日本の公的金融機関である国際協力銀行(JBIC)は、ベトナムでのバンフォン第一石炭火力発電所(以下、本発電所)への支援を決定した。本発電所は、原則最新鋭(超々臨界圧)の導入を支援するとの政府方針に反し、低効率の超臨界圧技術を用いている。そのために大気汚染への懸念があり、気候変動対策(パリ協定)、O…
日本の公的金融機関である国際協力銀行(JBIC)は、ベトナムでのバンフォン第一石炭火力発電所(以下、本発電所)への支援を決定した。本発電所は、原則最新鋭(超々臨界圧)の導入を支援するとの政府方針に反し、低効率の超臨界圧技術を用いている。そのために大気汚染への懸念があり、気候変動対策(パリ協定)、OECDルール※などの国際ルールからの逸脱が問題視されている。
OECDルールは500メガワット超の石炭火力発電所について、公的支援の対象を超々臨界圧の設備もしくは温室効果ガス排出量が750g-CO2/kWh未満の設備に限っている。本発電所はどちらにも当てはまらず、JBICは事業支援を見直すべきではないか。
また、OECDルールには2017年1月1日より前に環境影響評価と申請手続きを行った場合に例外とする経過措置がある。JBICは、本発電所の環境社会アセスメント(以下、ESIA)は2011年に完了しベトナム当局の承認を得たことから、経過措置の対象になる旨の説明をしている。しかしESIAは2015年、2017年11月と2度改定されている。改定にて追加された情報は開示されるべきではないか。
そもそも融資の判断は2017年11月のESIAをもとに行うべきではないか。
本発電所に対してはベトナムで住民訴訟がおきている。地域住民合意のない現状では「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」に違反することになるが、政府は訴訟について把握をしているか。また住民との合意がなされるまで支援をするべきではないのではないか。
国際環境NGOが英フィナンシャル・タイムズに意見広告を掲載しJBICに本発電所への融資停止を求めていることを政府は認識しているか。同様に、国連気候変動枠組条約の前事務局長(クリスティアナ・フィゲレス氏)が、日本の海外での超臨界圧発電所支援について、日本の国際的評価を傷つける旨の警告を会見で行ったことも認識しているか。つまるところ、日本は海外の石炭火力発電事業への公的投融資を止めるべきではないか。
※ OECDルール:経済協力開発機構(OECD)公的輸出信用アレンジメント付属書の石炭火力発電セクター了解
海外の石炭火力発電所への公的支援については、エネルギー基本計画(2018年7月閣議決定)の中で、OECDルールを踏まえること、および原則として超々臨界圧以上の発電設備に対し行うとしているが、JBICによる融資は、OECDルールの施行前から検討されていた案件に対するものであり、同ルールの規定には拘束されない。
2019年12月のESIAの更新では、温排水の海洋への影響の分析手法に関し説明の追記等が行われた。また、2011年に承認されたESIAの有効性が、ESIAの更新後にも引き継がれていることはJBICがベトナム政府に確認している。
ベトナムでの住民訴訟については政府でも把握しているが、JBICにおいては、土地収用手続きおよび非自発的住民移動などの環境社会配慮が、ベトナムの関係法令およびガイドラインに沿ってなされていることを確認し、適切に融資を決定していると考えている。
ファイナンシャルタイムズへの国際NGOの意見広告は、2019年3月19日付けのものを指すのであれば政府も把握しているが、国連気候変動枠組条約の前事務局長については会見が特定されておらず、回答は困難である。
我が国による海外の石炭火力発電事業への公的支援については、エネルギー基本計画に示した方針(パリ協定を踏まえ、CO2排出削減に有効な選択肢を相手国に提案する。エネルギー安全保障・経済性観点より石炭をエネルギーとせざるを得ない国に限りOECDルールを踏まえ原則として超々臨界圧以上の設備の導入を支援するなど)に従って取り組むべきと考えている。
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質問主意書名 : | 国際協力銀行が融資を決定したベトナム・バンフォン第一石炭火力発電事業に係る国際ルール違反等に関する質問主意書 |
提出先 : | 参議院 |
提出国会回次 : | 198 |
提出番号 : | 48 |
提出日 : | 2019年4月26日 |
転送日 : | 2019年5月8日 |
答弁書受領日 : | 2019年5月14日 |