陸上配備型イージスシステム「イージス・アショア」は、北朝鮮はもとより、我が国を射程に納めることができるミサイルを持つ国々から、我が国を守るために配備される予定だったものである。 配備する地点については、防衛省の調査・検討により秋田県陸上自衛隊新屋演習場と山口県陸上自衛隊むつみ演習場を予定していた。
秋田・山口両県で行われた事前の説明会は紛糾し、防衛省職員の居眠りや説明資料の誤りが指摘されるなど、住民にとっては不安が残る説明会となった。イージス・アショアはこのまま配備される予定だったが、河野防衛大臣は2020年6月15日に配備計画の停止を表明した。
小西議員はこれらのことに対して河野防衛大臣による説明が必要とし、配備計画の停止理由や配備の再開時期に関する説明を求めている。 それでは河野防衛大臣がどのように説明をしているのか、見ていくことにしよう。
前述のようにイージス・アショアの配備は停止となった。この計画が中止となれば我が国の安全保障上の懸念が広がるばかりだ。停止に至る経緯を明らかにしなければ配備される予定だった地域に対しても影響が及ぶ。議員はその経緯を問うことから始めている。
答弁:配備に当たって、ミサイルを迎撃するときに発射する防衛用迎撃ミサイル(「SM―3」)の飛ぶ経路を操作することにより、SM―3から切り離されるブースター(追加燃料のようなもの)を陸上の特定区域内か海面に落とすこととし、その旨の説明も行ってきた。
しかしながら、米側との協議などの結果、ブースターを特定区域内か海面に確実に落とすためには、システム全体を大きく改修することが必要となり、この改修には相当の費用と期間を要することが分かったためである。
協議を行った結果、改修には相当の費用と期間を要することが分かったことが停止の大きな理由であろう。ただし、計画が中止となれば、我が国の安全保障にかかわる情勢が揺らぎかねない。議員は以下のように質問する。
防衛省はこれまでイージス・アショアを「我が国全域を防護するために必要不可欠」と説明しているが、計画の停止によって防衛省はこの認識を改めたのか。
防衛省は「(別冊)イージス・アショアの配備について」資料で、「イージス・アショアは、24時間365日、弾道ミサイルの脅威から我が国全体を防護するために必要不可欠な装備品です。」と説明している。
「我が国全体を防護するために必要不可欠」なのであれば、今回の配備停止はあってはならないことである。必要不可欠なのにもかかわらず、計画を停止したのはその認識が変わったのではないかと議員は問うている。
答弁: 現在の我が国を取り巻く安全保障環境の認識や今後について安倍内閣総理大臣が2020年6月18日の記者会見において、「我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増しており、現状には全く変わりがない。弾道ミサイルから国民の命と平和な暮らしを守り抜く。これは政府の最も重い責任だ。安全保障政策の根幹は、我が国自身の努力にほかならない。この夏、国家安全保障会議で徹底的に議論し、新しい方向性をしっかりと打ち出し、速やかに実行に移したい。」と述べているとおりである。今後の具体的な方向性等については、現時点でお答えすることは控える。
河野防衛大臣は以上のように答え、詳しい明言は避けた形だ。
イージス・アショアは、かねてから予算の多さが取りざたされてきた。議員はそのような情報も踏まえて、計画にかかわる予算の内容について質問した。
答弁:
経費の内訳 予算額 支払済額 2017年 情報取得費 28億円 27億円 2018年 基本設計費 4億円 4億円 地質測量調査費 3億円 1億4000万円 2019年 レーダーを除くイージス・システム本体 1382憶円 97億円 レーダー 351億円 65億円 人材育成費 17億円 0円 標準設計費 7億円 6000万円 2020年 垂直発射装置費 115億円 未契約 国内システムとの連接に関する調査費 14億円 未契約
2019年になると予算額が倍増していく。なんと、システム本体だけで合計1479億円。さらに、30年間の維持費も合わせると4500憶円以上も掛かる見込みだったのだ。
イージス・アショアの配備が停止されたため、日本の安全保障戦略を根本から検討し直すこととなった。今後課題となるのは、いかにして協力を得ながら我が国の安全保障を保つかであり、謙虚な姿勢や適正な予算、プロセスの明確化も重要になってくる。これからの安全保障は、これらのことが成り立った上で初めて成功するのではないだろうか。
@ケンタ
2020/11/15
国家安全保証問題に住民説明がありところが面白い。
@kimuu
2020/08/02
2000億弱で撤退したことが英断になるのかどうかは今後次第といったところでしょうか。 河野大臣が謝罪をしたことは評価しています。謝らない政治家多いじゃないですか。オークション開催して残契約分も値切ってくれることを強く期待しています。
質問主意書名 : | 陸上配備型イージス・システムの配備に関する質問主意書 |
提出先 : | 参議院 |
提出国会回次 : | 201 |
提出番号 : | 194 |
提出日 : | 2020年6月17日 |
転送日 : | 2020年6月17日 |
答弁書受領日 : | 2020年6月30日 |