地域格差の大きい結婚支援事業~ 補助金上限は増額されても支援対象の自治体は全国の16.5%にとどまる

政府による結婚新生活支援事業に関する質問主意書

提出議員 : 古本 伸一郎

少子高齢化が進む日本では、出生率の向上が大きな政治課題。諸外国とは違い、日本での婚姻外の出産には、社会保障や社会通念上ハードルが高い。 その為、日本で出生率を向上させる為には、まずは婚姻数を増やす必要がある。

菅内閣は2021年度概算要求で、少子化対策の一環として「結婚新生活支援事業」の拡充を盛り込んだ。
具体的には次の3点が拡充される。

  • 補助上限額 : 30万円から60万円に
  • 対象年齢 : 夫婦ともに34歳以下から39歳以下に
  • 所得制限 : 世帯所得340万円から400万円に

しかし、このニュースを聞いて喜んだ若いカップルの大多数は「ぬか喜び」に終わることになる。それは、この補助金は「結婚新生活支援事業」を行なっている市区町村の住民だけが対象で、該当する市区町村は全国の16.5%に過ぎないからだ。

古本伸一郎議員(無所属)は2020年11月の臨時国会で、上記の問題を含めてこの事業および今回の拡充策について質問した。質問の要点と政府の答弁を見てみよう。

結婚新生活支援を地方自治体ではなく国の事業にするべきでは?

「結婚新生活支援事業」は、地方自治体が「結婚新生活支援」を「実施するかどうか」と「上限額をいくらにするか」を地方自治体が独自に決め、国は給付金の1/2を負担することになっている。
しかし上記のように、地方自治体の内そのような事業を実施しているのは289市町村い過ぎず、全体の16.5%にとどまっている。

質問
結婚新生活支援の内容に、新婚世帯の居住する市町村による格差が生じている現状を抜本的に改革するには、結婚新生活支援を国の事業にして全額を国費で賄うことも一案ではないのか。
そのような検討を政府は行っているのか。もし国による事業化が困難だとするならばそれは何故か。

答弁
実効性のある少子化対策を進めるためは、住民に身近な存在である地方公共団体が、地域の実情に応じて取り組み、国はその取組を支援することが、「少子化社会対策大綱(2020年5月29日に閣議決定)」で決まっている。
ご指摘の「結婚新生活支援を国の事業として全額国費で行うこと」は、現時点では検討していない。

国が地方自治体に交付金を与える「結婚新生活支援事業」は2016年に開始され、初年度は130市町村が利用した。早々とこの事業を利用したのは、元々過疎化対策などで若い世代の定着や誘致に予算を使っていた自治体が多かった。
現在でも東京都では1つの自治体もこの事業を利用していない。

このような経緯をふまえると、「国の事業として全額を国か負担する」という「抜本的な改革」を性急に期待するのは難しいだろう。
しかし、いったん国の制度として誕生してみると、住む自治体による支援の格差に「対象外」の若い世代が不公平感を抱くのも当然である。

各自治体が「地域の実情に応じて」取り組むとされているが、その実情とはもっぱら財政的な余裕の有無のことではないかということも懸念される。政府は「現時点では検討していない」と答えたが、まだ認知度か低いこの事業が認知されるにしたがって、「不公平」の声も高まるだろう。


支援の対象者を広げるために、支援対象基準を夫婦合算の「世帯所得」ではなく「主たる生計者の所得」にするべきではないか

2021年度概算要求では支援の対象となる新婚世帯の所得制限が340万円から400万円に引き上げられた。しかし、古本議員は基準を夫婦合算の世帯所得に置くのではなく、主たる生計者の所得とするべきではないかとして、次のように質問した。

質問
夫婦合算の「世帯所得」では、支給対象が極めて狭まる可能性がある。より幅広く新婚世帯への支援を行うには、「主たる生計者の所得」を基準とすべきだと思うが、そうしなかった理由と今後の導入可否について、お尋ねする。

答弁
この事業は新婚世帯への支援として行うもので、その世帯を構成する夫婦の合計所得を要件とするのが、世帯の家計の状況を適切に把握する観点から合理的だと考えている。
ご指摘の「主たる生計者の所得」を要件とすることは、検討していない。

対象者を「主たる生計者の所得」に絞ることで、例えば妻によるパート収入などは支援判定額の対象外となるので、支給対象者が増加する訳だ。
本事業の目的が少子化対策なのであれば、支援対象が広くなるように制度設計するべきではないだろうか。


補助金の支給ではなく所得減税による支援の方が有効なのでは?

古本議員は、国が結婚支援をするには補助金を支給するという方法以外に、所得減税も有効ではないかと最後に質問をしている。

これに対する答弁は以下の通りだが、たしかに減税での支援なら地域格差が生じることはない。マイホームを購入したときに10年間の住宅減税があるのだから、結婚したときに例えば5年間の所得減税があったとしても悪い理由はないのではないか。

答弁
政府は、現在祖父母や両親が、子や孫の結婚・出産資金を援助する際に、贈与税の非課税措置を講じているが、「新婚世帯への所得減税」は現時点では検討していない。


まとめ:やはり地域格差は欠点では?

菅内閣は少子化対策として不妊治療の保険適用拡大も目玉政策として掲げている。妊娠の前に結婚があるのが一般的であれば、新婚生活援助は重要な少子化対策だ。

しかし、自治体が主体となりそれを国が援助するという現在の「結婚新生活支援事業」は、地域格差という大きな欠点がある。この欠点を改善しない限り大きな効果は望めないだろう。

@かるた

2020/12/18

@kimuu

2020/12/15

結婚を支援する補助金は地域で格差があっていいのではないでしょうか。補助金がなくても、子育て支援が手薄でも人が流入する自治体には必要ないのでは? 婚姻の補助金という名目ですけど、実質は過疎化対策ですよね?

@もも

2020/12/13

自分は結婚支援の補助金が出ないところで結婚したので、補助金が出るところがうらやましかったのを思い出しました。田舎の方が補助金が多く、都会は少ないというざっくりしたイメージを持っていましたが、補助金が出る市区町村がこんなに少ないのは知りませんでした。全国どこでも補助金が出るようにした上で、さらに力を入れたい自治体が任意で増額、などではダメなのでしょうか...

@ichi369

2020/12/13

全国一律の制度にすれば確かに分かりやすいが、逆に、対象者の設定を各自治体が自由に決められるようにして、子育て世帯の誘致で競争するようになれば、地方への移住が促進するかもしれない。ふるさと納税のように、多くの世帯が喜んで利用する制度にして欲しい。

 詳細情報

質問主意書名 :政府による結婚新生活支援事業に関する質問主意書 
提出先 :衆議院
提出国会回次 :203
提出番号 :13
提出日 :2020年11月10日
転送日 :2020年11月16日
答弁書受領日 :2020年11月20日

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