マイナンバーによる預貯金口座の管理を促進する法案 一度に複数口座のひも付けが可能に

預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案

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反対 (2)

提出者 :内閣

「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案」が、審議入りしています。本法案は、マイナンバーによる口座情報の管理を促進するための法案です。

政府は当初、マイナンバーと預貯金口座のひも付けについて義務化を検討していましたが、個人の希望に沿う形でひも付けを行うという案でまとまりました。本法案によって、児童手当や緊急時の給付金の受け取りなどをスムーズに行う狙いがあります。

今回は、法案の内容をわかりやすく解説します。


法案が成立すると何が変わる?

あまり知られていませんが、2018年1月からすでに口座情報とマイナンバーのひも付けは行われています。ただし、口座開設時にひも付けの案内を行うかどうかは、各金融機関の判断に委ねられており、そこまで普及が進んでいないのが現状のようです。

また、口座のひも付けは各金融機関の窓口からのみで、複数の金融機関の口座にひも付けを希望する場合は、金融機関ごとに申請をしなければなりません。

そんな中、提出されたのが本法案です。本法案が成立すれば、金融機関が預貯金に対し、口座ひも付けの意思確認をすることが義務化され、他の金融機関の口座もひも付けを希望すれば一回の申請で、他の金融機関の口座にマイナンバーをひも付けすることができます。

マイナンバーと口座のひも付け

出典:内閣府公式サイト

この法案が成立することによって、何が変わるのか具体的に解説していきます。

1. 金融機関の意思確認が義務化

マイナンバーと口座情報のひも付けを行うには、次の2つのうちのどちらかが必要です。

マイナンバーと口座のひも付けを行う方法
  1. 預貯金者自身が、金融機関に対し、当該金融機関の全ての口座を マイナンバーで管理する希望を申し出ること。
  2. 預貯金口座開設など窓口で取引を行う場合に、金融機関が預貯金者に マイナンバーによる口座管理を希望するか確認し、預貯金者が承諾すること。

二つ目の意思確認をするのが、本法案によって金融機関の義務となります。

金融機関は上記の申出又は承諾があった場合、預貯金者に対して、マイナンバーの提供を求めることができます。

2. 一つの金融機関で他の金融機関の口座もひも付けできる

上記の申出または承諾があった場合、金融機関は、預貯金者が、他全ての、または特定の金融機関についてもマイナンバーによる管理を行うことを希望するか確認しなければなりません。この確認も、金融機関の義務と規定されています。

この確認において、預貯金者の希望があった当該金融機関は、預金保険機構に対して、預貯金者を特定する事項を通知しなければなりません。そのうえ、預金保険機構は預貯金者の希望があった金融機関に対し、マイナンバーを通知します。


本法案のポイント

本法案によって、個人の全ての預貯金口座をマイナンバーで管理しやすくなります。ただし、ひも付けは義務ではなく、あくまでも預貯金者の意思に基づきます。

法案では、マイナンバーで口座を管理する目的を

第一条
行政運営の効率化及び行政分野におけるより公正な給付と負担の確保に資するとともに、 預貯金者の利益の保護を図ること

と規定しています。

1. マイナンバーにより預貯金口座の情報が提供される

マイナンバーで全ての預貯金を管理することで、行政だけでなく、国民にもメリットがあります。

それは、災害時と相続時に、預貯金口座に関する情報提供を受けられるようになる点です。 災害救助法適用区域に居住していた預貯金者は、口座を有する金融機関の名称を提示することで、店舗名や口座番号についての情報提供を受けられます。また、相続人も同様に被相続人名義となっている口座の情報提供を受けられるようになります。

2. マイナンバーにより預貯金口座が特定される

マイナンバーにより預貯金口座が特定されるため、行政機関がマイナンバーを、給与の支払調書作成時・生活保護決定時・払戻し停止などの預金保護時・その他政令の規定に基づく手続において、利用することができるようになります。


預金保険機構の役割

1. 預金保険機構と個人情報

預金保険機構は、金融機関が破綻した際に、1金融機関につき、預金者1人あたり元本1000万円とその利息を保護する預金保険制度を担う機関です。出資は、政府・日銀・金融機関が行っています。

預金保険機構は、金融機関が破綻した場合、同一金融機関内の口座を合算する「名寄せ」作業を行います。その際に、破綻金融機関から、マイナンバーや氏名・生年月日等の情報を得るわけです。

また、平素から、破綻時の名寄せがうまく機能するか検証するために、「システム検証」を行っています。その際には、金融機関から名寄せデータの提出を受けていますが、データについては、検証作業後、速やかに消去・廃棄する扱いです。実際の破綻時に使用した個人情報については、預金保険による払い戻し等が終了し、保有の必要がなくなった際に消去・廃棄することになっています。

2. 預金保険機構の重要な役割と金融機関への委託

本法案では、預金保険機構が、「金融機関から本人特定事項・マイナンバー等の通知を受ける」・「通知された本人特定事項・マイナンバー等を他の金融機関に通知する」・「災害と相続に関連した場合は、預金者や被相続人が、預金保険機構に対して、金融機関の名称・口座番号等の通知を求めることができる」等の重要な役割を果たすようになっています。

こうした業務の一部については、内閣総理大臣と財務大臣の認可を受けて金融機関に委託することができるとされています。現段階では、どの部分の委託を考えているのかは判然としませんが、委託することで、預金保険機構と金融機関が協力する体制となるのでしょう。

3. 預金保険機構の予算の仕組み

預金保険機構の主な収入は、金融機関が支払う保険料収入です。

ただし、本法案においては、預金保険機構の業務が増えるにあたって、財政的な裏付けもなされています。すなわち、預金保険機構は、本法案の業務に関連して、預貯金者や金融機関に情報提供をする際などに、手数料を得ることができます。

また、本法案の業務に関する費用の全部又は一部の交付を国から受けることや、内閣総理大臣及び財務大臣の認可を受けて資金の借り入れを行うこともできます。 


マイナンバーによる管理は進むのか

本法案では、金融機関と口座開設等の重要な取引を行う際に、金融機関が、預貯金口座についてマイナンバーによる管理を承諾するか否か意思確認を行うことが義務付けられています。意思確認を行うことで、マイナンバーによる預貯金口座の包括的な管理を増やしていこうとしているのでしょう。

政府としては、マイナンバーで預貯金口座を包括的に管理することで、「行政運営の効率化」と、「公正な給付と負担の確保」(第1条)を図りたいとしています。しかし、国民の側からみると、災害や相続時の情報提供があるにせよ、大きなメリットを実感しにくいのではないでしょうか。

マイナンバーによって預貯金口座を包括的に管理してほしいという国民が多ければ、着々と進んでいくでしょう。しかし、そのような国民が少なければ、進まないのは明らかです。 なかなか進まないとすれば、いずれ、政府が、マイナンバーによる預貯金情報の包括的な管理を義務付けようとする日が来るかもしれません。状況を注視していく必要があるでしょう。

この法案についてみなさんはどう考えますか?


参考サイト

預金保険機構公式サイト
あなたの預金を守ります!預金保険制度の概要について
一般勘定

三井住友DSアセットマネジメント
解説:預金保険機構

最新の賛成コメント

@maru

2023/03/28

最新の反対コメント

@takechi8285

2021/04/25

緊急給付金等の受取りに利用できるというのならば口座の番号だけ紐付ければよいのに、「公平な負担」を謳い、生活保護などの給付の際には口座の残高を照会する。政府が残高を照会、利用することの是非の議論はされているのでしょうか。当初の義務化から後退してわざわざ「預貯金者の意思に基づく~」と言い替えたあたり、法案の通りやすさを狙っているように感じます。

すべてのコメント

@maru

2023/03/28

@takechi8285

2021/04/25

緊急給付金等の受取りに利用できるというのならば口座の番号だけ紐付ければよいのに、「公平な負担」を謳い、生活保護などの給付の際には口座の残高を照会する。政府が残高を照会、利用することの是非の議論はされているのでしょうか。当初の義務化から後退してわざわざ「預貯金者の意思に基づく~」と言い替えたあたり、法案の通りやすさを狙っているように感じます。

@ichi369

2021/03/07

法整備先行で、実態が伴っていないと感じます。国民の利便性を向上したいというより、預金保険機構の運営費やシステムの構築に税金を無駄遣いしているようにしか見えない。天下り先を増やしただけではないのか?という勘繰りもしたくなります。

 詳細情報

議案件名 :預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案 
提出国会回次 :204
議案番号 :30
議案種類 :閣法
提出者 : 内閣
提出日 :2021年2月9日
公布日 :
法律番号 :