公的機関による個人情報の登録はどこまで許せる? デジタル庁による抜本的な改革に期待と不安

デジタル社会形成基本法案

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提出者 :内閣

2月9日、デジタル庁の創設を主たる内容とする、デジタル改革関連法案が閣議決定されました。

デジタル改革関連法案は、計6つの法案から構成されています。今回は、そのうち「デジタル社会形成基本法案」「デジタル庁設置法案(原文はこちら)」の2つを紹介します。


デジタル社会を初めて定義「デジタル社会形成基本法」

デジタル社会形成基本法は、2000年に制定された「IT基本法」に取って代わる法律で、日本がこれから目指すべきデジタル社会を明確に定義しています。

デジタル社会
  1. インターネット等の情報通信ネットワークを通じて、自由かつ安全に、多様な情報・知識を世界規模で入手・共有・発信
  2. 先端技術をはじめ情報通信技術を使って記録された多様かつ大量の情報を適切かつ効果的に活用
することによって、あらゆる分野で想像的かつ活力にあふれた発展が可能となった社会

デジタル社会の実現において、具体的にどのような未来を目指すのでしょうか。デジタル社会形成基本法の基本理念を見てみましょう。

基本理念
  1. 国民がゆとりと豊かさを実感できる生活の実現
  2. 安全安心に国民が暮らせる社会の実現
  3. 利用機会等の格差の是正
  4. 個人および法人の権利利益の保護

上記の基本理念達成のため、政府は必要な措置を行います。そのために、政府は「デジタル社会の形成に関する重点計画」を策定し、改革を進めていくとのことです。

この重点計画を作成するのは、デジタル庁です。デジタル庁の設置は菅政権の目玉施策の一つと言われていました。次はデジタル改革で重要な役割を担う、デジタル庁について詳しく紹介します。


デジタル改革の司令塔「デジタル庁」を設置

デジタル庁は、各官庁のデジタル化推進の司令塔的な役割を担うことを目的に設立される機関です。組織は非常勤職員を含め500人規模で、2021年9月1日の発足を目指しています。また、全体の2割を民間人で構成すると言われており、現在選考が行われています。

デジタル庁が担当する予定の主たる業務は以下の通りです。

デジタル庁の主な業務
  1. デジタル社会の形成に関する重点計画の作成・推進
  2. マイナンバーやマイナンバーカードの利用に関する総合的・基本的な施策の立案
  3. 情報提供ネットワークシステムの提供や管理
  4. 情報通信技術を使った本人確認に関する総合的・基本的な施策の立案
  5. データの標準化や外部連携機能、公的基礎情報データベース(ベース・レジストリ)に関する
    総合的・基本的な施策の立案
  6. 国が行う情報システムの整備、管理に関する事業の統括、予算の一括計上、事業の全部または一部執行

また、デジタル庁はデジタル化推進において、各省庁よりも強い権限を持っています。法案の第8条5項では、事務の遂行のために特に必要がある時は、関係行政機関の長に対し、勧告することが可能と規定しています。勧告の内容には強制力はありませんが、勧告を受けた関係行政機関の長は、勧告の内容を十分尊重しなくてはなりません。

政府は、デジタル庁に強い権限を持たせ、情報システムを一元管理させることで、省庁の垣根を越えた抜本的なデジタル化施策を推進していく方針です。


デジタル社会形成の鍵となる「ベースレジストリ」 懸念は?

デジタル庁の業務の一つとして、「ベース・レジストリの構築」が規定されています。

ベース・レジストリとは、公的機関で登録・公開される、人・法人・土地・建物・資格等に関する基本データです。これは様々な場面で参照され、正確性や最新性が担保された信頼できるデータである必要があります。ベース・レジストリは全ての社会活動の土台をなすものであり、デジタル社会の実現のためには必要不可欠だと言われています。

現在、役場で何かしらの行政手続きをしようとすると毎回、名前から生年月日、住所など、様々な情報を書類に記入する必要があります。しかし、ベース・レジストリが構築されれば、そのような作業が不要になり、簡単に手続きを済ませることができるようになります。

また、情報を活用して即座に新たなビジネスを開始できるようになり、暮らしやすい街づくりにも有用です。業務効率化の達成にも寄与し、他部門への間接的な効果なども考えるとベース・レジストリによる経済的効果ははかり知れません。

①どのような情報が登録されるの?

どの情報を対象とするかはデジタル庁で規定され、システムの整備が進んでいく見通しです。

昨年、有識者会議でベース・レジストリについて検討され、対象候補や選定基準が示されています。今後さらなる検討が進む見通しですが、会議では、候補として以下のような情報が挙げられました。対象となりうるデータは非常に幅広いです。

ベースレジストリ候補

出典:首相官邸公式サイト

参考までに、すでにベース・レジストリを構築し、活用している他の国では、どのような情報が登録されているのか見てみましょう。

先進国のベースレジストリ

出典:首相官邸公式サイト

システムの整備状況などにより、先進国の間でもベース・レジストリの対象は異なりますが、傾向としては、個人・法人・土地・自動車・不動産をベース・レジストリの対象とする国が多いです。

便利さとは引き換えに懸念も

ベース・レジストリの整備により、利便性の高いデジタル社会が訪れるかもしれません。一方で、多くの個人情報を公的機関に提供するのに不安を抱く人が多いのも事実です。情報漏洩や、情報の目的外利用などのリスクが考えられるからです。2017年、インドでは、サイバー攻撃により、インターネットレジストリの情報漏洩被害が確認されています。

ベース・レジストリを構築すれば、様々な行政手続きにかかる煩雑なプロセスが簡素化され、使いやすくなるでしょう。しかし、便利さと引き換えに、リスクが生じる可能性があります。政府には、データ漏洩や目的外利用が起きないようしっかりとした対策を講じてほしいものです。データ運用の管理・監視機能の確立が重要になるでしょう。

また、国民の不安を払拭するには情報提供に対する明確な必要性や理由の提示が求められます。収集した情報は何に、どのように使われるのか、明確な説明が求められます

最新の賛成コメント

@だるばーど

2021/02/28

日本の行政手続のデジタル化は本当に遅れています。途上国で暮らしていましたが、途上国のほうがデジタル化が進んでいると感じる場面が多々ありました。セキュリティ面の不安を払拭し、是非スムーズな手続きのためにデジタル化を整備して欲しいです。

最新の反対コメント

@なんたん

2021/02/27

便利な電子マネーも情報漏洩があったし、怪しいメールも入ってくるし、色々対策してもやっぱり情報が漏れてしまうと思います。まずはそこがしっかりできてからだと思います。

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@だるばーど

2021/02/28

日本の行政手続のデジタル化は本当に遅れています。途上国で暮らしていましたが、途上国のほうがデジタル化が進んでいると感じる場面が多々ありました。セキュリティ面の不安を払拭し、是非スムーズな手続きのためにデジタル化を整備して欲しいです。

@なんたん

2021/02/27

便利な電子マネーも情報漏洩があったし、怪しいメールも入ってくるし、色々対策してもやっぱり情報が漏れてしまうと思います。まずはそこがしっかりできてからだと思います。

@ichi369

2021/02/26

オンラインで手続きが完了するようになれば、便利で、公務員の人件費削減も実現できるので、デジタル化を進めて欲しい。セキュリティ面の不安はあるが、すべてのデータを利用可能にしてからスタートすると、情報漏洩が恐いので、少しずつ実績を重ねてもらいたい。

@もも

2021/02/24

賛成です。現状の日本では、引越しや結婚の時に必要な役所への届け出が多すぎて不便なので、手続き関係は楽になって欲しいです。ベース・レジストリが他の国ではもうこんなに使われているということは全く知りませんでした。他の国のシステムを参考にして、最低限のところからでいいので少しづつ便利になっていってほしいです。

@TONOさん3号

2021/02/24

基本賛成です。 基本理念と業務の簡素化、利便性を考えれば賛成。 問題点は情報漏洩等の対策が充分なのか?という点ですね。 色んな面で国のシステムは遅れているのは事実だろうし不安です。 構築と防御を急いで欲しいです。

 詳細情報

議案件名 :デジタル社会形成基本法案 
提出国会回次 :204
議案番号 :26
議案種類 :閣法
提出者 : 内閣
提出日 :2021年2月9日
公布日 :
法律番号 :