賭け麻雀に対する賭博罪の適用に関する解釈の確認及び前東京高検検事長の処分に関する質問主意書

提出議員 : 中谷 一馬

黒川弘務前検事長は賭け麻雀を行っていたことで、訓告処分となった。 この黒川前検事長の処分をめぐっては様々な憶測が流れている。

まず、黒川前検事長は賭博罪で起訴どころか逮捕されることはなかった。 黒川前検事長の賭け麻雀はいわゆる「テンピン(編集部注:1000点を100円に換算するレート)」であったようだが、賭け麻雀を行った漫画家が賭博罪で逮捕・起訴された事件(1998年)では、レートは「テンリャンピン(編集部注:1000点を200円に換算)」だった。

ここだけを捉えれば、たとえ賭け麻雀であっても「テンピン」までは賭博罪に問われず逮捕も起訴もされないという認識が国民の間で定着してしまうこともあり得るだろう。 そもそも賭け麻雀がどのような場合に賭博として刑罰の対象になるのか、国民に対して政府は説明をするべきである。

また処分内容についても、法務省は当初「懲戒」が相当と考えていたとの報道がある。 しかし実際の処分は、それよりも軽い「訓告」に決まった。 国会公務員の処分は任命権者が行うと規定(国家公務員法)されている訳だが、そうであればこの軽い処分を決めたのは内閣の長である安倍総理ということになる。

「任命責任は私にある」と閣僚の不祥事の度に繰り返し発言している安倍総理だが、今回に至っては「首相の辞任」や「内閣総辞職」など行動をもって具体的なけじめをつけるどころか、自ら処分を軽くしていたとの疑念を抱かざるを得ない。

賭け麻雀で賭博罪が成立する条件とは(安倍内閣の過去の閣議決定)

まずどのような場合に賭け麻雀で賭博罪が成立するのかを見ていこう。この問いについては、実は第一次安倍政権時に閣議決定が行われている。その中で、「賭博」と「賭博罪が成立し得るとき」について以下のように答弁がされている。

  • 賭博:「賭博」とは、偶然の事実によって財物の得喪を争うことをいう。」
  • 賭博罪が成立し得るとき:「一時の娯楽に供する物を賭けた場合を除き、財物を賭けて麻雀又はいわゆるルーレット・ゲームを行い、その得喪を争うときは、刑法の賭博罪が成立し得るものと考えられる。」

この閣議決定に従うと、黒川前検事長の賭け麻雀には賭博罪が成立し得ることになるが、この閣議決定は今でも有効なのだろうか。

答弁:
御指摘の答弁書(中略)についてにおいて示された政府の見解に変更はない。


テンピンを超えると逮捕・起訴されるのか

黒川前検事長の事案は、国内での全ての賭け麻雀が逮捕・起訴される訳ではないことを示しているが、そうであれば逮捕・起訴される賭け麻雀とはいったいどの様な賭け麻雀のことを指すのだろうか。

ひとつの基準は、川原法務省刑事局長が5月22日の衆院法務委員会で1000点100円のレートについて述べた「必ずしも高額とまでは言えない」というものであろう。
この発言によれば、高額でなければ賭博罪に当たらないということになるが、政府は同意するのだろうか。

また、過去10年間で賭博罪により逮捕・起訴された賭け麻雀の総数のうち、レートがテンピンだった場合とテンリャンピンだった場合のそれぞれの件数が分かれば、われわれの理解も進むことになる。果たしてそのような数字を政府は把握しているのだろうか。

答弁:
川原法務省刑事局長の答弁は、国家公務員法又は法務省の内規に基づく監督上の措置の量定に当たっての事情について述べたものであり、犯罪の成否について述べたものではない。

犯罪の成否については、捜査機関が収集した証拠に基づいて個々に判断されるべき事柄であり(中略)、政府としてお答えすることは差し控えたい。

(編集部注:過去10年間に賭博罪で逮捕された描け麻雀のレートについては)統計をとっておらず、お答えすることは困難である。


問われる処分の内容と経緯

黒川前検事長の処分内容については、法務省と官邸の間で意見が割れていたようだ。
法務省は懲戒(国会公務員法に基づく)が相当と判断していたのに対し、官邸がそれを覆し訓告(法務省の内規に基づく)に留めたとの報道(共同通信)もある。

もしこの報道が正しいのであれば、政府は法務省の判断を差し置いて訓告とした理由を説明する必要があるだろう。

答弁:
黒川元検事長の処分は、法務省において同省の内規に基づく監督上の措置として訓告を行うことが相当であると判断し、検事総長に対し同省としては訓告を行うことが相当と考える旨を伝え、検事総長も、訓告が相当と判断しその旨を決定した。


安倍総理の「任命責任」のとり方とは

黒川前検事長の処分が訓告に留まったことへの批判は強く、より重い処罰を求める声が起きている。

その矛先は安倍総理にも向かっているが、安倍総理は「検事総長が事案の内容等諸般の事情を考慮して適切に、適正に処分を行った(5月22日)」と述べるなど、自身を処分から切り離して考えているようである。

他方国家公務員法では、懲戒処分は任命権者が行うとされており、検事長の任命は内閣である。そうであれば、検事長の処分は検事総長ではなく、内閣の長である安倍首相が行うべきではないだろうか。

また、第二次安倍内閣の発足後9人もの閣僚が辞任したが、安倍首相はその都度「任命責任は私にあります」と繰り返しているが、実際に言葉以外にけじめを行動で示したことはない。「首相の辞任」や「内閣総辞職」を行うなど、何かしらのけじめをつける考えはないのだろうか。

答弁:
検事長に対する懲戒処分は、国家公務員法の規定により、任命権者である内閣が行うものとされている。

(編集部注:任命責任については)安倍内閣総理大臣が、「今まさに我々には、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するとともに、国民の健康と命、雇用と暮らしを守り抜いていく大きな責任があると認識しております。行政府の長として、一層身を引き締めて行政運営に当たることにより、この責任を果たしてまいる所存です」と答弁(5月29日)したとおりである。


@kimuu

2020/06/24

テンピンの賭けマージャンは罪にならないということが、今回の件ではっきりと認識されてしまいそうですね。 それにしても、第二次安倍内閣が発足後してから、9人も閣僚が辞任している事態の方が異常に感じます。

 詳細情報

質問主意書名 :賭け麻雀に対する賭博罪の適用に関する解釈の確認及び前東京高検検事長の処分に関する質問主意書 
提出先 :衆議院
提出国会回次 :201
提出番号 :207
提出日 :2020年5月25日
転送日 :2020年6月1日
答弁書受領日 :2020年6月5日

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