第201回国会で、特定デジタルプラットフォームの透明性及び公平性の向上に関する法律が審議された。この法律の中身はどのようなものなのか解説する。
インターネットの発展により、デジタルプラットフォームの社会的・経済的価値が増してきている。デジタルプラットフォームとは、情報技術を活用して作られたオンライン上の場である。有名な企業を挙げてみると、AmazonやApple、Facebook、楽天市場などがデジタルプラットフォーム事業者であり、提供する場がデジタルプラットフォームと呼ばれる。
一方、デジタルプラットフォームと、利用する商品・サービスの提供事業者との間で、さまざまなトラブルが勃発している。
例えば、一方的に利用規約が変更されたり、手数料が改訂されたりして、利用者が受け取る情報に非対称性が生じている点が問題視されてきた。この点を考慮し、デジタルプラットフォームの透明性や公正性の向上を図るため、同法案が提出された。
<参考リンク>
デジタル・プラットフォームに関するトラブル|国民生活センター
まず、この法律の重要な点は、一定以上の規模のデジタルプラットフォームを「特定デジタルプラットフォーム」として指定する点にある。特定デジタルプラットフォームは、透明性及び公平性の自主的な向上に努めなければならないとされている。
第5条関係では、特定デジタルプラットフォームが、利用者(事業者及び一般消費者)に対して提示すべき利用条件の内容等を規定している。
プラットフォーム提供者としての優越的地位を利用して、一方的な条件変更等のリスクを低下させる目的がある。
特定のケースでは、商品等を提供する事業者以外の利用者、つまり一般消費者の利益に害する場合は情報を開示しなくても良いとされる点に注意いただきたい。また、「一般消費者の利益に害する場合」の具体的な事例に関しては、この法律には規定されていない。
次に、第9条に関してだが、ここではデジタルプラットフォーマーが毎年度、経済産業大臣に報告書を提出すべきことを定めている。報告すべき事項が5つ列挙されているが、「事業の評価」に関しては自ら行った結果を記載しても良いとされる点に注意いただきたい。ちなみに、違反した場合、勧告や改善命令など行政処分が行われる。
デジタルプラットフォームの肥大化・権力の横暴を防ぎ、サービス提供者等の利用者が安心して利用できる仕組みを整備することがこの法律の意義だが、法案はデジタルプラットフォーマーを十分に規制する内容といえるだろうか。法案の総則部分を読み取ると、規制というよりむしろ、デジタルプラットフォーマーの活動を積極的に評価していることが伺える。
まず、法律内で登場する用語の定義などを示した第2条では、「提供者等の便益が著しく増加」したという表現が繰り返し出てくる。そして、基本理念を定義した第3条では「利用者の便益の増進に寄与し」「我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展にとって重要な役割を果たすものであること」という前置きがなされている。
そして、3条をさらに読み進めると「デジタルプラットフォーム提供者がデジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上のための取組を自主的かつ積極的に行うことを基本とし、国の関与その他の規制を必要最小限のものとすることによりデジタルプラットフォーム提供者の創意と工夫が十分に発揮されること」という表現が出てくる。
法律内で、国は必要最小限の規制のみ行うと述べるケースは非常に珍しい。また、自主的に規制すると言っている点もひっかかる。この点、衆議院の審議において、法律の修正案が提出された。
修正案では、第3条の「のための取組を自主的かつ積極的に行うことを基本とし、国の関与その他の規制を必要最小限のものとすることによりデジタルプラットフォーム提供者の創意と工夫が十分に発揮される」という文言が「について責任を果たすことを基本とし、国の適切な関与その他の規制を行う」と修正された。その他にも、特定デジタルプラットフォーム提供者の遵守事項の項目が追加され、特定デジタルプラットフォーマーの禁止行為が列挙された。
原案に比べ、国によるデジタルプラットフォーマーへの規制という本来の目的が強調されるようになったといえる。修正された法案は、2020年5月27日、全会一致で参院本会議において可決となった。
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@westman
2020/08/07
デジタルプラットフォーム新法の実態は「プラットフォーマー振興法」だ https://diamond.jp/articles/-/235007 ともあるように、目的がよくわからない法案との印象。
@westman
2020/08/07
デジタルプラットフォーム新法の実態は「プラットフォーマー振興法」だ https://diamond.jp/articles/-/235007 ともあるように、目的がよくわからない法案との印象。
議案件名 : | 特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律案 |
提出国会回次 : | 201 |
議案番号 : | 23 |
議案種類 : | 閣法 |
提出者 : | 内閣 |
提出日 : | 2020年2月18日 |
公布日 : | |
法律番号 : |