公益通報者保護法の一部改正案が201回国会で審議となり、可決された。改正の具体的な内容を見ていこう。
公益通報者保護法の一部改正案が201回国会で審議となり、可決された。改正の具体的な内容を見ていこう。
企業の不正や不祥事が相次いでいるため、内部通報制度の整備をはじめた企業は多い。しかし、現状、制度は形骸化しており、効果を挙げているとは言い難い。
具体的には、制度を利用して通報しようとしても揉み消されたり、報復が怖くて通報に踏み出せないといったケースが考えられる。
国民の利益の保護に資することを目的に、公益通報者の保護の強化をはかり、事業者が通報に対して適切な体制の整備および必要な処置を義務付けるために、今回法律の一部を改正する運びとなった。では、法改正のポイントを見ていくとしよう。
まず、保護される対象が拡大した。現行では「労働者」としか記載されていないが、改正後は、以下の者も保護されることになる。
また、通報の内容に関しても範囲が拡大した。現行は国民の生命・身体・財産といった利益を保護する法律に規定された、犯罪行為に該当するものでなければ保護される通報に値しない。つまり、刑事罰の対象となる行為しか保護対象とならないことになる。
改正案では、対象範囲に「法律に規定する過料の理由とされている事実」という文言が追加される。つまり、刑事罰だけでなく、過料を伴う行政罰に該当する行為も保護対象となるのだ。
さらに、通報に伴う損害賠償責任の免除を規定する条文が盛り込まれる。通報者は、通報することで企業の社会的評価を下落させたと認められる場合、企業側から訴えられ、損害賠償責任を負う可能性もあった。損害賠償責任が撤廃されたことで、通報者は報復に怯えることなく、通報が可能となる。
事業者に対し、内部通報への適切な体制を整備することを義務付ける。例えば、窓口設置や調査、是正措置等が考えられる。従業員数300人以下の中小企業に関しては、努力義務となるため、注意いただきたい。
実効性確保のためには、外部機関の監視の目が必要だ。新たに、助言・指導、勧告、勧告に従わない場合に事業者名を公表といった行政措置を認める旨の文言も追加された。
また、事業者が通報内容を調査する場合に、通報者が特定できる内容を漏洩してはいけないとする事業者側の守秘義務も追加。内部調査の段階で個人が特定されてしまい、その後通報者が不利益を受ける事態を防ぐことができる。この義務に違反した場合、30万円以下の罰金に処される。
従来も、内部ではなく行政機関等の外部機関へ通報することは認められていたが、条件が厳しいと問題視されていた。権限を有する行政機関への通報の条件が、現行では「信じるに足りる相当な理由がある場合」と規定されている。
改正後は、氏名等を記載した書面を提出すれば、通報のための条件を満たすことになった。また、報道機関への通報の条件に関しても、現行は生命・身体に対する危害が生じる場合のみ認められていたが、改正後は以下のケースも追加される。
また、行政機関においても、通報に対応する適切な体制の整備を求める文言も追加された。
今回の改正により、公益通報制度の実質的な機能向上が期待される。しかし、通報者に不利益な取り扱いを行った企業に対する、行政措置や刑事罰の導入は見送られた。これらは、通報者を真に保護するために必要だとの声も挙がっている。今後も、法体制の見直しは必要であろう。
<参考リンク>
@westman
2020/08/26
隠ぺい体質が横行しているので、このような制度は積極的に運用するべきだ。
まだ反対意見が投稿されていません。
@westman
2020/08/26
隠ぺい体質が横行しているので、このような制度は積極的に運用するべきだ。
@kimuu
2020/08/25
通報者に不当な扱いをした企業への刑事罰の導入も検討してほしい。固定資産税のミスを指摘したら、独居房のような部屋へ隔離されてしまった山口県田布施町のようなパワハラが無くなってほしい。(そもそも、固定資産税のミスを隠そうとするなんてありえない)
議案件名 : | 公益通報者保護法の一部を改正する法律案 |
提出国会回次 : | 201 |
議案番号 : | 41 |
議案種類 : | 閣法 |
提出者 : | 内閣 |
提出日 : | 2020年3月6日 |
公布日 : | 2020年6月22日 |
法律番号 : | 51 |