ドコモ口座やPayPay等の電子決済サービスを使っての不正出金被害に関する質問主意書

出典:編集部作成

提出議員 : 早稲田 夕季

電子決済サービスの不正使用によって、所有者の知らぬ間に口座から預金が引き出される事件が発生した。ゆうちょ銀行など全国の銀行口座から株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)の「ドコモ口座」をはじめとした電子決済サービスを使い、不正な預金引き出しが行われた。

今回の事件で非常に深刻なのは、電子決済サービスの利用者が被害に遭っただけでなく、セキュリティの脆弱性を懸念し利用を避けてきた人やシステムについていけず使用せずにいた高齢者も被害を受けた点にある。

金融庁は銀行および資金移動業者に対して、総務省は電気通信事業者に対して、それぞれ監督責任があるのではないか。政府は今後どのような対策を講じるべきだろうか。


なぜこのような事件が起きたのか

今回の事件では、悪用された電子決済サービスを利用していない人達まで被害に遭った。事件が報道され問題が大きくなるまで、銀行側とドコモ側の責任の押し付け合いがあった中で事件の実態把握ができず、被害は拡大し続けた。

早稲田議員は、「金融庁と総務省が早々に連携をとって既存の法制度の抜け穴をあぶり出して問題解決に当たるべきだ」と、政府の実態の把握状況と対策について質問した。

これに対する答弁内容は、「銀行と資金移動業者が連携し、被害の補償および被害拡大と再発の防止を行うことが第一である」とし、実態の把握に関しては「資金移動業者に事態の確認と発生原因の分析を求めている状態のため回答が難しい」との回答だった。


被害者への補償について

被害者に対する補償は、銀行とドコモが連携し全額負担する意向を示しているが、一連の被害の補償は本来どこがすべきなのかを早稲田議員は政府に確認した。

政府はこれに関し、被害の補償に関しては適切に指導していくとした。その負担については、個別事案および関連事業者間の契約の内容によりそれぞれ異なるとの回答だった。


本人確認強化の重要性

総務省によると、不正出金の標的となったのは、ドコモの携帯電話を所持していない人達の「ドコモ口座」であった。「ドコモ口座」は2019年9月から新規顧客開拓サービスに伴いメールアドレスの確認のみで開設可能となった。

また、資金移動業における本人確認は、犯罪収益移転防止法に基づく確認に加え、特例として「銀行依拠」による確認が認められている。被害に遭った銀行口座は、「Web口座振替受付サービス」という方法で、ドコモ口座やメルペイ、楽天Edyなど電子決済サービスと口座接続している。この方法では、キャッシュカードの暗証番号や利用者の生年月日の入力のみで本人確認が出来てしまう。一方、「ワンタイムパスワード」などの二要素認証や物理的な通帳記帳を必須とした銀行は被害を免れた。

早稲田議員は「本人確認の強化が必須だ」と指摘し、以下の点に関して政府の見解を求めた。

  • 口座開設は、犯罪収益移転防止法に基づく原則的な本人確認を必至とする法令改正を検討すべき
  • 特例である「銀行依拠」が今回の事件の原因となっているのではないか
  • 銀行口座と外部電子決済サービスを接続する際の本人確認は、二要素認証か物理的な通帳記帳を必須とし、資金の少ない地銀なども対応できるよう導入コストは電子決済サービス事業者が負担するべきではないか

これらの質問に対して政府は、資金移動業者の分析結果を待ち総務省と金融庁が連携して対応を検討するとしたのみで、具体的な回答は述べていない。


現在、電子決済サービスはあらゆるところで利用されており、必要に迫られて使用を開始する人も少なくないのではないだろうか。今回の事件では「ドコモ口座」を開設していないにも関わらず不正出金の被害に遭った被害者もおり、ネット犯罪の不気味さが顕著となった。

犯人は被害に遭った人物に「なりすます」ことにより犯行を行った。ネットを介した現金のやり取りでは、本人確認がセキュリティの要であることは言うまでもない。デジタル化されつつある様々なサービスが、国民にとって脅威ではなく便利で安全なサービスとして発展できるよう、政府にはこれまで以上にセキュリティ強化を第一に充分な政策を行っていってほしい。


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 詳細情報

質問主意書名 :ドコモ口座やPayPay等の電子決済サービスを使っての不正出金被害に関する質問主意書 
提出先 :衆議院
提出国会回次 :202
提出番号 :19
提出日 :2020年9月16日
転送日 :2020年9月18日
答弁書受領日 :2020年10月2日

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