立憲・国民民主・共産・社民・社保が共同で、分散型エネルギーの促進に関する4つの法案を提出した。今回は、その中のひとつ「国施設の省エネルギーの実施に関連する法律案」の具体的な内容・メリット見ていくとする。
立憲・国民民主・共産・社民・社保が共同で、分散型エネルギーの促進に関する4つの法案を提出した。今回は、その中のひとつ「国施設の省エネルギーの実施に関連する法律案」の具体的な内容やメリットについて解説してみた。
この法案によって、日本の建物がどのように変わっていく可能性があるのか、一緒に見ていこう。
日本の一般的な住宅の気密性や断熱性は、先進国の中でも最低ランクに位置付けられている。ドイツのような住宅の省エネ基準が義務化されていないからだ。そのため、「夏は暑くて冬は寒い」暮らしにくい家に私達は住んでいることになる。
冷暖房効率の悪い建物は、エネルギー消費量も多くなる。低気密、低断熱な建造物は、温めた空気がどんどん外へ逃げてしまうからだ。「穴の開いたバケツ」とも表現される日本の建物を変えていくために、まずは国などの建物に断熱基準や再生エネルギー導入を義務付けるのがこの法案の目的である。
この法案によって国と独立行政法人の建物に省エネ・再生エネルギーの導入を義務付けることで、民間でも再生可能エネルギー等への需要が広がっていくことを期待している。結果として、エネルギー利用の合理化や再生可能エネルギー利用の普及が促進されるのが狙いだ。
この法案で対象となる施設の代表例は下記の通り。
本法案では、国などが設置する施設の新築・改修時に、次の2つの基準を定めている。
注1:エネルギー基準とは、都市の低酸素化の促進に関する法律(略称:エコまち法)で定める基準を勘案した省エネルギー基準
国などが施設を新築するときには、この2つの基準をクリアする必要があり、既存の施設は、実施目標と目標達成のための方針、改修計画の策定などが求められる。
また、実施目標に関しては、2030年までに実施目標が策定されるよう継続的で着実に改修計画を各庁各省ごとに定めなければいけない。次の3点を改修計画に含める必要がある。
国や独立行政法人等は、改修計画に基づき、省エネルギー化・再生可能エネルギー源利用改修を実施する。また、毎年度少なくとも必ず一度は、実施状況を評価し、その結果を公表しなければいけない。
改修した施設に関しては、エネルギーの合理化並びに再生可能エネルギー源の利用が長期にわたるよう、施設の維持に必要な手続きを実施しなくてはいけない。
都道府県等の地方公共団体や病院機構といった地方独立行政法人は、国の施策に準じて、省エネ・再生可能エネルギーの利用改修等のために必要な施策や措置をとらなくてはいけないとしている。本規定は努力義務なので、実施しなかったとしても罰則が課せられるわけではない。
また、国は地方公共団体や民間の事業者に対して、省エネ・再生可能エネルギー利用を目的とした改修に関して、次の2点の援助することが可能としている。
地方の建物については努力目標止まりとなっているが、国からの資金面と技術面での援助が法案に含まれているため、一定の効果が見込める内容ではないだろうか。
本法案が施行されれば、地球温暖化対策に一定の効果があると考えられる。2016年に閣議決定した地球温暖化対策計画の中では「新築公共建築物等において、2030年までに新築建築物の平均でZEB実現を目指す」と目標が掲げられている。
ZEBとは、ZEB(Net Zero Energy Building)の略語である。快適な室内空間を実現したままで、内部で消費する年間一次エネルギーの収支ゼロを目指す建物のことだ。 環境省のサイト「ZEB・PORTAL」には、ZEB建築の実例が紹介されている。
建物内では人間が活動しているため、完全にエネルギー消費量をゼロにすることは不可能だが、エネルギー消費量をできる限り抑え、太陽光エネルギー等を利用し自らエネルギー源を創出すれば、実質エネルギー消費量をゼロにするのは可能である。
省エネルギー・再生可能エネルギー利用をうたう本法案の施行が、ZEB建物の増加をもたらすのは間違いないだろう。
さらに、地方公共団体が保有する設備を改修時に国からの資金面の融通が盛り込まれたことで、ZEB化が大きく進展すると期待できる。現状、費用対効果の観点から、議会や市民等の合意や予算獲得が難しい点が問題となっている。工期が複数年に渡るため、単年度予算がベースの補助事業の活用が難しく、補助金の支給を受けられないと嘆く声が多いのだ。
国・地方の双方でZEB建物が普及することで、地球温暖化の軽減に向かうだろう。日本は「2030年までに温室効果ガスを26%削減」という目標を定めている。この目標の実現に向け、本法案の意義は大きいのではないだろうか。
デメリットは、改修費用に多額の費用が生じる点だろう。国はすでに多額の借金を抱え、現在でも予算の3割を国債で賄っている状況だ。昨今は、給付金等コロナ禍により生じた出費のために赤字部分は拡大傾向だ。大きな財政赤字の中で、どのように改修費用を捻出するかという点が大きな課題である。
<参考リンク>
@maru
2023/03/28
@TONOさん3号
2021/03/03
公共の建物で断熱、省エネ構造というのはどんどんやって欲しい。その部分への反対はない。 ただ再生可能エネルギーというのはまだ信用できない。環境にやさしいをいつも謳うのだけど疑問です。環境を壊している側面も加味して考えて欲しい。コスト面も不安です。
@maru
2023/03/28
@TONOさん3号
2021/03/03
公共の建物で断熱、省エネ構造というのはどんどんやって欲しい。その部分への反対はない。 ただ再生可能エネルギーというのはまだ信用できない。環境にやさしいをいつも謳うのだけど疑問です。環境を壊している側面も加味して考えて欲しい。コスト面も不安です。
@rolling893
2020/11/16
エネルギーの施策について国はかなり先を見据えた地盤固めを進めているようです。実質エネルギー消費ゼロは理屈では達成できると思いますが、太陽光発電の維持費用等をどうするか等の課題があり先は長そう。
@Beagle
2020/11/15
まずは国から始めてみるというのは賛成です。こういう税金の使われ方なら文句はありません。
@westman
2020/10/30
日本の家は絶対に冬寒い。海外から帰ってくると特に感じます。風通しも大事ですけど、機密性を上げることと、電力消費を抑えるのは、当然と言えば当然。もっと政府にも支援して欲しいなあ。
議案件名 : | 国等によるその設置する施設の省エネルギー・再生可能エネルギー源利用改修の実施等に関する法律案 |
提出国会回次 : | 198 |
議案番号 : | 23 |
議案種類 : | 衆法 |
提出議員 : | 近藤 昭一 |
提出日 : | 2019年6月14日 |
公布日 : | |
法律番号 : |