「プラスチック製レジ袋の有料化」って効果あるの? レジ袋だけを取り上げた政府の意図とは

プラスチック製買物袋有料化に関する質問主意書

提出議員 : 浜田 聡

プラスチック製レジ袋の有料化が、2020年7月に始まりました。 しかし、「プラスチックごみに占めるレジ袋の割合は低い」「レジ袋をごみ袋等として再利用している」といった疑問の声も少なくありません。

そうした中で、浜田聡参議院議員は、2021年1月28日に提出した質問主意書で、有料化にあたって策定された「プラスチック製買物袋有料化実施ガイドライン(以下、ガイドライン)」を取り上げています。プラスチック製品の中でレジ袋だけを取り上げた根拠やプラスチック問題における重点課題、その重点課題にガイドラインがどう寄与するかといったことを質問しています。

それでは、質問に沿いながら、政府の見解をみていくことにしましょう。

日本のプラスチックごみの現状

日本のプラスチックごみの廃棄量や海洋プラスチックごみの現状はどうなっているのでしょうか。浜田議員は質問しています。

質問 日本のプラスチック生産量とプラスチックごみの廃棄量が、世界全体に占める割合はどうなっているか。

また、最も多い海洋プラスチックごみは何か。海洋プラスチックごみにおけるレジ袋の割合はどの程度か。

答弁 プラスチック循環利用協会(2016年資料)と国際連合環境計画(2018年資料)の資料で計算すると、日本の生産量と廃棄量は、いずれも世界全体の約3%だった。

海洋プラスチックごみに関して2011年から2019年までの調査結果を環境省が分析したところ、割合(個数ベース)が最も高かったのは、「ペットボトルのキャップ・ふた」だった。ポリ袋(レジ袋を含 む)の割合は地域によって異なり、約2%から約10%である。

個数ベースで最も多いのは「ペットボトルのキャップ・ふた」であるにもかかわらず、それよりも少ないレジ袋が有料化されたことになります。

環境省の資料(2020年3月)によれば、漂着ごみ(人工物)の上位5種は、以下のようになっています。同資料によれば、個数ベース、重量ベースのいずれにおいても、ポリ袋(レジ袋を含む)は、上位10位に入っていません。

漂着ごみ上位10種(個数ベース)
品目 割合(%)
ボトルのキャップ、ふた17.6
プラ製ロープ・ひも16.6
木材(物流用パレット、木炭等含む)9.2
飲料用ペットボトル(2L未満)6.9
プラ製漁具(その他)4.2
漂着ごみ上位10種(重量ベース)
品目 割合(%)
木材(物流用パレット、木炭等含む)32.9
プラ製ロープ・ひも19.1
硬質プラスチック破片9.0
プラ製漁網6.3
飲料用ペットボトル(2L未満)4.2

引用元:海洋ごみ実態把握調査(平成22~令和元年度)のとりまとめについて


レジ袋に白羽の矢が立った理由は?

そもそもレジ袋有料化の目的とは

レジ袋有料化の目的は、環境省のガイドラインによれば、「消費者のライフスタイル変革の促進」です。

「資源・廃棄物制約や海洋ごみ問題、地球温暖化」を背景に、プラスチック資源を有効活用する必要が高まっているとして、政府は、2019年5月に「プラスチック資源循環戦略」を策定し、その中で、レジ袋の有料化により、消費者のライフスタイル変革を促進することとしています。

つまり、レジ袋有料化で、直接的にプラスチックごみの削減を意図しているわけではありません。

プラスチック資源を表立って取り上げたのはなぜか?

他にも課題を持つ資源がある中で、プラスチック資源を大きく取り上げたガイドラインを作成した理由はどのようなものでしょうか。

質問 ガイドラインで、特にプラスチック資源を取り上げたのはなぜか。また、プラスチック資源以外にはどんな資源を問題視しているか。

答弁 プラスチック資源を取り上げたのは、「循環型社会形成推進基本計画」(2018年6月19日閣議決定)で、プラスチックについて、「資源・廃棄物制約、海洋ごみ対策、地球温暖化対策等の幅広い課題に対応(※)」した対応策が必要とされたからだ。プラスチック資源以外については、同計画で、バイオマス・金属・土石・建設材料に課題があるとされている。 ※答弁原文を引用しました。

答弁だけみても、プラスチック資源を大きくとりあげた理由が明確にはわかりません。ただし、環境省による2017年の調査資料では、全国10の調査地点において、漂着物(個数ベース)の8割以上が人工物で、その中でもプラスチック類の割合が最も高くなっています。また、漂着したペットボトルに記載されている言語を見ると、外国語が5割以上の調査地点から、1割以下の調査地点まで様々です。

出典:環境省「平成29年度海洋ごみ調査の結果について」より抜粋

なお、同基本計画は、プラスチックに関し、「資源・廃棄物制約、海洋ごみ対策、地球温暖化対策等の幅広い課題に対応しながら(中略)、プラスチックの資源循環を総合的に推進するための戦略を策定し、これに基づく施策を進めていく。(注1)」としています。

また、答弁にあるように、同計画ではバイオマスにも課題があるとされているのです。同基本計画をみると、「ライフサイクル全体での徹底的な資源循環」を行うこととされ、バイオマスもその対象資源となっています。しかしながら、バイオマス素材を25%以上含むプラスチック製レジ袋が有料化の対象外となっている点からは、バイオマス素材であれば資源循環の対象から外してもよいとも受け取れます。バイオマス素材を使ったレジ袋であれば無償でいいとしている点は、同基本計画と矛盾するように思えてなりません。

プラスチック製品の中でレジ袋だけを取り上げたのはなぜか?

プラスチック製品の中でレジ袋だけを取り上げて、ガイドラインを策定したことについての政府の見解はどのようなものでしょうか。また、ガイドラインにある「プラスチック製買い物袋の過剰な使用抑制」とは何を根拠とするのでしょうか。こうした点についても、浜田議員は質問しています。

質問 レジ袋だけを取り上げたのはなぜか。 ガイドラインには、「プラスチック製買い物袋の過剰な使用抑制」とあるが、過剰と判断する根拠や適正使用のための抑制の程度をどう考えているか。

答弁 レジ袋は使用量が特に多く、代替手段も存在する。また、省令(2006年財務省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省令第1号)で、プラスチック製レジ袋を有償とし、排出の抑制を促すことにしている。

答弁では、具体的な数値もあげられておらず、なぜレジ袋だけが取り上げられたのかは不明確です。その上、過剰と判断する根拠や抑制の程度についても全く触れられていません。根拠や抑制の程度が不明確なままにレジ袋有料化が決められたのでしょうか。


レジ袋の有料化は日本のプラスチック問題解決に寄与するのか?

プラスチック問題の解決には、生産の抑制・廃棄の削減・リサイクルの活用・代替資源の開発等、種々の方策が考えられます。その中で、どこに重点を置くべきかという課題があります。 政府は、レジ袋の有料化がプラスチック問題の解決にどう寄与すると考えているのでしょうか。

質問 プラスチック問題の解決に関しては、どんなことに重点をおくべきか。また、ガイドラインは、その重点に関し、どう寄与するか。

答弁 「プラスチック資源循環戦略」(2019年5月)では、「プラスチック資源循環」「海洋プラスチック対策」「国際展開」「基盤整備」が重点とされている。レジ袋有料化によって、使い捨てプラスチックの減少を徹底させ、「プラスチック資源循環」が進むと考えている。

レジ袋有料化で、使い捨てプラスチック全体のうちどの程度が減少するのかという点や、有料化がプラスチック資源循環にどの程度寄与するのかという点について、具体的な回答はなされていません。こうした点について、ガイドライン策定前に、きちんと検討したのでしょうか。


レジ袋有料化の成果は吟味されたのか?

プラスチック資源の循環や、プラスチック製品の廃棄を極小化していくことは重要な課題です。

しかし、海洋プラスチックごみに占めるレジ袋の割合(個数ベース)は、飲料用ペットボトルよりも少ないものです。プラスチックごみの中でレジ袋が多く、レジ袋を規制すればプラスチックごみが激減するという状況ではありません。レジ袋有料化によってプラスチックごみはどの程度減少したのでしょうか。

また、レジ袋を有料化することで、プラスチックごみを廃棄するというライフスタイルについて問題意識を持ち、行動を変容させる人もいるでしょうが、ガイドライン策定にあたって、どの程度の人がライフスタイルを変化させてプラスチック資源循環に寄与していくのかといった検討がなされたのかは不明です。

こうした点から、有料化による効果についての吟味が曖昧なままに、レジ袋の有料化がなされたような印象を受けてしまいます。

現在、国会(第204回)で「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」の審議がなされています。レジ袋有料化の成果をきちんと検証した上で、法案が成立した場合の 効果等について丁寧な説明と慎重な議論を行い、国民の理解が得られる有用な法律とすることが望まれます。


注1:循環型社会形成推進基本計画より引用

@rolling893

2021/04/26

バッグを持ち歩くようになったり、当たり前のサービスとして袋や箸等をもらって消費する生活から少しは意識が変わったと個人的には思うけど、そんな風に思わない人の方が多数派だし、そんな人は花見や路上飲みの後でゴミ置いて帰るだろう。届けたい人に届いていない気がする。

@restog

2021/04/20

環境問題を改善するために導入したレジ袋の有料化の結果が、ポイ捨て率の増加につながっているのは本末転倒だと思う。

@だるばーど

2021/04/19

国際社会へのパフォーマンスのためにレジ袋を有料化したのかな、と思うくらいプラスチックゴミ削減への政策は中途半端な印象です。やるならもっと徹底的にしなければ人々の意識変容につながらないと思います。また、しっかり政策の効果の分析をして、納得のいく説明をしてほしいと思います。

@なんたん

2021/04/17

レジ袋のゴミ割合が少ないのに何のために有料化したのだろうと思います。レジ袋がゴミ袋として使っていたので、結局購入しているので、個人的には消費量は変わりません。

@もも

2021/04/16

本件がきっかけでエコバッグを使い始めた人もいるので少しくらいは効果が出ているはずですが、実際の効果は予想と比べてどうなっているのかを知りたいです(多分、予想よりは効果が低いでしょうが…)。レジ袋の次に何かしらのプラスチック製品が有料化することになった際は、明確な根拠を挙げてみんなの理解をある程度得てからにしてほしいですね。

@TONOさん3号

2021/04/16

レジ袋の有料化が海洋汚染を減らすとか、地球温暖化の対策になるとは思わない。エコバックを持って生きのは忘れたり、持ち歩けない場合もあるし、雨の日は布だと嫌だしで面倒です。 有料化した資金を使ってごみ処理の技術向上の対策に使われるのであればそれは協力します。そう謳ってくれた方がよいのでは?

@ichi369

2021/04/15

レジ袋有料化の根拠や効果が明確ではないのは明らかです。この点について、政府は消費者の意識付けという説明をしているが、海洋ごみの原因が消費量の多さではなく、廃棄の仕方や海洋に流出する経路に問題がある可能性もあるので、しっかり調査と検証をしてもらいたい。

 詳細情報

質問主意書名 :プラスチック製買物袋有料化に関する質問主意書 
提出先 :参議院
提出国会回次 :204
提出番号 :10
提出日 :2021年1月28日
転送日 :2021年2月3日
答弁書受領日 :2021年2月9日

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