厳罰化が進む少年法に賛成ですか? これまでの改正と新たな改正案を解説

少年法等の一部を改正する法律案

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提出者 :内閣

2021年2月19日に閣議決定された「少年法改正案」。政府は今国会での成立を目指しています。

本法案は、2017年から始まった法制審議会における議論を経た上でまとまりました。同審議会では当初、民法における成人年齢が18歳に引き下げられること(2022年4月施行)などから、18歳以上は少年法の対象から除外する動きもありました。しかし、18、19歳については「特定少年」として、17歳未満とは異なる扱いとする形で法案がまとまっています。

本改正案によると、18、19歳の「特定少年」は、家庭裁判所から検察官に逆送致され、刑事裁判を受ける事件の対象が広くなります。さらに、起訴された後は実名報道が可能になると規定されています。

今回は、本改正案の内容、過去数回の改正の経緯、そして改正案についての反対意見などをわかりやすく解説します。


本改正案のポイント

改正案では、少年法の適用年齢を現行の20歳未満のまま維持しています。一方、18、19歳については「特定少年」という位置づけで、現在の少年法での扱いとは異なる扱いをすると規定しました。

改正案のポイントは、次の表のとおりです。

       
現行法 改正案
適用年齢 20歳未満 20歳未満
ただし18、19歳は「特定少年」
家庭裁判所へ送致 罪を犯した少年の全ての事件
ぐ犯(犯罪を犯す恐れがある)を含む
罪を犯した少年の全ての事件
特定少年は、ぐ犯を含まない
家庭裁判所から検察官へ逆送致
(=刑事裁判を受ける)
16歳以上の少年が故意の犯罪で死亡させた事件
(殺人・傷害致死など)
特定少年は左記事件に加え、法定刑の下限が懲役・禁固1年以上の事件
(強盗・強制性交・放火など)
処分で考慮する事情
(改正案に新設)
特定少年は、犯情の軽重を考慮
報道規制 実名報道は禁止 特定少年は起訴後、実名報道可能

なお、施行の5年後に、施行状況・社会情勢・国民の意識の変化等を踏まえて、特定少年に関する手続等について見直すこととされています。


これまでの少年法改正の流れ

少年法は1949年の施行後、長く改正されていませんでしたが、2000年以降、何度か改正されてきました。

1996年、神戸で発生した連続児童殺傷事件の犯人が14歳の中学生だったことを端緒として行われたのが、2000年の改正です。

この改正では、刑事処分に付すことができる年齢が、それまでの16歳から14歳に引き下げられました。それとともに、16歳以上の少年が、故意の犯罪行為(殺人、傷害致死等)で被害者を死亡させた場合、原則的には、家庭裁判所から検察官へ送致し、刑事裁判を受けることになったのです。併せて、被害者の申出を受けて意見を聴取するなど被害者に配慮する制度も導入されました。

その後、2003年に長崎で児童誘拐殺人事件(中学1年生が4歳の男児を殺害)、2004年に佐世保で小学6年生の同級生殺人事件が発生しました。これらの低年齢の児童の行為をきっかけに行われたのが、2007年の改正です。

この改正では、少年院送致が可能となる年齢が、それまで14歳以上だったのを、おおむね12歳以上としました。加えて、14歳未満の少年に関する警察官による調査手続きの整備や、国選付添人制度の創設を行っています。(付添人は、刑事裁判における弁護人と類似したものです。)

そして、2008年には、重大事件の遺族等が少年審判を傍聴することができる制度の導入等の改正が行われ、2014年には、国選付添人制度対象事件の範囲拡大等の改正が行われました。


日弁連は少年法改正に否定的

今回の少年法改正を巡っては、さまざまな意見があります。日本弁護士連合会(以下、日弁連)の意見をみると、改正の問題点が浮き彫りになります。

日弁連は、次のように主張しています。

1. 18,19歳は起訴後、実名報道が可能となることについて

実名報道等がなされると、インターネット上に名前が残り、検索可能な状態が半永久的に続きます。

また、検察官送致となり刑事裁判を受ける場合においても、刑事裁判所での審理によっては、家庭裁判所に事件を移送し、あらためて家庭裁判所で審理することもあり得ます。そうした場合に、すでに実名報道がなされていれば、実名報道による不利益を解消することはできません。

2. 18,19歳には、ぐ犯が適用されなくなることについて

ぐ犯とは、将来罪を犯すおそれがあることです。少年法では、ぐ犯少年も審判の対象とされていますが、改正案では、18歳、19歳の少年がぐ犯状態にあっても、審判の対象とされなくなります。罪を犯していないものの、反社会集団に取り込まれ、罪を犯すおそれがある少年も存在します。

現在は、そんな状態であれば、少年審判で保護観察や少年院送致となることもあるわけですが、ぐ犯で少年審判を受けることがなくなれば、こうしたセーフティネット的なものがなくなります。

3. 18,19歳の少年に関して、「犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲」で処分等を行うとした点について

「犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲」で処分というのは、家庭裁判所においては、行為責任を超える処分はできないということを意味します。つまり、更生のためには少年院に収容するのが望ましい場合であっても、被害額が小さい場合などは、少年院に収容できないことになりかねません。

また、少年院への収容期間の上限は家庭裁判所が定めるため、少年院内での改善状況にかかわらず、定められた期間で少年院での教育を終えることになります。したがって、十分な教育効果をあげられないおそれがあります。


まとめ:改正によって少年院に収容される少年が減少? 再犯、再非行防止になるのか

今回の少年法改正案については、厳罰化として報道されている例が少なくありません。特定少年による強盗事件・強制性交事件等については、原則として刑事裁判を受け、刑事責任を果たすようになります。その意味では厳罰化といえるでしょう。

しかし、改正によって次のような事態が生じます。

①現行の少年法では少年院に収容されるような、ぐ犯状態の少年も、改正後、特定少年であれば、少年院に収容されなくなる、②家庭裁判所で処分を受ける場合、「犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲」での処分となるため、被害額が小さい場合などは、現行法であれば立ち直らせるために少年院に収容する場合でも、改正後は少年院に収容できない場合がある。

このように、教育的な働きかけを受ける少年の対象が縮小することから、本改正案は単に厳罰化とは言い切れないのかもしれません。

また、施設内で、監督、指導を受けられる少年が減ると、再犯や再非行率が上がってしまう可能性も否定できません。

国会審議では、こうした点も十分に議論してほしいところです。みなさんは、本法案についてどう考えますか?

最新の賛成コメント

@TONOさん3号

2021/03/05

賛成です。日本の犯罪に対する罰は更生に重きを置いています。 そもそも凶悪犯罪を犯した人をお金をかけて更生させる必要があるのか?と思います。悪いことをしたら罰を受けるのだよという単純なことでよいのでは?例えそれが未成年だとしてもです。 情状酌量は裁判できちんと判断すればよい。 実名報道の件、ネットに名前が残って云々という話は既に犯罪を犯していない人でもさらされている現状。報道しないことで魔女狩りのようなことも起こりえます。そのことからも実名報道した方が別の罪を誘発しないのでは?

最新の反対コメント

@もも

2021/05/05

少年達への指導の機会が減るのはよくないと思うので、反対します。ぐ犯が適用されなくなるというのは意図がよく分からないです。起訴後に実名報道が可能となることについては、犯罪の抑止力になるので賛成ですが…。厳罰化はしつつ、教育・更生にも重きを置いてほしいと思います。

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@もも

2021/05/05

少年達への指導の機会が減るのはよくないと思うので、反対します。ぐ犯が適用されなくなるというのは意図がよく分からないです。起訴後に実名報道が可能となることについては、犯罪の抑止力になるので賛成ですが…。厳罰化はしつつ、教育・更生にも重きを置いてほしいと思います。

@だるばーど

2021/04/20

家庭裁判所で扱われる事件の5割もが18歳、19歳によるものだそうです。その年代を「特定少年」とみなすことで、更生や支援の機会を奪ってしまってもいいのか疑問です。少年犯罪自体も減少しているのに。

@restog

2021/03/23

特定少年という言葉では、今までとあまり変わらない気がする。成人年齢を18歳以上とするならば、受ける刑罰は18歳以上であれば同等であるべきだと思う。

@なんたん

2021/03/19

特定少年とか曖昧な区分を作らずに18歳からでいいと思います。少年院に行かなくていいとか、今より甘くなるのは良くない。犯罪の低年齢化が進む中、軽犯罪のうちにしっかり更生するプログラムを望みます。

@TONOさん3号

2021/03/05

賛成です。日本の犯罪に対する罰は更生に重きを置いています。 そもそも凶悪犯罪を犯した人をお金をかけて更生させる必要があるのか?と思います。悪いことをしたら罰を受けるのだよという単純なことでよいのでは?例えそれが未成年だとしてもです。 情状酌量は裁判できちんと判断すればよい。 実名報道の件、ネットに名前が残って云々という話は既に犯罪を犯していない人でもさらされている現状。報道しないことで魔女狩りのようなことも起こりえます。そのことからも実名報道した方が別の罪を誘発しないのでは?

@ichi369

2021/03/04

厳罰化や、実名報道による社会的制裁は、少年犯罪の抑止につながるかもしれないが、犯罪を犯した者を少年院に収容せず、教育しないことは更生の機会を奪い、再犯の可能性が高くなると思うので、単純に賛成はできない。制度変更による効果を、もっと明確にしてもらいたい。

 詳細情報

議案件名 :少年法等の一部を改正する法律案 
提出国会回次 :204
議案番号 :35
議案種類 :閣法
提出者 : 内閣
提出日 :2021年2月19日
公布日 :
法律番号 :