行政監視院法案

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提出議員 :辻元 清美

「行政監視院」の設置を求める法案が、野党から提出されています。 この法律は、「行政監視院」という組織を国会内に設置し、行政機関の監視を強化しようというものです。国会=立法府が行政府を十分に監視できていない、との問題意識が背景にあるのでしょう。このような法案は、行政立法(閣法)や与党案としての議員立…

「行政監視院」の設置を求める法案が、野党から提出されています。 この法律は、「行政監視院」という組織を国会内に設置し、行政機関の監視を強化しようというものです。国会=立法府が行政府を十分に監視できていない、との問題意識が背景にあるのでしょう。このような法案は、行政立法(閣法)や与党案としての議員立法というのも考えづらく、野党案らしい法案と言えます。

立法府と行政府

本来国会には、立法の機能以外にも、行政府を監視するという重要な役割があります。しかし、大統領制により政府=行政府と国会がある程度の距離感を保っているアメリカとは異なり、総理大臣が国会で指名されることからもわかるように、政府と国会の距離が近い日本では、国会による行政府の監視は現実的にはうまく機能しないことが多いと言われています。 形骸化が指摘されている国政調査権もその例の一つと言えますが、その様な状況の中で提出された本法律案の概要をまとめてみました。

行政監視院とはどのようなものか

行政監視院とは国会に設置され、行政機関や地方公共団体に対し、資料の提出と参考人の出頭を要求できる組織です。この辺りの機能だけを見ても、国政調査権とはそれほど違いがないように見えます。では、行政監視院のオリジナリティはどこにあるのでしょうか。

独立した常設組織である

行政監視院は国会に常時設置されます。また行政監視院の委員は衆議院議員の任期よりも長い、6年間の身分が保証され、議会での議決以外では罷免されることがない独立した組織です。これにより、政争や時々の勢力からは距離を置き独立性を確保できそうです。

国会議員が行政監視院を簡単に活用できる

行政監視院が、行政機関の業務に対して監視、具体的には資料の提出や参考人の出頭要求などを直接行うのではなく、衆議院および参議院に設置されている委員会の要求に応じて調査をすることになっています。 また、面白いのは、一定数の議員が集まることで、そのような調査を行政監視院に要求することができる点でしょう。要求に必要な議員数は、衆議院で20人以上、参議院では10人以上となっており、かなり少ない人数になっていることがわ分かります。議会は勿論ですが、委員会での過半数をとることも、野党にとっては大変ですので、この点は国政調査権に比べて遥かにハードルが低い制度だということが分かります。逆に政権にとっては、嫌な制度ということになるかも知れません。

形骸化するリスクはないのか

次に、行政監視院の要求にどの程度の強制力があるのかを見ていきましょう。ある程度の強制力が伴わないと、形骸化してしまいますし、むやみに権限を持たせても、国政調査権で論点になる、「三権分立の侵害」との批判を浴びることになるでしょう。

資料の提出要求

まず、資料の提出要求についてですが、行政機関や地方公共団体は、要求を受けてから20日以内に資料を提出しなければならないとされています。このような資料の提出要求に対して、行政側は「職務上の秘密に関すること」を理由に提出を拒むことが考えられますが、その場合には、行政監視院は、行政機関もしくは地方公共団体の監督庁に承認を得ることになります。

そしてその承認が得られなかった場合には、国会の議長に対して、資料の提出が国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の内閣の声明を要求することになります。もし内閣が声明を出さない場合は、資料の提出義務が生じるとの規定があります。

つまり、行政監視院の資料提出要求を行政機関や地方公共団体は拒むことができるのですが、その拒否の意思は内閣の声明という形で示されることになるようです。 なお、提出された資料がスミ塗りであったり、処分されていた場合はどうなるのかなど、運用面では色々な課題がありそうですので、この種の問題は一筋縄ではいかないことが予感されます。

参考人の出頭

次に参考人の出頭についてです。行政監視院は、行政機関または遅行公共団体の職員に対して参考人としての出頭を求めることができます。そして職員が出頭を拒むときは、その職員の任命権者に対して、職員を懲戒処分とすることを要求できるとしています。その要求は内閣を経由して行うとありますし、資料の提出の場合とは異なり、特に強制性を示す条文はなく、また国政調査権では問題になる「虚偽の証言を行った場合」についても、例えば偽証罪になるなどの規定もない事から、参考人の出頭についてはそれほど主眼が置かれていないのかもしれません。

以上駆け足ですが、行政監視院の設置法案について簡単に見てきました。野党案ということもあるので、実際に成立する可能性は低いとは思いますが、野党案だからこそ野党が日ごろ感じている、不正問題に「切り込めない歯がゆさ」が見え隠れする法案です。 また、形骸化が指摘されている国政調査権を補完するものとしてみれば、現在の国政調査権が抱える問題を理解する素材にもなりそうです。

最新の賛成コメント

@なんたん

2021/06/07

行政の管理は今は弱く、結局人数の多い与党のいいようななっている気がしてました。実現になるのは難しそうですが、必要性を引き続き訴えて欲しいです。

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@なんたん

2021/06/07

行政の管理は今は弱く、結局人数の多い与党のいいようななっている気がしてました。実現になるのは難しそうですが、必要性を引き続き訴えて欲しいです。

@westman

2020/07/09

自分は行政の監視は必要だと思うので賛成です。国会は国権の最高機関なので、ある程度の権限があってしかるべきではないか。

 詳細情報

議案件名 :行政監視院法案 
提出国会回次 :198
議案番号 :31
議案種類 :衆法
提出議員 : 辻元 清美
提出日 :2019年6月20日
公布日 :
法律番号 :