政府は、新型コロナウィルス感染拡大・防止を目的に、布製マスク「アベノマスク」を全戸に対し2枚配布するという政策を行った。
配布開始後に不良品の混在に気づき、全世帯への配達完了に2ヵ月以上も要したことなど、対応の不手際を嘆く声も多い。 しかし、それ以上にマスク配布という政策内容について、「なんでマスクなの?」「税金の無駄遣い」との批判の声も大きい。
同政策に関しては、議員からも政府に対して、検証の必要性を訴える声が挙がっている。この要請に対し、政府がどのように答えたのか、みていくとしよう。
アベノマスクの日本全世帯への配布は466億円もの予算を投じて行われ、そこまで予算をかける意義があることなのかとの批判が相次いでいる。
マスクをつけたことでウィルスの吸引防止・飛沫防止の効果が確実にあるというならまだしも、現状、マスク着用の効果を示すエビデンスすら見つかっていない。
莫大な予算を投じて行った施策なのだから、政府は何らかの化学的計測を行った上で、実施を決定したと考えるのが自然である。もし何らかの化学的検証を行っているとしたら、その内容と計測結果を示してもらいたいと考えるのが普通だろう。小西議員も、マスクの効果を科学的に計測しているのかという点から追及している。
答弁:新型コロナウィルスへの効果については、特段の検証を行っていない。しかし、政府としては、マスク着用によって咳等で病原体を含んだ飛沫の飛散を防ぐことで、感染拡大防止には一定の効果を示すと考えている。
アベノマスクには「洗うと縮んでしまい再利用できない」「市販のマスクと比べて小さくて、顔の小さな人しか利用できない」など利用の不便さを指摘する声が多い。
まず、なぜ材質に布を利用したのかとの疑問が生じる。布製マスクは使い捨ての不織布製マスクに比べ分厚いが、マスクの厚さによって、ウィルスの侵入の容易性は変わってくるのだろうか。
そこで、議員は、サージカルマスクと比較した布製マスクの有用性について次のように質問している。
布製マスクの有効性を図るために、市販のサージカルマスクと比較して、科学的計測は行っているのか。化学的計測を行っているのであれば、その内容と計測結果を示してもらいたい。
また、政府はアベノマスクを、高齢者施設や学校に配布していると聞いている。これは、マスクへの確たる効果があると判断するからこそ、出来うる行動である。政府は、サージカルマスクと比較したマスク着用の効果を化学的に計測し、その結果を高齢者施設や児童生徒を含む一般国民に向け、公表する必要があるのではないか。
政府は洗濯しても品質上の問題はないと述べているが、洗濯により縮んでしまい使いづらくなるとの指摘を国民から受けている。本当に洗濯による品質の低下は見られないのか、洗濯して再利用する場合と比較した科学的計測は取っているのだろうか。化学的計測があるのであれば、その内容と計測結果を示してもらいたい。
答弁:政府が配布した布製マスクに関しては、市販のサージカルマスクや洗濯後に再利用する場合と比較した場合に関する、特段の調査は行っていない。
聖路加国際大学の環境疫学を扱う大西一成准教授が、布マスクと顔面のすき間から出入りする空気中の粒子を調べたところ、漏れ率が100%だったという検証結果が出ている。一方、不織布マスクでは悪い着け方をすると100%だったが、正しい着け方をすると50%になったとの調査結果だった。
この調査結果を考慮すると、布製マスクは不織布マスクと比べ、ウィルスの防御・飛散防止への効果が低いとも考えられる。小西議員は、調査結果に対する政府の見解を問いただした。
答弁:ご指摘の報道に関しては把握しているが、検証の具体的内容については把握していない。このため、質問に対する満足いく回答はできない。
アベノマスクは、今や総理以外ほとんど着用していない状況である。サイズの小ささ、材質や構造、洗濯後の形質変化等の理由から、国民からは理解を得られていないと思えるが、この点、政府としてはどう考えているのかと議員は追及した。
答弁:布製マスクは、咳等によりウィルスを含んだ飛沫が飛散したことによる感染拡大に対しては、一定の効果を示すと考えている。米国疾病予防管理センターも布製の顔面カバーをつけることを推奨していると承知している。引き続き、厚生労働省のHP等を通じて、布マスクの効果及び配布の目的について、国民に広く周知していきたいと考えている。
小西議員によるアベノマスクの質問に対する回答で納得できるものは何一つない。巨額の税金を投入する政策にも関わらず、効果を事前に検証することもなく、必要な議論をすることもなく、発注先の決定方法も不透明なままである。
その後、介護施設を中心に配布予定だった8000枚の追加分について批判が殺到し、現場からもありがた迷惑がられる始末。そのため、配布を希望制にして余剰分は国で備蓄することとなった。
アベノマスクに持続化給付金事業、新型コロナウィルスの禍中に次々と不透明なまま推し進められた事業について、今後も国会の場で引き続き追及してくれることを期待したい。
<参考リンク>
@TONOさん3号
2020/12/20
スピードが付いていかなかったね。当時不足している所にまず大量投入していればよかったのかなと思う。政策自体はよかったけど効果的に出来なかったのが良くなかったね。マスクの効果自体がベストでないので今更検証してどうするの?って思う。
@restog
2020/12/02
確かにアベノマスクを配布したことに対する疑問は払しょくできないし、絶対的な効果のないものに税金を投じたことに対する不信感も理解できる。しかし、過去に起きたことに対して税金を使って議論する時間があるなら、日本の将来に対して直近で話し合わなければならない問題が他にもたくさんあるということも視野に入れるべきだと思う。
質問主意書名 : | いわゆるアベノマスクの性能の科学的検証の必要性等に関する質問主意書 |
提出先 : | 参議院 |
提出国会回次 : | 201 |
提出番号 : | 189 |
提出日 : | 2020年6月17日 |
転送日 : | 2020年6月17日 |
答弁書受領日 : | 2020年6月30日 |