個人情報保護法改正2021の変更点は?提出前の法案を先取りチェック

新型コロナウィルスの猛威は、個人情報保護法の問題点も浮き彫りにしました。公開される感染者の情報が自治体によって異なったり、休校期間中のオンライン教育に学校によって差が出てしまうなども。日本のオンライン授業が進まなかった理由の1つに、各自治体ごとに個人情報の扱い方がバラバラだったということが挙げられます。

多くの自治体の条例が個人情報を含んだシステムを外部ネットワークに接続することを禁止しているため、ICT教育やGIGAスクールの障壁になってしまっているのです。便利なクラウドサービスもアプリも、ネットワークを禁止されてしまったら活用することなど無理な話です。

そこで、個人データを円滑に活用することを目的に、2021年に個人情報保護法の改正案が提出される予定です。まだ法案は提出されていませんが、大方の議論は済んでいます。

この記事では、個人情報保護法改正案2021の内容を、先取りでチェックしていきます。


2021年個人上保護法改正点のまとめ

まずは、この改正案で変更される点から確認していきましょう。「個人情報保護ルールの統一」「学術研究の適用」という2つが今回の改正ポイントになります。

民間・行政機関・独立行政法人の個人情報保護ルールの一元化

今まで個人情報保護に関するルールは、組織によって守るべき法律も管轄さえ異なっているのです。そのため、個人情報の要件や運用まで異なる状況が生じています。

対象 法律 管轄
民間 個人情報保護法 個人情報保護委員会
独立行政法人 独立行政法人等個人情報保護法 総務省
国の行政機関 行政機関個人情報保護法 総務省
地方自治体 各条例で規定 各自治体

今回の改正によって、国・地方公共団体・独立行政法人の個人情報保護規定が、全て国が定める内容に統一されます。運用や規制内容だけでなく、監督機関も国の個人情報保護委員会に一元化されるように変わるのです。

個人情報保護法改正2021年の改正ポイント

学術研究における個人情報を適用化

もう1つの改正ポイントは、大学の研究目的で取り扱う個人情報も対象となる点です。 大学研究については学問の自由の観点から、今まで個人情報保護法上、規制が義務化されていませんでした。改正によって、氏名や行動履歴等の情報を集める場合に目的の公表を義務付け、また違反には罰金措置も科されるようになります。

2020年の個人情報保護法改正と混同しないよう注意

2020年にも個人情報保護法は改正されているので、2020年の改正内容と混同しないように注意しましょう。

2020年の改正では新たに仮名加工情報と第三者提供に関して、新たな規定が設けられています。2020年の法改正の具体的な内容については本題からずれるため、「仮名加工情報」と「第三者提供(オプトアウト)」というキーワードを覚えておくといいですね。


なぜ変わる?改正の背景にある2000個問題

2021年個人情報保護法改正の背景には、2000個問題が存在します。 2000個問題とは自治体ごとに運営する個人情報保護条例が、都道府県・市区町村・特別区・広域連合を含めると2,000個もあるため、基準がバラバラで運用上支障が生じている状態を指します。基準がバラバラなので、これまで地域間連携がうまくいっていなかったわけです。

タイムリーなところでは、ある自治体では新型コロナウイルスにかかった人の情報が出てくるのに、他の自治体では情報が出てこないという現象が起きています。

個人情報保護法のルールがひとつにまとまれば、自治体間の情報格差の減少につながります。

マイナンバーカードの申請や活用においても、今回の個人情報保護法改正がキーポイントです。現状、マイナンバーカードの申請率が低いのは、個人情報漏洩やなりすましを心配する声も多いからでしょう。今回の改正により、個人情報保護規制のルールが国に一元化されれば管理もしやすくなり、国民のマイナンバーカードへの不安が和らぎ、カードの普及につながるかもしれません。


組織間や自治体間の連携手続きがスムーズでスピーディーに

個人情報保護に関するルールが統一化されることで、組織間の連携手続きがスムーズになります。イメージしやすい例を紹介すると、コロナ感染者の正確な数をカウントしやすくなると思われます。

一方、デメリットは管理体制が全て国に一元化されるので、細かな運用のズレを正すのに時間が生じるかもしれません。

他にも、パートナーシップ制度の個人情報に関する問題点も残っています。地方公共団体の中には、同性パートナーシップ証明制度を定めているところもあります。同姓パートナーシップ証明制度とは、同性カップルに対し、自治体が婚姻と同等の状態だと承認し、独自の証明書を発行する制度のことです。

同姓パートナーシップ証明制度は、国にはない仕組みです。このため、同性パートナーシップ制度で個人情報保護に関する規定を置く自治体があった場合、どのような対応をすべきか議論の的となっています。今のところは、個人情報保護の規定を独自に設定している場合は、そのルールは認める方向で話が進んでいます。

2021年の個人情報保護法改正案によって、医療や災害時、オンライン教育分野においてもデータの連携がしやすくなり、日本のデジタル化が進むかもしれません。菅政権が看板政策にしているデジタル庁創設も含め注目していきたいところです。

4 件のいいね    0 件のコメント

@だるばーど

2021/01/31

今回の改正でSocity5.0を推進する日本としては、あるべき方向に進んでいるように思います。しかし、記事を読んだ限りでは、手続きのビジョンが見えず、国による恣意的な運用を防ぐ手当があるのか心配になりました。

@もも

2021/01/30

個人情報保護法の改正には賛成です。自治体ごとにあれこれとバラバラに決められると、とてもややこしくて分かりにくいです。一つのまとまったルールを作ってもらえれば、引越しなどしたときにも戸惑わずに済むと思いますし、国規模で何かを行う時にも(それこそコロナ対策など)楽になると思います。

@TONOさん3号

2021/01/29

情報によっては自治体によってのばらつきはあってよいと思います。優先順位をつけてそろえて行くのも一つの方法であると思います。 ただ重要なことはやはり統一した方が良いですね。いまだに紙媒体を使っているのも気になります。個人情報の管理と保護は国と自治体の責務ですが脆弱なシステムでの運営は脱却してほしい。

@ichi369

2021/01/28

情報格差の是正のために必要なことだと思います。しかし、個人情報保護法は果たして本当に機能しているのか? という疑問は残ります。結局のところ、個人情報の悪用が減っている印象はあまりなく、逆に必要な情報を得るために複雑な手続きが必要だったり、今回の事例のようにオンライン教育の足かせになったりと、不便になっているだけのようにも思います。便利で安全なシステムを構築してもらいたいと思います。