拒み得る」旨答弁していることから、裁判所に係属中の事件について、裁判所と同じ目的の国政調査は、当該裁判に不当な影響を与え可能性があるため、要請を拒み得る。
本調査と裁判はいずれも、「文書改ざん等の真実究明」という点において同様の目的だと認識している。
つまり、政府が予備的調査への協力を拒んだ理由は
予備的調査への協力には強制力がない上、予備的調査が「文書改ざん等の真相究明」という点で、裁判と同様の目的で行われるため、裁判に不当な影響を及ぼす可能性があるから。
です。
衆議院のサイトを見てみると確かに、予備的調査への協力は任意です。ただ、小西議員の質問によると、予備的調査の協力要請に対し、民事訴訟を理由に拒否した事例はこれまでなかったようです。これを踏まえると、政府は、今回の事例と過去の事例の違いを明確にしてもいように思えます。
また、政府の答弁からは裁判と同様の目的で行われる国政調査が、今回の事例においてどのような点で裁判に不当な影響を及ぼすのかが不明瞭です。このままでは、何か蓋をしたい事実があるかのように受け取られても仕方ありません。
今回のように、政府が、裁判と同様の目的であることを理由に国政調査の要求を拒むことが続けば、国会による内閣のチェック機能を担う国政調査権が形骸化する恐れもあります。
これを防ぐため、民事訴訟中の事例でも、政府に対し国政調査への協力を促すにはどうすればよいのでしょうか。
小西議員は、訴訟と併行していても、仮に裁判所の然るべき判断があれば、国会による併行調査は可能だと主張しています。この場合において、政府はどのような対応をするのでしょうか。
質問
裁判所が、裁判所と併行する立法府の調査が適法な目的で行われていると判断すれば立法府による併行調査は許容される。この場合、財務省は赤木ファイルを国会に提出すべきだと考えられるが、どう考えているか。
答弁
お尋ねの趣旨が明らかでないため、お尋ねにお答えすることは困難であるが、裁判中の事例に関する国政調査の要請があった場合には、要請を受けた者がその要請を拒むかどうか判断することになる。
政府は、小西議員の仮定の話に対して言及することは避けましたが、調査に協力するか否かの判断主体はあくまで政府であると強調しました。残念ながら、国政調査権を尊重しようとする姿勢はないように思えます。
また、確かに小西洋之議員の主張はあまり馴染めないものかもしれません。というのも、立法府の判断に司法が介入するというのは三権分立上問題がある可能性があるからです。しかし、ここで注目したいのは、今回の事例のように行政が自分の判断のみで要請拒否をし続けると、司法の判断を仰ぐという、三権分立上は問題がある議論にまで発展しかねない現状がある、ということです。
訴訟中であることを理由に、国政調査権を十分に行使できないことが繰り返されれば、国民の政府への信頼が薄れていく危険性もあります。まずは政府が、赤木ファイル提出拒否等に関して、国民に分かりやすく丁寧な説明をすることが第一です。
また、今後同じように国政調査の要請を拒否する事例が続かないよう、権力間のチェック機能を強化するのも一つの手でしょう。日本国憲法が定める三権分立は、国会、内閣、裁判所のチェック・アンド・バランスによって、国民の権利と自由を保証するものです。
今回の事例のように、三権の中の行政府が力を持ちすぎないようにするためには、例えば、行政監視院(※)を設置することなどが考えられます。以前、行政監視院を国会内に設ける法案が提出されましたが、こうした制度を創設し、国会の政府に対するチェック機能を拡充することを検討してもよいのではないでしょうか。
さらに、国政調査と同様の目的で訴訟が行われている場合は、訴訟と無関係の裁判官が、国政調査権に基づく資料提出の拒否を認めるような制度を設けることも、国政調査権の保護には有効かもしれません。
※行政監視院(案):国会に常設する独立した組織で、衆議院および参議院に設置されている委員会の要求に応じて調査を行う。行政機関や地方公共団体に対し、資料の提出と参考人の出頭を要求することができる。内閣が国会の議長に対し、資料の提出が国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の声明を出さない場合は、資料の提出義務が生じる。
@ichi369
2021/04/26
文書の公開については、すべてデジタル化して、一定期間が経過したらすべて公開するという方法くらいしか無いように思う。それでも、機密のままの文書は存在するだろうが、自浄作用が働く組織でなければ、公開するのは無理だと思う。根本的には、機密文書が存在しない政府、組織を作るしかない。
@TONOさん3号
2021/01/14
まだやっているのっていう印象。 故赤木氏のファイル云々の話らしいが今以上の情報が出てくるとは思えない。また個人のメモ等であると信憑性も疑問です。 森友学園の問題は別の側面もあるのだが大手マスコミはほとんど報道しない。報道したいもののみ報道している。同じようなことを繰り返してる。うやむやでもよいのでそろそろ終わらせてもいいのではと思う。
質問主意書名 : | いわゆる「赤木ファイル」に関する質問主意書 |
提出先 : | 参議院 |
提出国会回次 : | 203 |
提出番号 : | 43 |
提出日 : | 2020年12月4日 |
転送日 : | 2020年12月4日 |
答弁書受領日 : | 2020年12月15日 |