2016年の東京都知事選において小池百合子氏が提示した公約のなかに「満員電車ゼロ」があったことは記憶に新しいだろう。残念ながらこの公約が成し遂げられることはなかったが、いまだに都心に住む人にとって満員電車は悩みの種であり続けている。
2016年に大手市場調査メディアのマクロミルが満員電車に関するアンケートを採ったところ2000人中、95%の人が満員電車が生活のストレスになっていると答えている。
昨今の新型コロナウイルス流行にともなっていわゆるテレワークが「新しい生活様式」として推進され、煩わしい満員電車から解放された方も多いのではないだろうか。
浜田議員はこの「新しい生活様式」を踏まえた上で、テレワークのみでは完結しない仕事が少なからず存在する日本社会において、満員電車をなくしていくことは今後も大きな課題であるとしている。
具体案として浜田議員が提案するのが「ダイナミック・プライシング」である。これは日本語でいうところの「価格変動制」もしくは「変動料金制」だ。
聞き覚えがないかもしれないが、実は私たちの生活とかなり密接に関わりがある仕組みである。簡潔に説明をすると、需要(顧客)が多いときには価格設定を上げて需要が少ないときには下げる、そうしたシステムである。
観光地のホテルや旅館を例にとればわかりやすいが、シーズン中は代金が高くそうではない時期に安く利用できるのもこの「ダイナミック・プライシング」のためだ。
満員電車の解消のためにもこの「ダイナミック・プライシング」を応用できないかというのが浜田議員の考えだ。
実施の方法はいたってシンプルで大勢の通勤・通学客が殺到する朝と夕方の電車賃を高くするのみである。
質問:時間帯によって料金を高くすることで、交通費を抑えたい企業などが増える。そうすれば結果的にテレワークの推進や分散通勤・分散通学につながっていくと考えられるが。
答弁:「ダイナミック・プライシングの導入」の具体的に意味するところが明らかではないため、政府としては答弁を控える。
質問:政府として満員電車の解消のための具体的政策などはあるのか。
答弁:鉄道の混雑緩和のため、鉄道事業者による輸送力の増強や、鉄道事業者等と連携した時差通勤等の推進を図ってきたところであり、今後も鉄道の混雑緩和に向けたこれらの取組を進めていく。
このように、政府答弁は事実上のゼロ回答である。「ダイナミック・プライシング」自体は有効なアイデアであると思われるが、行政側では具体的な検討には至っていないのだろうか。
「ダイナミック・プライシング」であるが近年の商業分野ではAI(人工知能)の導入も行われている。過去の実績などのビッグデータをAIが分析し学習を繰り返して集客を予想し、最適価格を導く指標とするものだ。
そうしたAIによる「ダイナミック・プライシング」を電車運賃の決定に導入する場合の手続きについても浜田議員は質問している。
質問:通常、電車の運賃を変更する際には、鉄道事業法施行規則33条に基づいて国土交通省に「運賃設定届出書」を提出することになっている。 そこでビッグデータを元にして発車の時間ごとに運賃を決めるとしても、全てのデータを紙に印刷することは非現実と考える。その場合はハードディスクなどにデータを添付したり、別紙で示し届出書とともに提出すれば事足りるのか。それとも何らかの別の方法が求められるか。 また、そうした届出は「ダイナミック・プライシング」の導入開始時のみでよいのか、毎日必要なものなのか。
答弁:鉄道事業法第16条第3項の規定に基づく届出については、鉄道事業法施行規則第33条の規定に則り鉄道事業者が設定し、または変更しようとする運賃、その適用方法等を記載した届出書を、その適用前に提出することになっている。お尋ねについては「AIによるダイナミック・プライシング導入」の具体的内容が明らかではないため、お答えすることは困難である。
「ダイナミック・プライシング」の導入に際する制度上の障害として、「運賃設定届出書」が挙げられる。なんとも味気の無い答弁であるが、「ダイナミック・プライシング」を実際に導入しようとする場合は、このような行政手続きにも柔軟性が求められるだろう。
残念ながら今回の答弁では具体的な回答は得られなかった。事例は複雑ではあるが理論上では「ダイナミック・プライシング」の導入は十分に満員電車問題の解決策になりうるだろう。決して非現実的な案ではない。
「ダイナミック・プライシング」は「3密」回避にも有効であるとされ、実際に飲食業界などではピークタイムの需要をコントロールし、分散させることで効率的に営業する企業が少なからずあるという。今後も幅広い業界で応用されていく可能性は高い。
緊急事態宣言も解除され、徐々に街にも人の活気が戻りつつある。満員電車もぜひ解決して欲しい問題だがそれは氷山の一角に過ぎず、今は私たち自身が生活の仕方を見直すことを求められているのかもしれない。
つまりそれは根本的な首都一極型の社会を変えることではないだろうか。在宅勤務を恒久化とする企業が増えれば首都圏に住む必要がない人も増え、満員電車も解消し交通費も削減されるはずである。
そのためにまずは政府や大企業が主導して「東京に住まない」というライフスタイルを推進し、東京に住まざるを得ないという選択肢を減らしていくことだ。そうすれば多くの人が追随していくことだろう。
@関谷れいこ
2023/01/03
@m_kmtm@0101
2021/03/29
ダイナミックプラッシングにより、交通費を抑えたい企業がテレワークや時差出勤を実施するのでは?というのは面白い所をついたなと思う。 今までテレワークに踏み切らなかった企業も、コロナ禍で実施せざるを得なくなり、やってみたら意外と効率が良くなったという企業も増えた。 これを機に、満員電車解消に踏み切るのはとても良いタイミングだと思う。
@ケンタ
2020/11/18
抜本的な改革案を。
@kimuu
2020/10/16
学生への割引制度があれば、とてもいい解決方法に感じます。キャッシュレスが進んだ今なら、価格変動対応もスムーズなんじゃないでしょうか。
@westman
2020/10/16
基本的には民間にお任せのスタンスという事で、答弁がスカスカなのでしょうか。監督官庁としての関わりは大きいのだから、行政としての考えをビシッと示してもらいたいものだ。時間に正確なのはいいが、逆に運用事業者に過度なストレスを与えている現実もあるので。。
質問主意書名 : | 満員電車をなくすためのダイナミック・プライシングの実施に関する質問主意書 |
提出先 : | 参議院 |
提出国会回次 : | 201 |
提出番号 : | 146 |
提出日 : | 2020年6月11日 |
転送日 : | 2020年6月17日 |
答弁書受領日 : | 2020年6月23日 |