プラごみ減らすプラスチック新法案 世界のプラスチック規制と比較してみると?

プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案

賛成 (3)
反対 (5)

提出者 :内閣

今国会(第204回国会)に、プラスチックスプーン有料化等で話題となっている「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案(以下:本法案)」が内閣から提出されています。

本法案は、2019年5月、政府が策定した「プラスチック資源循環戦略」を具体化するために提出された、中央環境審議会からの「今後のプラスチック資源循環施策のあり方について」という意見具申をもとに作成されました。

政府は、本法案の成立によって、プラスチック廃棄物による海洋汚染を背景とする国際的なプラスチック廃棄物削減の潮流、諸外国の廃棄物輸入規制強化などへの対応、プラスチック資源の循環強化を目指しています。

この記事では、本法案の内容をわかりやすく解説します。また、他国のプラスチック規制の状況もまとめました。これらを比較しながら本法案について考えてみましょう。


プラスチック製品のライフサイクル全般における循環を促進

本法案は、プラスチックに関する資源循環の促進を狙いとしています。そのために、設計・製造、販売・提供、排出・回収・リサイクルの各段階で資源循環を可能とするための規定が盛り込まれています。

①設計・製造

  • 環境配慮設計指針を定める

主務大臣(※)が、プラスチックに関する資源循環を促進するために環境に配慮した設計指針を定めます。事業者は、この指針に基づき設計するよう努めなければなりません。また、主務大臣が、指針への適合を認定し、認定できた製品を率先して調達します。 ※主管権限を持つ大臣

②販売・提供

  • 使用の合理化

プラスチック製品の販売・提供に関しては、「使用の合理化」が求められます。「使用の合理化」とは、使用期間を長期間とすることや、過剰な使用を抑制することです。

主務大臣は主務省令で、特定プラスチック使用製品多量提供事業者事業者(※)が取り組むべき措置を定めなければなりません。各種メディアで報道されている「プラスチックスプーンの有料化」はここで定められる措置の一例です。この他にも、プラスチック製品の提供を断った消費者に対するポイント還元や代替素材への変換などが考えられます。

※商品の販売等に付随して無償でプラスチック使用製品を提供する事業者のうち、その量が政令で定める要件に該当する事業者

また、主務大臣は、特定プラスチック使用製品多量提供事業者事業者に対し、プラスチック廃棄物の抑制に関する指導・助言を行うことができます。

さらに、特定プラスチック使用製品多量提供事業者事業者におけるプラスチック廃棄物の抑制が著しく不十分なときは、抑制のために必要な措置をとるよう勧告し、これに従わない場合は、従わない旨を公表できます。公表後も正当な理由なく勧告に従わない場合は、勧告に従うよう命令でき、この命令にも従わない場合は、50万円以下の罰金を課すことが規定されています。

③排出・回収・再商品化・再資源化

排出・回収・再商品化・再資源化に関する規定は次のとおりです。

  • 市町村の分別収集・再商品化の促進

市町村は、プラスチック使用製品廃棄物の分別収集・再商品化に必要な措置を講ずるよう努めなければなりません。本法案では、分別収集やリサイクルを促進するために、容器包装リサイクル法を活用した再商品化を可能にします。

市町村と再商品化事業者が連携する再商品化計画を主務大臣が認定すると、市町村による選別、梱包を経ずに事業者が再商品化を実施できるようになります。

  • 製造・販売業者による自主回収・再資源化

製造・販売業者による使用済みプラスチックの自主回収と再資源化を促進するために、自主回収・再資源化に関する製造・販売業者の計画を国が認定する制度も設けました。認定を受けると、製造・販売事業者は廃棄物処理法上の業許可(※)が不要となる特例を得られます。 ※廃棄物処理を業として行う許可

  • 排出事業者による排出抑制・再資源化

排出事業者によるプラスチック廃棄物の排出抑制・再資源化を促すために、主務大臣が主務省令で、排出事業者がとるべき措置についての判断基準を定めます。主務大臣は、この基準により、排出事業者に対し、指導・助言・勧告・公表・命令を行うことができます。

また、排出事業者が作成した再資源化計画を主務大臣が認定すれば、事業者は廃棄物処理法上の業許可が不要となる特例を得られます。


法案に対する世間の反応は?

この法案が可決すれば、定められる主務省令の内容によっては、ヨーグルトやスパゲティなどをコンビニ等で購入したときに提供されるプラスチック製のスプーンやフォークが有料化されることになります。

この有料化に対して、SNSなどにアップされた世間の反応を整理してみました。

賛成
  • これまでは不要な人ももらっていた。
  • 海洋保護や資源保護のためには、必要な人が有料で購入すればよい。
  •     
  • レジ袋が有料になったので、スプーン類も有料にするのが当然だ。
  • レジ袋よりも、スプーンなどの方がごみになりやすい。
  • マイスプーンを持ち歩くきっかけになり、プラスチックごみが減る。
  • プラスチックごみを減らそうという意識が強まる。
反対
    
  • マイスプーンを持ち歩くようになるとは思えないので、有料化してもごみは減らない。
  • マイスプーンを持ち歩いても、食後すぐに洗えないので不衛生だ。
  • 実質的な値上げになる。。
  • 店員の負担が増えてしまう。
  • 購入する時に、スプーンなどが必要か聞かれるのがわずらわしい。
  • スプーン業者が気の毒だ。

確かに、有料化されれば、プラスチックごみはある程度減少し、プラスチックごみ削減への意識も高まるでしょう。しかし、マイスプーンの持ち歩きには懸念が多いようです。

有料化以外の策についてもしっかり検討した上で、プラスチックごみの削減により有効な策を定めてほしいところです。


諸外国の使い捨てプラスチック規制

国際環境NGO「グリーンピース・ジャパン」によると、各国・地域の使い捨てプラスチック製品の規制は、次のとおりです。

国・地域 取り組み
EU
  • 2018年末までにレジ袋無料配布禁止を義務化
  • 2021年から10品目の使い捨てプラスチック製品の流通を禁止する法案を2018年に可決
イギリス
  • 2015年までに、従業員250人以上の小売業者に対しプラスチック袋を有料化
  • 2020年からプラスチック製のストロー、マドラー、綿棒を禁止
ドイツ
  • 2016年から小売連盟が加盟小売店にレジ袋有料化を義務付け
  • 2021年から使い捨てプラスチック製の皿、マドラー等を禁止
フランス
  • 2016年から厚さ0.05mm未満、容量10リットル未満のレジ袋の提供禁止(バイオマス原料の生分解性プラを含む)
  • 2020年から使い捨てプラスチックの食器類や容器等を禁止
イタリア
  • 2011年から生分解性以外のプラスチック製レジ袋の配布を禁止
  • 2018年からスーパー等で生分解性軽量プラスチック袋に課税
中国
  • 2020年末までに主要都市での非分解性の袋を禁止(予定)
  • 2022年までにすべての市と町で非分解性の袋を禁止(予定)
台湾
  • 2002年から、レジ袋の使用を段階的に制限
  • 2030年までに使い捨てプラスチック製品の撤廃を目指す
ニューヨーク州
  • 2020年から使い捨てプラスチック製レジ袋を禁止
カナダ
  • 2021年までに使い捨てプラスチックの段階的禁止
オーストラリア
  • 2018年から2州を除く全州でレジ袋を禁止

日本では、2020年7月より使い捨てプラスチック製レジ袋の有料化が義務化されましたが、主要国では使い捨てプラスチック製レジ袋などの使い捨てプラスチック製品そのものを禁止する流れが始まっています。プラスチック製品そのものを撤廃しようとしている他国の動向と比較すると、日本はやや遅れているような印象を受けます。

本法案でも、使い捨てプラスチック製品の過剰な使用を抑制するための措置が規定されてはいますが、禁止には踏み込んでいません。プラスチックごみによる海洋汚染問題を解決するためには、使い捨てプラスチックスプーンの有料化より、材質を自然環境下で分解されるものに変更していく仕組みを作り、プラスチック製レジ袋そのものをなくしていく方が大切な気がしてなりません。


まとめ

法案の内容だけでなく、レジ袋有料化による効果などもわかりやすく説明し、納得のいく論戦を経たうえで採決に臨んでほしいものです。また、プラスチック資源の循環が本当に促進され、プラスチック廃棄物が極小化するような効果的な主務省令を定めることで、この法律がうまく機能し、プラスチック廃棄物が極小化することを期待したいです。

海洋保護や、日本のプラスチック廃棄物の輸出が困難となってきていることを踏まえ、プラスチック廃棄物を資源として循環させていく仕組みを構築するために提出されたのが本法案です。

一方、わが国のプラスチック規制は、他国と比較してやや遅れていることを忘れてはいけません。本法案をきっかけに今後、使い捨てプラスチックに関する議論が加速し、環境保護により有効な対策が講じられることを望みます。

最新の賛成コメント

@maru

2023/03/28

プラの代替として、紙やバイオプラの利用促進を図っていただきたい。

最新の反対コメント

@なんたん

2021/04/03

コンビニでもらえるスプーンは使わず持って帰り家で使うなど便利だったんだけど。プラスチックを禁止するのではなく環境に無害化してほしいです。レジ袋は貰わないけど、家庭ゴミを入れるのに結局別で袋買ってるので使用量が変わりません。そもそもちゃんと廃棄すれば良いのでは?

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@maru

2023/03/28

プラの代替として、紙やバイオプラの利用促進を図っていただきたい。

@なんたん

2021/04/03

コンビニでもらえるスプーンは使わず持って帰り家で使うなど便利だったんだけど。プラスチックを禁止するのではなく環境に無害化してほしいです。レジ袋は貰わないけど、家庭ゴミを入れるのに結局別で袋買ってるので使用量が変わりません。そもそもちゃんと廃棄すれば良いのでは?

@rolling893

2021/04/02

有料化した上で、プラスチックスプーン類自体を規制すればいい。ゴミが回収される前提で話している人がいるが、投棄する心ない人が相当数いる現実を見て、不便を受け入れる必要があると思う。

@m_kmtm@0101

2021/03/29

マイスプーンを持ち歩くとは思えない。有料化すればゴミが減るわけではないと思う。

@だるばーど

2021/03/28

不便になりますが、プラスチック規制を厳しくすることには賛成です。今までの当たり前を見直すなら、他国のように使い捨て製品のプラスチック利用自体を禁止する方向に早く進むべきだと思います。施策の効果をしっかり検証し、エコ意識を高める社会意識が形成されることを期待します。

@ichi369

2021/03/27

日本では、プラスチックごみは焼却処分されるので、この法案は実質的には意味がない。国民への意識付けという建前は分かるが、その前にマイクロプラスチックの本当の原因究明を行い、日本が取り組むべきことをしっかり議論してもらいたい。

@TONOさん3号

2021/03/24

ゴミ袋の有料化自体も反対なのに更にスプーンとかも?当然反対です。 日本国内だけで処理が出来るならある程度分別も出来ているので海洋汚染は防げる(防げているはず)と思います。 ただ海外へゴミを輸出(引き取ってもらう)していると聞く。これでは行き先でどうなっているかが分からない。処分場の技術改革を進めて綺麗に処分できるような施設を作る。国内で完結できる処理方法を開発する方向へ力を注いだ方がよいのでは?

@もも

2021/03/23

現実的に考えると、マイスプーンを持つようになる人はあまりいないのではないかという気がします。本文でも書いてありますが、スプーン・フォークをプラスチック以外の素材(木など)で代替するのが一番いいと思います。最近はストローを紙ストローにしているお店が増えているので、同じように代替するのは不可能ではないと思うのですが…。プラスチックスプーン・フォークを使わないようにしようという動き自体には賛成です。

 詳細情報

議案件名 :プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案 
提出国会回次 :204
議案番号 :61
議案種類 :閣法
提出者 : 内閣
提出日 :2021年3月9日
公布日 :
法律番号 :