日本の事業者支援は十分? 新型コロナ感染拡大による休業補償を諸外国と比較検証

緊急事態宣言下における営業制限に伴う事業者補償と新型コロナウイルス感染拡大で厳しい影響を受けている事業者への給付支援に関する質問主意書

提出議員 : 中谷 一馬

コロナ禍において、時短営業を余儀なくされる飲食店が相次いでいることが報道されています。そんな中、日本より充実した事業者への補償を行っている国々があることも話題となっています。

立憲民主党の中谷一馬衆議院議員が提出したのは、この点に関連する「緊急事態宣言下における営業制限に伴う事業者補償と新型コロナウイルス感染拡大で厳しい影響を受けている事業者への給付支援に関する質問主意書」です。この質問主意書で、中谷一馬議員は、イタリアやドイツにおける補償と日本での補償を比較した上で、「営業時間短縮に係る感染拡大防止協力金」、「持続化給付金」、「家賃支援給付金」の拡充等を求めています。 この記事では、イタリア・ドイツ・日本の支援の比較や、支援拡充に対する政府の姿勢などをわかりやすく解説していきます。


「感染拡大防止協力金」の国際比較

中谷一馬議員は、新型コロナ感染対策として社会経済活動に制限を設けたイタリアやドイツでの事業者に対する経済的支援を紹介するとともに、日本の実情にも言及しています。 中谷一馬議員の質問に沿って、イタリア・ドイツ・日本を比較してみましょう。

対象 金額 補足
イタリア 営業制限を受ける企業や個人業主等 最大15万ユーロ
(約1827万円)
飲食業界団体が政府に対し、支援措置を要求。その結果、支援策が講じられた。
ドイツ 閉鎖を求められた企業・公的機関・自営業者等(事業者との取引により間接的な影響を受ける事業者やグループ企業も対象) 最大400万ユーロ
(約4億8720万円)
ANNの報道によると
・昨年11月から前年同月売り上げの最大75%を支援
・今年1月からは賃料などの固定費の最大90%を支援
日本 緊急事態宣言下において時短営業に応じた飲食店等 一店舗あたり
一日6万円
経済産業省によると
一都三県の飲食店と取引があり、緊急事態宣言の影響により、今年1月、2月、3月の売上が2019年比または2020年比で売上が50%以上減った中小企業に最大60万円、個人事業主に最大30万円の一時支援金を支給予定。

こうした実情をみると、日本の支援はかなり見劣りします。


「持続化給付金、家賃支援給付金」の国際比較

中谷一馬議員は、次に、日本の「持続化給付金」・「家賃支援給付金」に相当する、ドイツ政府が実施する中小企業や自営業者向けの「給付型つなぎ資金」を話題としています。

中谷一馬議員の質問内容を整理し、ドイツと日本の支援内容を比較してみましょう。

ドイツの「給付型つなぎ資金」
第1期:月額最大支給額5万ユーロ。最大3か月間、15万ユーロ(約1827万円)
第2期:月額最大支給額5万ユーロ。最大4か月間、20万ユーロ(約2436万円)
第3期:月額最大支給額50万ユーロ。最6か月間、300万ユーロ(約3億6540万円)

日本の「持続化給付金」と「家賃支援給付金」
持続化給付金:法人最大200万円。個人事業主・フリーラ ンス最大100万円
家賃支援給付金:法人最大600万円。個人事業主・フリーランス最大300万円

ここでも、日本の支援はかなり見劣りするものになっています。

先にも触れたANNの報道によると、ドイツで手厚い補償ができる理由の一つは、財政収支の健全化に成功し、2014年から黒字となっていることだといいます。財政赤字が続く日本とは財政の体力が異なるのかもしれません。また、旧東ドイツで育ったメルケル首相は、自由の重要性を知っているため、私権の制限には補償が欠かせないと認識しているといいます。こうしたメルケル首相の考え方も手厚い補償の背景にあるのでしょう。


国際的に見劣りする日本の事業者支援、支援拡大の余地はあるか

中谷一馬議員は、イタリアやドイツにおける事業者への支援を踏まえて、次のように質問しています。

質問
政府は、イタリアやドイツの事業者等への支援策について、どう考えているのか。

答弁
それぞれの国での新型コロナウイルス感染症の状況と、社会経済活動の制限措置等の影響を考慮した支援策である。

質問
イタリアやドイツでは日本とは桁違いの支援策がとられている。事業を存続できるだけの支援金が必要なので、支援金を拡充してほしい。

答弁
引き続き、「重点的・効果的な支援に万全を期してまいりたい(※)。」
※原文を引用しました

質問
「持続化給付金」・「家賃支援給付金」を2月15日以降も延長するとともに、増額し、更なる給付策を実現してほしい。

答弁
事業者について、必要な対策をとっていく。

いずれの質問に対しても具体性が乏しい回答が繰り返され、支援拡充に対する前向きな意欲は感じられません。


事業者ごとの適切な支援が必要なのではないか

日本では、新型インフルエンザ等特別措置法等の改正により、営業事件短縮等の命令に応じない場合は過料に付すという罰則規定が設けられました。しかし、実際の支援は、一店舗を一単位とした支援であることなどから、事業者の規模等によっては、事業存続のための最低限の支援にもなっていないという実情があります。

罰則規定を設けるのであれば、事業者の売上や固定費に見合った支援の導入が望ましいように思えます。また、国際的に見ても日本の事業者支援は見劣りします。財政の体力が諸外国と異なるにしても、事業者の必要性に応じて金額を調整するメリハリの利いた支援を行う工夫が必要なのではないでしょうか。

そのためには、例えば、前年度の確定申告を利用することなどが考えられるでしょう。今回のコロナ禍で、日本政府はIT活用に遅れがあることが浮き彫りとなりました。前年度の確定申告の情報等を迅速に活用するシステムの迅速な構築し、事業所ごとに適切な支援を行うことはできないものなのでしょうか。


@restog

2021/03/23

非常時こそ国の裁量がはっきりする、日本の事業主に対する支援の希薄さはこのことをはっきりと示していると思う。戦後から抱える国債をいまだに解決できていない日本に、新型コロナウイルスによって事業の縮小を余儀なくされた事業者に対しての十分な支援が出来るはずがない。 国に頼らない仕組みを早急に構築すべき。

@m_kmtm@0101

2021/03/10

各国との格差に驚きました。 経済を回すことに重点を置く国、 感染対策に重点を置く国、 どちらも中途半端な国(日本はここ)。 どこが上手く行くのか難しいところですね。

@だるばーど

2021/02/21

各国と日本の差に驚きました。ドイツで手厚い財政支援が可能なのは財政収支の健全化に成功したからということなので、財政の状況を鑑みると日本にはとても同じ内容での支援はできないのですね。ずっと財政の健全化を優先しなかったツケが、緊急事態に国民を守れない現状につながっているのだと感じました。

@なんたん

2021/02/18

確かに支援は日本は劣っているのが、わかりました。 しかし手厚い支援をするための資金がないので今でも税金上がるんだろうと思うとため息でます。

@もも

2021/02/16

現在、飲食店は相当厳しい状況に置かれており、既に店をたたまざるをえなくなった飲食店経営者の方も多くいらっしゃると思います。十分な支援金を出せば、飲食店側も納得して時短措置などに対応できると思います。日本ではイタリアやドイツ並みの支援は財政的に無理だと思いますが、もう少し飲食店支援に優先的に財源を回してもいいと思います。

@TONOさん3号

2021/02/16

ドイツの例を取って支援の不充分なのは分かっています。逆に言えばそれには制限が着いてくるということです。その制限にかなりの拘束力が伴うのでそれを国民が受け入れるのか?法整備は?ってところに論点があります。まだマイナンバー程度ののことで不安とか言っている国で可能なのかも疑問。 日本では緩やかに経済を回して緩やかな感染対策をするでよいのではないかというのが持論です。お金を配るのはたぶん可能なのですがあくまで一時しのぎです。

 詳細情報

質問主意書名 :緊急事態宣言下における営業制限に伴う事業者補償と新型コロナウイルス感染拡大で厳しい影響を受けている事業者への給付支援に関する質問主意書 
提出先 :衆議院
提出国会回次 :204
提出番号 :2
提出日 :2021年1月18日
転送日 :2021年1月25日
答弁書受領日 :2021年1月29日

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