政府が導入を進めているイージス・アショアに採用されるレーダーやイージスシステムのソフトウェアバージョンの選定に関しては、性能、価格、納期の面で疑問が多い。防衛省は既に製造が開始され多数の配備予定があるSPY-6ではなく、開発中のLMSSRをイージス・アショア用のレーダーとして選定した。同省は「イー…
政府が導入を進めているイージス・アショアに採用されるレーダーやイージスシステムのソフトウェアバージョンの選定に関しては、性能、価格、納期の面で疑問が多い。防衛省は既に製造が開始され多数の配備予定があるSPY-6ではなく、開発中のLMSSRをイージス・アショア用のレーダーとして選定した。同省は「イージス・アショアの構成品選定結果について(2019年7月30日付)」にて、「基本性能」、「後方支援」、「経費」の項目でLMSSRに「より高い評価」を与えているが、評価内容には疑問が多い。
費用に関する疑問
イージス・アショア本体とレーダー(LMSSR)のインテグレーション作業はどの組織がどこの予算で実施するのか。
SPY-6では5億円以上にもなった迎撃試験費用は導入もしくは運用経費のいずれかに含まれるのか。
多数の米軍艦艇への搭載が決まっているSPY-6とは異なり、LMSSRは日本のみの採用で、導入規模が限られている。維持整備への日本企業の参加も見送られたが、経済的かつ安定的な長期間の部品供給が可能なのか。
2019年4月26日に防衛省が発表した、1399億円の米政府とイージス・アショア本体機能分として1399億円の契約を交わしたと発表。
LMSSR選定への疑問(技術的な能力が不透明)
航空機・巡航ミサイル対処能力:LMSSRは弾道ミサイルに加え、航空機・巡航ミサイルへの対応能力を持つのか。
SM3運用能力:LRDR(LMSSRと同様の技術を用いて製造)はイージス・アショアが運用予定のSM3ミサイルの運用能力を前提としているのか。
目標識別性能:LMSSRはLRDRに比べ20分の1のサイズしかない。LMSSRはLRDRと同様の性能を有するのか
射撃管制機能:LRDRは長距離識別レーダーであり射撃管制機能がない。LMSSRではSM3などにどのように射撃管制情報を伝達するのか
LMSSRとベースライン9(イージスシステムのソフトウェアバージョン)で構成されるイージス・アショアは2019年から約5年間で製造するとの一方で、SPY-6と最新のベースライン10を搭載した米イージス艦が2024年(米会計年度)に就役予定である。 LMSSRとベースライン9の評価が、開発と配備が先行しているSPY-6とベースライン10の組合せよりも「基本性能」でより高い評価を得た根拠は何か。 また、このようなペースで、FMS締結後6年間で配備するとの提案内容は守られるのか。
費用に関する疑問
インテグレーションは米国防省ミサイル防衛庁が行い、費用は米国の有償援助であり「導入費用」に含まれる。
迎撃試験の実施は要否を含め米国との協議中であり導入・運用費用のいずれにも含まれないが、標的探知・追尾試験は「導入費用」に含まれる。
LMSSRの部品の補給などは、米国政府などから提案された「後方支援」が実施されれば安定確保が可能と考えている。
1399億円の契約の具体的内容は米国との関係もあり、回答を差し控える。
LMSSR選定への疑問(技術的な能力が不透明)
航空機・巡航ミサイル対処能力:ベースライン10を用いらずとも、LMSSRは弾道ミサイル防衛のための十分な能力を有すると見込んでいる。
目標識別性能:イージス・システムの具体的な対処能力を明らかにする恐れがあり回答を差し控える。
射撃管制機能:イージス・システムの具体的な対処能力を明らかにする恐れがあり回答を差し控える。
防衛省で実施した基本性能評価のための分析内容については、イージス・アショアの対処能力を開示する恐れがあり回答を差し控える。 なお、納期にいては現時点では遅延につながる事象は発生しておらず、また米政府などから納期を含む選定手続きにおける提案を遵守する旨の誓約書を得ている。
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質問主意書名 : | イージス・アショアに関する再質問主意書 |
提出先 : | 衆議院 |
提出国会回次 : | 198 |
提出番号 : | 183 |
提出日 : | 2019年5月23日 |
転送日 : | 2019年5月29日 |
答弁書受領日 : | 2019年6月4日 |