「ポストもんじゅ」の核燃料サイクルにリアリティはあるのか?

核燃料サイクルの破たんと高レベル放射性廃棄物最終処分に関する質問主意書

出典:資源エネルギー庁HP

提出議員 : 阿部 知子

核燃料サイクルとは、使用済み燃料からウランやプルトニウムなどを取り出しエネルギー資源として回収することで、再び原子力発電の燃料に用いる仕組みのことだ。

特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律では核燃料サイクルを前提とし、エネルギー基本計画でも核燃料サイクルを基本方針としている。

核燃料サイクルの実現には高速増殖炉の利用が不可欠だが、高速増殖炉もんじゅの廃炉が正式に決定してしまった。さらに、フランスと共同研究を目指していた高速炉ASTRIDも、フランスが放棄したと報じられた。核燃料サイクルを実現したくとも肝心の高速炉が無い状況を見かねて、阿部知子衆院議員から計画の見直しの必要性を問う質問が提出されたのだ。


日仏間で共同高速炉開発計画の頓挫について協議は?

経済産業省主催の高速炉開発会議は2016年12月19日の開催が最後だ。また、今後の戦略を具体的に策定するために同会議のもとに設置されたワーキンググループも2018年6月1日を最後に行われていない。ワーキンググループでは、2018年に戦略ロードマップの策定を目指すと述べていたが、今だに策定は実現していない。

過去の会議で何度も議題に上っていたことから、ASTRID開発は戦略ロードマップの柱に位置していたと考えられる。ASTRID開発の頓挫が戦略ロードマップが策定できないと言えるだろう。

また、2018年11月29日の日経新聞には「フランス政府は2020年以降、ASTRID計画を凍結する意向を日本に伝えたことが分かった」と報じている。さらに、2019年8月30日、フランスの原子力・代替エネルギー庁は「高速炉の開発は今世紀前半は見通しがつかなくなった」と声明を出したとも報じられた。

質問
日仏共同高速炉開発計画は終了したと考えられるが、計画の凍結などの方向性は、いつ日本に伝えられたのか。

答弁
フランス政府や原子力・代替エネルギー庁との詳細なやり取りは、先方との関係もあるので差し控えたい。

質問
フランス政府はすでにASTRID開発に予算を割くことをやめている。日本でも原資となる税金の無駄使いとなるため、財務省は経済産業省に働きかけ、高速炉関連予算の凍結を判断する時期ではないか。

答弁
2019年6月29日に「日仏間の高速炉開発協力に関する一般取り決め」を行い、いまだに開発協力は継続している。また、2018年12月21日の原子力関係閣僚会議で、戦略ロードマップは策定している。このため、戦略ロードマップを策定していないとの指摘は的を得ていない。 予算編成過程において高速炉関連予算の検討は行うが、戦略ロードマップのもと、引き続き高速炉開発に取り組んでいく。


再処理工場の建設計画を進めるのが適切か

核燃料サイクル事業は日本原燃株式会社が中心となり、青森県六ヶ所村で事業が進められている。そして、2兆円以上の費用をかけて建設中の六ヶ所再処理工場が新規制基準に達したと今年、原子力規制員会は発表した。

質問
核燃料サイクル実現の要となる高速増殖炉も開発計画も存在しない中、六ヶ所再処理工場を進めるのは経済的に合理的でないと言える。予算をかけてまで行うことではないと思われるが、経済合理性に関してはいつだれが判断するのか。 日本原燃株式会社はこのまま六ヶ所再処理工場の工事計画認可を進めるのだろうが、前提となる核燃料サイクルについてはいったん立ち止まる必要があるのではないか。

答弁
経済合理性という言葉の指す意図が判然としないが、原子力発電の発電コストは、使用済み核燃料の各サイクル費用も含め、はキロワットアワー当たり十・一円以上と試算されている。 資源の有効活用と高レベル放射性廃棄物の危険性減容の観点から、使用済み燃料を再利用してプルトニウムを回収することは基本方針であり、今後も核燃料サイクルは進めていく。


高レベル放射性廃棄物最終処分場の建設候補地「寿都町」への説明について

使用済み核燃料からプルトニウムとウランを抽出し、残液をガラスと混ぜて固めた高レベル放射性廃棄物は、人に触れないように地下深部で保存される必要がある。そして、高レベル放射性廃棄物の最終諸処分場の建設候補地として、北海道寿都町が挙げられている。

寿都町は特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律に基づく文献調査に応募するかどうか検討するための住民説明会を開始したところだ。そもそも、この法律は核燃料サイクルが前提として考えられている。

質問
状況が変わり核燃料サイクルの実現が難しくなった今、その旨を住民に説明すべきではないか。

答弁
高レベル放射性廃棄物に関しては、地下300メートル以上の深さの地層において人間の生活環境から隔離して保存するという考えだ。この方針のもと、北海道寿都町には適切な説明を行っていく。


高速増殖炉や開発計画がない中でも、政府は依然として核燃料サイクルを推進する立場を取っているようだ。現状、再処理工場の建設が先行して進められている状況だが、政府はどのように核燃料サイクルを実現するのか今後の見どころである。


@TONOさん3号

2020/11/24

この質問内容の是非は情報が少ないため判断しかねます。原子力のエネルギーはある程度は存続するべきだと思う。処理とか再利用とか何かしらの新しい技術が出てきてもらいたいものです。フランス相手の情報は話半分とみるべきです。

@だるばーど

2020/11/24

地元の自治体が核のゴミの最終処分場選定の文献調査に応募しました。そういえば原発のリサイクルの話はどうなったんだっけ?使った分100%ゴミになるんだっけ?と疑問に思っていたので、核燃料のリサイクルに関して方向性や取り組みの現状を知ることができました。

@kimuu

2020/10/28

「核燃料をリサイクルできる部分が95%以上で、残りの数%だけが核燃料ゴミだ」と言われれば処分場に手を挙げる自治体もあったかもしれません。ただ、リサイクル先がなくなってしまったら、全てゴミになってしまうんでしょうか?そうなると、話が大きく違ってきてしまうので、全ての計画をリセットする必要があると思います。

 詳細情報

質問主意書名 :核燃料サイクルの破たんと高レベル放射性廃棄物最終処分に関する質問主意書 
提出先 :衆議院
提出国会回次 :202
提出番号 :25
提出日 :2020年9月16日
転送日 :2020年9月18日
答弁書受領日 :2020年10月2日

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