139回にも達するいわゆる虚偽答弁 政府の受け止め方と今後の対応は?

政権による事実と異なる答弁(いわゆる虚偽答弁)に関する質問主意書

出典:首相官邸HP

提出議員 : 中谷 一馬

森友学園への国有地売却についての財務省の公文書改ざんに関連し、衆議院調査局の調査によれば、財務省の報告書や会計検査院の報告の内容と異なる答弁(いわゆる虚偽答弁)が139回のあったとされています。

また、2020年7月に報道された共同通信社の世論調査によれば、財務省本省に公文書改ざんを余儀なくされた近畿財務局職員が自死したことに関して、政府は再調査する必要があるとの回答が82.7%となっており、再調査を求める強い世論があります。 当時の官房長官であった菅義偉首相も、報告書等の内容と異なる答弁を行っていたものであり、現政権も無関係とは言い難い状況です。

そこで、中谷一馬衆議院議員が、2020年12月1日に、政権による事実と異なる答弁に関する質問主意書を提出しました。質疑に沿って、問題に関する政府の考え方をみていきましょう。


“森友改ざん問題”への虚偽答弁 政府の受け止めと外部調査の必要性

中谷一馬議員は、まず、事実と異なる答弁を行ったことに対する政府の受けと止め方について質問しています。

質問
国会質疑において、財務省の報告書や会計検査院の報告の内容と異なる答弁が139回あったことをどう考えるか。

答弁
139回の答弁に関しては、2020年11月25日の記者会見で加藤内閣官房長官が「遺憾であり、文書管理の徹底と国会での真摯な答弁に努める」旨述べたとおりである。

政府答弁は、過去答弁を引用するにとどまりましたが、虚偽答弁に関しては遺憾であり、今後は真摯な回答に努めるとのことです。同じような虚偽答弁を繰り返さないために、政府はどのような対策を行うのでしょうか。

安倍晋三前首相は2018年3月28日の記者会見で、文書の書き換え問題について「調査を徹底し(略)組織を立て直していきたい※」と述べています。中谷議員は、これに関して質問をしています。
※原文を引用しました

質問
安倍晋三前首相の「調査を徹底し(略)組織を立て直していきたい※」という方針を現内閣でも継続するのか。また、82.7%が再調査を求めているという共同通信の世論調査結果を踏まえ、再調査あるいは外部の第三者委員会による調査を行うのか。

答弁
安倍前首相の方針と再調査等に関しては、菅首相が2020年10月28日の衆議院本会議で「改ざんについては、財務省の調査と検察の捜査で結論が出ている。再発防止のために公文書管理の適正化等を行う」旨述べ、麻生財務大臣が同年11月24日の衆議院財務金融委員会で「できる限り捜査した結果を示したので、再調査は考えていない」旨述べたとおりである。

政府は、すでに財務省の調査や検察の捜査で結論が出ているとし、再調査の考えはないと回答しました。また、中立的な観点で調査を行う第三者委員会への言及はありません。

また、過去の答弁の引用で答弁を済ませる姿勢が目立ちます。残念ながら、政府の新たな姿勢等を引き出すことはできませんでした。


“桜を見る会”をめぐる安倍前首相の事実と異なる答弁は33回 前首相個人の政治活動は現政権と無関係なのか?

さらに、中谷一馬議員は、”桜を見る会”に関する安倍前首相の事実と異なる答弁や、当時官房長官だった菅首相の答弁について質問を進めています。

質問
衆議院調査局の調査に基づくと、”桜を見る会”前夜祭に関する費用に関し、安倍前首相は少なくとも33回の事実と異なる答弁を行った。この点をどう考えているか。
また、当時官房長官だった菅首相は、「首相が答弁したとおりである」旨答弁したが、この点に関し、現在はどんな見解か。

答弁
前夜祭に関する前首相の答弁については、個人の政治活動に関するもので、「お答えする立場にない※。」
官房長官当時の答弁については、菅首相が、2020年11月30日の参議院本会議で「必要があれば安倍前総理に確認し、誠実に行ってきた※」と述べたとおりである。
※原文を引用しました

前首相の前夜祭についての答弁に対しては、個人の政治活動に関することは答える立場にないとしています。引用できる過去の答弁がない場合に、答える立場にないとするのは便利な切り抜け方かもしれません。

また、官房長官時代の答弁については「誠実に行ってきた」と述べていますが、結果として事実と異なる答弁をしたことについての言及はありません。


”桜を見る会”前夜祭の費用の一部負担を巡る報道を受け、菅首相が発言した「責任」とは?

安倍前首相側が”桜を見る会”前夜祭に合計800万円以上の負担を行った可能性があることが2020年11月24日に報道されました。その翌日の衆議院予算委員会で、菅首相は、「(費用負担に関する)事実がもし違ったと、これは仮定については私はお答えする立場じゃないと思いますけど、事実が違った場合は、それは当然私にもこの責任、答弁した責任は私がありますから、そこは対応するようになるというふうに思います」(※)と答弁しました。中谷一馬議員は、この答弁を受けて質問を展開しています。
※原文(参議院予算委員会議事録)を引用しました

質問
菅政権は、「責任」をどう解釈しているのか。菅首相は「答弁した責任は私があります」と答弁したが、費用負担が事実であった場合どう責任を取るのか。

答弁
「責任」は種々の使われ方をするので、答えるのは難しい。仮定の質問への答えは控えたい。

ここでは「仮定の質問には答えない」旨の答弁を行っています。しかし、上記予算委員会の答弁では「仮定について答える立場ではない」旨述べながらも、続けて「答弁した責任は私にある」旨述べています。このことは、仮定の質問であっても実際には答えることができることを示しているといえるでしょう。仮定の質問については、答えることと答えないことを適宜使い分けている印象です。

また、この答弁後、捜査が終了し、安倍首相側が費用負担を行ったことが明らかとなりました。菅首相は、どのような対応をするのでしょうか。


いわゆる虚偽答弁に関する政府の姿勢は容認できるのか

政府は、今回のいわゆる虚偽答弁に関する質疑において、「すでに捜査当局による捜査や財務省での内部調査が行われたので、再調査の必要はない」旨の過去答弁を引用しています。確かに、犯罪の捜査や内部の目という観点からは捜査を尽くしたのかもしれません。

しかし、それ以外にも、外部の目を使って、職員の抵抗にもかかわらず改ざんを強いた組織の深い問題を明確にしたうえで、徹底的に改革していく必要性があるのではないでしょうか。

また、安倍前首相の”桜を見る会”前夜祭に関係する事実と異なる答弁に関しては、個人の政治活動に関することは答える立場にないと答弁しています。しかし、これは政治倫理にもかかわる問題です。個人の政治活動に関する場合でも、国会議員の質問主意書に答える立場にないと言い切ることは妥当といえるのでしょうか。

そして、前夜祭問題に関しては、菅首相自身も事実と異なる答弁を行っていたことが、この質疑の後に明らかとなりました。今回の答弁は、首相自身の責任について「仮定の質問への答えは控える」というものでしたが、この常套句はもう使えません。今ならどう答えるのか気になるところです。


@なんたん

2021/06/18

森友学園問題も桜を見る会も有耶無耶で終わりましたね。他の人ならこんな終了の仕方はないと思います。これでは政府の思惑通りという感じなので、追及、説明は必要だし、続けて欲しいです。

@ichi369

2021/02/08

虚偽の答弁がまかり通るのであれば、そもそも国会でこのような質問をする意味もない。野党のこの手の質問は、国会運営の妨げになっていると感じる。疑惑については、しかるべき調査を行い、個別に聞き取りをしてもらいた。野党のアピールのための質問は必要ない。

@だるばーど

2021/02/03

こんなにも虚偽答弁がまかりとおってしまうと、政治家の答弁への信用が失われてしまいますね。ただ、問題の追及は大切ですが、優先順位を考えると、今はこの問題よりも国民の生活に重きを置いた議論をして欲しいです。

@もも

2021/02/03

今後行われる答弁については、調査などの制度を変えたりして、正確で中身のある答弁がされるようにしていってほしいです。今の日本の状態で過去の答弁について議論するのは、他に重要な問題がいくつもありますし、後回しもしくは中止でいいかと思います。

@TONOさん3号

2021/02/03

虚偽の発言は問題かもしれないが森友問題、桜を見る会の話はもういいというのが本音です。小さな問題はあったのかもしれませんがこんなに騒ぐべきことであったのかがそもそも疑問です。 共同通信の世論調査を引用していますがそもそも共同通信も信用できない。もっと大きな問題に直面している局面で、安倍さんも答えるのが面倒だったのではと察する。

 詳細情報

質問主意書名 :政権による事実と異なる答弁(いわゆる虚偽答弁)に関する質問主意書 
提出先 :衆議院
提出国会回次 :203
提出番号 :81
提出日 :2020年12月1日
転送日 :2020年12月4日
答弁書受領日 :2020年12月11日

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