新型コロナウイルスの流行を背景に、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」等の改正案が国会で審議されています。
原案に盛り込まれていた罰則規定については、これまで野党が反対していました。しかし与野党協議の結果、与党と立憲民主党との間で罰則を緩和する形での修正案がまとまったようです。
この修正案は、2月1日に衆議院で可決(自民・公明・維新・立憲民主が賛成、国民民主・共産が反対)されました。そして、2月3日には参議院で可決される見込みとなっています。
罰則規定は緩和されましたが、緩和に至る過程は、本質的な部分や科学的な根拠を深く議論したというよりは、値引き交渉が行われていたとの印象が否めません。
今回は、改正案の概要や罰則規定について分かりやすく解説します。注目されている罰則への賛否について考えてみましょう。
「新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律」は、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(以下、特措法)に加えて、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下、感染症予防法)、「検疫法」等の関連する法律を改正するものです。「新型コロナウイルス感染症」を、「新型インフルエンザ等感染症」としてきちんと位置付け、「新型インフルエンザ等感染症」に関する種々の措置を恒久的に適用できるようにしています。
この適用する措置の中で、実効性確保のための罰則や、営業時間短縮や休業等で不利益を被る事業者への支援などが物議をかもしていました。
与野党が修正協議を行った結果、原案よりも罰則を緩和することとなりました。原案では刑事罰や過料が規定されていましたが、刑事罰を課すことをやめ、過料の金額も引き下げるとのことです(詳細は後記の通り)。
事業者支援に関しては、原案では、事業者に対する「財政上の措置その他の必要な措置を効果的に講ずる」とされ、義務規定とはなっていましたが、その内容があいまいでした。修正協議の結果、衆議院では「経営への影響の度合い等を勘案し、要請に十分な理解を得られるようにする」との付帯決議(※)がなされました。
※附帯決議:国会の衆議院及び参議院の委員会が法律案を可決する際に、当該委員会の意思を表明するもの
また、緊急事態宣言の発出前に都道府県知事が「まん延防止等重点措置」を講ずることができますが、修正協議の結果、その際の営業時間短縮命令発令を厳格化するための附帯決議を行うこととなりました。そして、衆議院では、重点措置に関して「国会へ速やかに報告する」との附帯決議を行っています。
罰則の対象者や罰則などは次の通りです。原案にあった懲役や罰金は過料に変わり、当初案の過料は減額されています。
対象者 | 対象となる行為 | 罰則 | 根拠法 | |
---|---|---|---|---|
原案 | 修正案 | |||
事業者 | まん延等防止重点措置下で営業時間の変更などの命令に従わない場合 | 30万円以下の過料 | 20万円以下の過料 | 特措法79条 |
緊急事態宣言下で営業時間の変更などの命令に従わない場合 | 50万円以下の過料 | 30万円以下の過料 | 特措法80条 | |
入院患者 | 入院中に逃げた場合期間までに入院しない場合 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 | 50万円以下の過料 | 感染症予防法72条1号 |
入院外患者等 | 宿泊施設もしくは居宅からの外出しない協力の求めに従わない場合※ 正当な理由がある場合を除く | なし | なし | 感染症予防法44条の3(3項)50条の2(3項)検疫法16条 |
患者又は所見のある者 | 保健所職員の質問・調査の拒否 | 50万円以下の罰金 | 30万円以下の過料 | 感染症予防法77条 |
罰則規定には様々な意見があります。
罰則を必要とする立場からは、
といった意見が出されています。
一方、罰則が問題だとする立場からは、以下のような意見が出されています。
どの意見にも頷ける部分があるように思えます。
特措法等の改正に関しては、当初案よりも緩やかな罰則を規定した修正案が可決される見通しです。
しかし、修正案はきちんとした根拠に基づき、英知を集めて修正したという印象はなく、根切り交渉のようになっていた印象が否めません。
協議がなされている間に、与党の幹部2名が緊急事態宣言下に、銀座のクラブに出入りしていたことや、多くの専門家が刑事罰に慎重な姿勢を見せたていたことを踏まえ、値引きに応じたような印象です。国民のために必要な罰則規定を十分に練りあげた法案ではなかったと思わざるを得ません。
また、値引きを求めていた側も、罰則に反対であるかのような姿勢を見せながら、結局は罰則を緩和することで妥協しています。主張は明確な根拠や理念に基づいていたのでしょうか。
今更ではありますが、この冬に第3波の流行が発生することを危惧していた専門家も少なくありませんでした。前もって、罰則の必要性や必要な罰則の程度を判断するための議論はできなかったのでしょうか。そのうえで、国民にわかりやすく説明できる改正案を提案し、丁寧な説明を行ってほしかったところです。
@restog
2021/02/06
入院外患者等に対する罰則がないのはなぜなのか、疑問に思った。 介護や育児などで隔離が出来ない人に対しては、感染者の被介護者や子どもを隔離期間中にケアする施設やサービスを開設することで対応してほしい。
@TONOさん3号
2021/02/05
この特措法自体反対です。そもそもコロナ感染関連の対策に疑問。日本はなぜか緩やかな対策で効果が出ます。日本人を信じましょう。 経済も必要なのはみんなも分かっているはず。逼迫しているのは医療だけではありません。対策をした上で民間は、企業は、お店は、動かして経済を回す。お金は医療に投入する。この方法しかないと思います。
@restog
2021/02/06
入院外患者等に対する罰則がないのはなぜなのか、疑問に思った。 介護や育児などで隔離が出来ない人に対しては、感染者の被介護者や子どもを隔離期間中にケアする施設やサービスを開設することで対応してほしい。
@TONOさん3号
2021/02/05
この特措法自体反対です。そもそもコロナ感染関連の対策に疑問。日本はなぜか緩やかな対策で効果が出ます。日本人を信じましょう。 経済も必要なのはみんなも分かっているはず。逼迫しているのは医療だけではありません。対策をした上で民間は、企業は、お店は、動かして経済を回す。お金は医療に投入する。この方法しかないと思います。
@なんたん
2021/02/04
テレビで罰金より売り上げのほうが上だから営業するという店のインタビューを見ました。それだけ厳しいということですよね。守るためには罰則だけでなく補償も充実してほしいです。
@rolling893
2021/02/03
感染した人への罰則は差別の助長等も考えられるので、ある程度中庸な内容にならざるを得ないと思います。 感染拡大防止としてもっと強化してほしいのは行楽等の規制ですね。緊急事態宣言下でも他府県ナンバーの車がスキー場に長蛇の列をなしている現状、もうどこに保菌者がいてもわからないです。
@ichi369
2021/02/03
罰則は必要であるが、それを適用するかどうかは現場の状況判断で行うべきであると考えます。昨年、陽性患者が飲み歩いて従業員に感染し、その陽性患者は亡くなったという事件がありました。罰則規定があれば防ぐことができたかもしれません。
議案件名 : | 新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律案 |
提出国会回次 : | 204 |
議案番号 : | 6 |
議案種類 : | 閣法 |
提出者 : | 内閣 |
提出日 : | 2021年1月22日 |
公布日 : | |
法律番号 : |