マイナンバーと個人の銀行口座を紐づける内容の法案が与党から提出されましたが、具体的にはどの様な内容なのか見ていくことにしましょう。

法律案を簡単にまとめると次のように整理できます

• あらかじめ２つの名簿（「給付名簿」と「口座名簿」）を作成し、マイナンバーと口座情報を紐づける
• 特定給付金の給付には、「給付名簿」を利用する
• 特定給付金、その他公的給付、国税の還付金の給付には「口座名簿」を利用する
• 「口座名簿」の作成は個人の申し出による
• 「口座名簿」の情報は、本人同意の上で、国税庁、厚生労働省、地方自治体経由で内閣総理大臣に提供される

名簿が２種類でてきてややこしいのですが、名簿に記載する情報は「給付名簿」と「口座名簿」共通の内容で下記の情報を記録する様になっています。ここに「マイナンバー」と「口座情報」が含まれます。

「給付名簿」と「口座名簿」名簿に記録される情報

• 氏名
• 生年月日
• 住所
• 個人番号（マイナンバー）
• 電話番号
• メールアドレス
• 預貯金の金融機関名、店舗、預貯金の種別、口座番号、口座の名義人
• その他（政令で定める）

なぜ「給付名簿」と「口座名簿」の２種類が必要なのか疑問に思いますが、法律案では「口座名簿」は「給付情報の管理に関する事務の効率的な処理」の為に作成するとあります。

これは新型コロナウイルスの「特別定額給付金」の給付に時間を要したので、その様な給付がスムーズにできるように、予め「口座名簿」を作っておくということなのでしょう。

この点は法律案の名称に「特定給付金等の迅速かつ確実な給付のための」とあることから、「特別定額給付金」の給付遅延を強く意識したことがうかがえます。

では、どのような場合にこれらの名簿が使われるのでしょうか

先ずは「給付名簿」から見てみましょう

法律案には新型コロナウイルスの「特別定額給付金」のような感染症や災害の際に行政が給付する金銭を「特定給付金」と定義し、その給付に「給付名簿」を利用するとのことです。ですので「特定給付金」の支給を受ける時点で、「マイナンバー」と「口座情報」が紐づくことになります。

次に、もう一つの名簿である「口座名簿」はどうでしょうか

「口座名簿」とは「特定給付金」、「その他公的給付」、「国税の還付金」の振込に使われる「口座情報」が記載された名簿です。そして「口座名簿」の情報は、「所得税」の申告、「国民年金・児童福祉手当・児童手当」の給付申請をした際に、国税庁・厚生省・地方自治体から総理大臣に提供されうる内容になっていることから、行政内部で幅広く共有されると思っていた方がよさそうです。

なお、「特定給付金」の支給を受ける場合にも「口座名簿」が必要になりますが、後述するように「口座名簿」の作成は任意なので、「給付名簿」だけでも給付は受けられるのかもしれません。

最後に多くの方が気にしている２点をまとめます

• 「マイナンバー」と「口座情報」の紐づけが「強制なのか」
• 「すべての口座情報をマイナンバーと紐づけなければいけないのか」

まず、今後「特定給付金」の給付を受けるには、マイナンバーと口座情報の提出が必要になります。これは、新型コロナウイルスの「特別定額給付金」の際に既に求められていますので、大きく変わることはありません。

注意するべきは、「特定給付金」以外の給付や国税の還付金の際など、幅広い場面でもマイナンバーと口座情報の紐づけが、「個人の申し出により」可能になってくる点です。

また、マイナンバーと紐づける口座の数ですが、法律案では、口座数の規定はありませんので、とりあえず一つの口座を紐づけることが求められる（あくまでも個人の申し出によるので任意です）ことになります。

編集部感想

このように、本法律案では、マイナンバーと口座の紐づけは、「個人の申し出」に基づく任意なものであること、仮にマイナンバーと口座情報を紐づけるとしても、一つの口座を紐づけるだけで、給付や還付がうけられることなどから、比較的マイルドな内容といっていいかもしれません。

高市総務相は「任意ではなく義務にする方針」との報道もありますので、議員立法である本法律案がこのまま審議まで行くのか、それとも強制力を持った行政法案が別途提出されるのか、行方を注視して行きたいと思います。