LGBTの差別を解消するための法律案に賛成ですか?

性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律案

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提出議員 :西村 智奈美

レズビアンやゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーといったセクシャルマイノリティの頭文字を組み合わせた言葉「LGBT」。近年、性的少数者を表す言葉として、目にする機会が増えてきたのではないだろうか。また、言葉の広がりと比例して、性的少数者への理解が少しずつ深まってきたようにも感じる。

しかし一方で、肩身の狭い思いをしているLGBTが少なくないのも事実だ。退職を強いられる人や、いじめの対象になる人、偏見を恐れてであることを隠す人がいまだに多い。中には生きる意味を見出せなくなり、自殺を考える人もいるという。

LGBT 自殺行為 出典:nippon.com(2019)

このような状況を招く原因として考えられるのは、日本にLGBT差別を禁止する法律がないことだ。こうした法整備がなされていないのは、主要先進国「G7」の中で日本だけだという。

これを踏まえ今回、LGBTに対する差別を解消するための法案が国会に提出された。本法案の具体的な内容を見ていこう。

LGBTとは?

今回の法案では、以下の用語を定義づけした。

  • 性自認:自己の性別に関する認識

  • 性的指向:恋愛感情や性的感情の対象となる性別に関する指向

性的指向とは平たく言えば、どんな性別の人を好きになるかということだ。例えば、レズビアンは心の性は女性で、性的指向が女性の人を指すし、ゲイは心の性が男性で性的指向も男性の人である。また、バイセクシュアルは男性、女性両方が恋愛対象の人を指す。

また、性自認とは、自分の性をどのように認識しているかを指す言葉だ。例えば、「トランスジェンダー女性」と言うとき、その人の生物学的な性別は男性だが、性自認は女性だということになる。

性自認と性的指向の二つの点で、性的少数者であるかどうかを判断することになる。


どのような行為が禁止され、どのような対策が求められるのか?

今回の法案では、性的指向や性自認を理由にした差別的な扱いを解消するための措置をまとめている。

① 行政機関/事業者において

官公庁や民間企業内におけるLGBTに対する差別的行為を禁止する。具体的な行為は以下の通りだ。

  • 退職の奨励
  • 昇進させないこと、または降格させること
  • 業務内容の変更や制限
  • 正社員に雇用しないこと

簡単に言うと、LGBTであることを理由に雇用上の不利益を生じさせてはいけない。今回の法案の制定により、LGBTの人が働きやすい職場環境が整備されるだろう。

② 教育現場において

学校では学校長が、教職員、児童、生徒、学生、その他関係者に対し、必要な措置を講じなければならない。「こども園」も定義に含まれていることから、小学校前の教育の現場もこの法案の対象になることは留意したい。 具体的には以下の通りだ。

  • LGBTに関する理解を深めるための研修実施や普及啓発
  • 性的指向や性自認に関する相談体制の整備

日本では「出る杭は打たれる」風潮が根強く、人と違うというだけでいじめや排斥の対象となることがある。実際、日本ではLGBTの半数以上が学校でいじめを経験しているという。

LGBT いじめ被害
出典:教職員共済生活協同組合(2018)

こうした状況を招いている原因として、LGBTに関する教育が不十分であることが考えられるだろう。

本法案のもとで、差別の解消やハラスメントの防止に関する研修・普及啓発・相談体制の整備等の施策を定めると、子どもたちの意識の中にLGBTを受け入れる土台ができ、いじめ防止に繋がるかもしれない。


罰則や支援策を設け、施策の実効性を高める工夫も

本法案は、禁止事項や必要措置を定めるだけでなく、罰則や支援についても明記し、施策の実行性を高めている。

支援

本法案では、差別解消に関する取り組みを支援するための団体設置について規定されている。

  • 地域協議会 @地方公共団体

地方公共団体は、性的指向や性自認を理由とする差別解消のための取り組みを効果的かつ円滑に行えるように、関係機関によって構成される地域協議会を組織できる。情報交換や、性的指向や性自認を解消するための取組に関する協議を行う。

  • 推進審議会 @内閣府

内閣府は、内閣総理大臣が任命する委員によって構成された性的指向・性自認差別解消等推進審議会を設置しなければならない。この審議会では、本法案が定めるLGBT差別解消に関わる基本方針を精査する。

罰則

下記について、違反を犯した学校や事業者等は、主務大臣からの報告、助言、指導、勧告処分を受けることになる。そして勧告にも従わなかった場合、会社名や学校名が公表される。

  • 事業における差別的扱い
  • 雇用上の差別
  • 学校での必要措置

さらに、協議会の事務に従事する者が協議会に関する事項を外部に漏らした場合は、一年以下の懲役または、50万円以下の罰金に科される。


本法案では主に

  • LGBTの定義
  • 禁止される差別行為やそのために必要な措置
  • 確実な実行を担保するための罰則や支援

の3つを定めている。

本法案により、LGBTに対する支援体制の整備が進む。基本方針を定め、罰則、支援も設けているため、悲しい思いをするLGBTが少なくなる可能性は高いかもしれない。一方、LGBTに関する差別意識は根強く、無理やり体制を整えることで本当にLGBTが住みやすい社会が訪れるのかという声もある。

皆さんは本法案について、どのように考えるだろうか?

最新の賛成コメント

@たけし

2023/04/27

さわ

最新の反対コメント

@ichi369

2020/12/15

LGBTを差別しないことには賛成だが、LGBTを定義することに意味があるのか疑問。そもそも文中にあるように、少数派を排斥しようとする国民性に問題がある。罰則を設けることで防ごうとするのは、根本的な解決策ではない。LGBTに限らず、少数派や個性を尊重する社会を形成するために、教育に力を入れるべきだと思う。

すべてのコメント

@たけし

2023/04/27

さわ

@restog

2021/01/30

法律でしっかりと定めること自体には意味があると思う一方で、法律で定められていなくても差別をしないのは当たり前だと思う。加えて、法律で定められているから差別をやめよう、という考え方の人が一定数いる限りは、根本的な解決にはつながらないと思う。 やはり、LGBTQの人々を対象としたものを含む様々な差別の歴史をしっかりと教育し、心の根底から変えていく必要があると感じた。

@なんたん

2020/12/15

まだなかったんだと言う印象です。昔変な子といじめがおきていたけど、これで少しでも差別がなくなればと思います。ただ我が子がもし、LGBTだと言ったら自分も受け入れられず隠してしまうかも。

@もも

2020/12/15

賛成します。LGBTであることを理由に会社を辞めろと言われ辞職した人がいるのを実際に知っていますが、法の力があればそのような差別行為を少しでも減らせると思います。LGBTへの差別を防ぐ法律を作ることで、当事者の方が不当な扱いを受けることは少なくはなるでしょうし、不当な扱いを受けても裁判などで有利に戦えるようになるのではないでしょうか。

@だるばーど

2020/12/15

法律を制定し罰則を設けることは、何もしない状態よりははるかに社会の目指す方向性がはっきりするので賛成です。少なくとも、差別してはいけない、するべきではないという社会的な常識が醸成されると思います。男女差別も、例えばもし法律で雇用機会が均等とされていなかったら、きっと未だにもっと性別役割分業の意識が強く残っていたはずです。法制化は意義あることだと思います。

@ichi369

2020/12/15

LGBTを差別しないことには賛成だが、LGBTを定義することに意味があるのか疑問。そもそも文中にあるように、少数派を排斥しようとする国民性に問題がある。罰則を設けることで防ごうとするのは、根本的な解決策ではない。LGBTに限らず、少数派や個性を尊重する社会を形成するために、教育に力を入れるべきだと思う。

@TONOさん3号

2020/12/15

難しい問題ですが原則賛成です。 LGBTに関しては自分も解らない。彼ら彼女らの心のうちは理解しようとしても無理がある。ただ認める努力は必要と思う。 なので無理にでも体制を整えるというのは方向性として間違っていないと思う。男女差別にしても無理やりに法整備をして来た経緯がある。 同じ道筋で進められれば良いと考える。

 詳細情報

議案件名 :性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律案 
提出国会回次 :197
議案番号 :12
議案種類 :衆法
提出議員 : 西村 智奈美
提出日 :2018年12月5日
公布日 :
法律番号 :